日本発祥の自動車ジャンルであるミニバン。室内高の高い広々とした空間やスライドドアによる優れた乗降性など、高い利便性が日本で人気の理由となっている。そんななか「これが他のミニバンにもあったらいいのに」と利便性の高さを感じるのが、日産セレナに装備されているデュアルバックドアだ。このセレナ独自の装備に注目してみよう。
文:西川 昇吾/画像:日産、ベストカーWeb編集部
【画像ギャラリー】そこだけ開くことができるの!? しかも軽い! これがセレナのアイデンティティ! (17枚)画像ギャラリー意外とミニバンでバックドアは使われてなかった?
いまやセレナのアイデンティティとなっているデュアルバックドアだが、その採用は2016年に登場した先代モデルとなるC27型からだ。その背景には日産がミニバンの使い勝手を研究するなかで、ミニバンユーザーが意外とバックドアを使用していないことがあった。
その理由を深堀すると、ミニバンというボディ形状と人気のユーザー層ならではの課題があった。
まずバックドアが重たくて開閉が面倒ということ。子育てファミリーに人気なミニバンは、普段はママさんが使用していることも多い。そうなると女性では大きくて重たいバックドアの開閉は苦労するのだ。
また多くの人が想像できると思うが、大きなバックドアは狭い場所での開閉が困難だ。スーパーやショッピングモールなどで駐車すると、フェンスや壁、後方に駐車しているクルマに当たる可能性があるので、バックドアを開けるのが困難となる。
これらが、ミニバンのバックドアが使用されない理由であるが、ファミリーに人気なミニバン特有の理由としてバックドアを開閉してラゲッジスペースを使いたい声もある。
それは、スーパーなどで買い物した食品を子どもが座ることの多い2列目の足元に置かなければいけなくなってしまうことだ。バックドアが問題なく開閉できれば食品を汚れているところに置かなくて済むのに……そんな声があった。
このような背景から、日産はミニバンには簡単に狭い場所でも開閉が可能なバックドアが必要だと考えた。こうしてデュアルバックドアは登場したのだ。
ガラスハッチではなくデュアルバックドアにこだわり
先代セレナから採用されたデュアルバックドア。狭い場所でも軽く開閉ができるため、ユーザーからも「とても使いやすい」と好評となっていて、2022年にフルモデルチェンジを果たした現行モデルでも採用されている。
好評となっているのは、デュアルバックドアそのものの着眼点やコンセプトが優れているのもあるが、単にデュアルバックドアを装備させるだけでなく、実用での使いやすさも重視しているのだ。
まず、ガラスハッチなどの類似機構もあるが、日産はデュアルバックドアにこだわっている。ガラスのみが開閉すると下端部が高くなってしまい、小柄な人だとラゲッジスペースにモノを置くのが大変になってしまう。
「それならガラスを大きくすればいいのでは?」という声もあると思うが、開閉に重たくなってしまうし、追突時などに必要とされる後突性能を確保するのが難しい。
そのためデュアルバックドアという機構が採用されたのだ。そして樹脂バックドアにすることで軽量化を実現しているのも、使いやすさへと繋がっている。
さらにデザイン性にもこだわりがある。デュアルバックドアは分割部分が分かりづらいのだ。初めてその開閉を見た人からすれば、「えっ! そこだけ開くの?」と思うかもしれない。分割部分だけでなく、開閉スイッチをNISSANエンブレム内に仕込むという工夫もされている。
日産の考えるミニバンのラゲッジスペースへの最適なアクセスとして考えられたデュアルバックドア。ミニバンユーザーならばその利便性の高さはより理解できるはずだ。筆者もこの機構が他のメーカーのミニバンに採用されて欲しいと強く思っている。
セレナを始め、今後ミニバンならではの課題を各メーカーがどんな装備で解決するか? ミニバン独自の新機構も楽しみにしていきたい。



















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