米国の「スーパートラック」プログラムをご存じだろうか? 大型トラックのエネルギー効率改善のため、メーカーによるコンセプト・トラックの開発を政府が支援するというものだ。
現在、電動化を中心とした「スーパートラック3」も始まっているが、ディーゼル車の燃費を2009年比で100%向上することを目指した「スーパートラック2」の結果を各社が公開しているので、紹介したい。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/Daimler Truck North America LLC.・Freightliner Trucks・AB Volvo・Volvo Trucks North America・Navistar International Corporation・International Trucks・Peterbilt Motors Company
米国政府が資金提供する「スーパートラック」
米国の「スーパートラック」プログラム2009年に始まったもので、当初のイニシアチブである「スーパートラック1」は大型トラックのエネルギー効率(燃費)を大幅に改善するため、米国政府の資金提供によりメーカーがコンセプト車両を開発し、それを実証するというものだった。
参加するトラックメーカーのシェアを合計すると、米国のトラック市場の約99%となり、ほとんどのメーカーが参加しているという。車両コンセプトに留まるのではなく、実際に車両を製造し、量産に繋がるような実践的な技術を検証するという点が特徴的だ。
輸送セクターは米国のエネルギー需要の30%を占め、温室効果ガスの最大の排出源となっている。環境問題への対応で重要な役割を担っているのは言うまでもなく、2009年のスーパートラック1は、大型トラックの燃費(「トン・マイル/ガロン」による貨物輸送効率)を50%向上することを目標としていた。
そのフォローアップとなるスーパートラック2は2016年に開始され、18ウィーラー(北米市場の大型セミトレーラ連結車。全部で18輪あるためこう呼ぶ)の効率をベースラインの2倍とする(=2009年比で100%向上)方法が模索された。
2009年から最初の7年でボルボ(傘下に北米ボルボ、マックなど)、ダイムラー(同フレイトライナー、ウェスタン・スターなど)、ピータービルト(ケンワースと共にパッカーグループ)、ナヴィスターが目標を達成し、更に2022~2023年にはスーパートラック2の目標を達成するメーカーも相次いだ。
米国エネルギー省(DOE)は、2021年に次期イニシアチブ(スーパートラック3など)に総額1億6200万ドル以上を投じる資金提供通知(FOA)を発表しているが、スーパートラック3は電動化や水素・燃料電池技術に軸足を置いている。
従ってスーパートラック2は、いわばディーゼル車としてのアメリカン・トラックの完成形ともいえる。ここでは北米各社が考えた「スーパートラック」を紹介したい。