AT普免ドライバーを考慮した新発想「軽量バン」
さる5月9~11日に開催されたジャパントラックショー2024で、いすゞはエルフmioのドライバン架装モデル「軽量バン」を初めて公開した。正式発売時には、完成車(シャシーメーカーが荷台付きで販売するトラックのこと)として展開する予定という。
エルフmio軽量バンの外観は、アルミコルゲート(波板)の外板を持つごく普通のドライバンだが、その荷箱の幅と高さは、2トン積ドライバンはもちろん、いままでの標準的な1トン積ドライバンよりあえて小さめに設定し、トラック独特の車両感覚を抑えたのが最大の特徴だ。
小型トラックのバン型車は、ドライバーが乗るキャビン部分より荷箱の幅が大きいのが一般的(「キャブ幅段差」と呼ぶ)で、最大で200mm(左右各100mm)も段差があるクルマも珍しくない。また、車両全高は3m前後にもなる。そのため、乗用車やミニバンはもちろん、キャブオーバー型ワンボックスのハイエースやキャラバンとも違う車両感覚が必要になってくる。
そこでエルフmio軽量バンでは、キャビン幅1695mmに対してキャブ幅段差がわずかプラス50mm(左右各25mm)の車両全幅1745mm、車両全高を250mmほど低い2750mmとし、感覚的に取り回しやすく、かつロールセンター高も抑えて、ドライバン運転に不慣れなAT普免ドライバーでも馴染みやすいサイズとしたのである。「運ぶ性能」を重視してきたトラックにとって、これはかなり思い切った発想の転換だ。
軽く仕上げられたドライバン・ボディ
軽量バン実車と併せてスペックの一部も公表され、車両説明ボードには全長4840mm×全幅1745mm×全高2750mm、荷室サイズが内法長3150mm×内法幅1640mm×内法高1895mm、最大積載量1150kgと記されていた。
いすゞ最新の排気量1.9リッター軽量直噴ディーゼル・インタークーラーターボ付エンジン「RZ4E型」を採用するとはいえ、排ガス後処理にリーンNOx触媒、DPF、尿素SCR、酸化触媒をフル装備、しかもADAS(先進ドライバー支援システム)も搭載して、さらに荷箱を架装しながら、GVW3.5トン未満で積載量1150kgという能力を得ているのは驚異的である。
もちろんシャシーが軽いこともあるが、「軽量バン」という名称が示すとおり、いすゞとパブコ(三菱ふそう系トラック車体メーカー)がエルフmio用として共同開発した新型バンボディが、かなり軽く仕上がっているのだ。
そのひとつが、荷箱の内張の一部を通常のベニヤより大幅に軽い「プラパール」(気泡緩衝材プチプチを芯材として使う樹脂パネル)としたことで、いすゞ完成車への採用は初となる。フロア材も、軽比重の竹集成材を採用した。
もうひとつが、荷箱の躯体構造の軽量化だ。床下の縦根太のないサブフレームレス構造を採用して、シャシーフレームへのマウントは、スペーサを介して直接、横根太を支持する構造となっている。もちろん荷台の耐久性や剛性は重要な性能で、その点も充分確保しているとのことだった。