■トヨタとスバルの提携はいいクルマを生んだ
その意味では、トヨタはスバルともGMの放出株を購入する形で資本関係にあるが、開発部門が完全な人手不足に陥っているなかで、小型スポーツカーを共同開発するなど新技術や商品を生み出すリソースを、共有するメリットは大きい。
だが、トヨタの出資比率は16.7%で筆頭株主だが、ダイハツやデンソーのような連結子会社の関係ではなく、お互いの本拠地の愛知と群馬では風土も社風も違う。
最近のスバルは度重なる不祥事で発言力はやや抑え気味のようだが、軽自動車などの量販車種ならともかく、ニッチ商品でバッジと車名が違うだけの「OEM車」を共同開発するには限界もある。
この先も「遠距離恋愛型」のコラボを継続できるかどうかは不透明だ。遠距離恋愛型では「長すぎた春」の後に破局を迎えたスズキと独VWの悪しき教訓も見逃せない。
国際仲裁裁判所を通して4年近くも争ったが、経営の独立性などを巡って対立したことが”破談”の原因だ。
スズキがイコールパートナー(対等関係)を主張したのに対し、VW側は上から目線の子会社扱い。
提携には経営トップの力量が試されるが、お互いに意地の張り合いの「自己顕示欲の強いゴリ押し型」では成果をあげるのは難しい。
自己顕示欲が強いタイプでも日産・ルノー、そして三菱自動車を含めた3社連合は、カルロス・ゴーン氏が3社のトップとして君臨していることで一定のアライアンス効果をあげている。
カリスマ経営者による「強烈なリーダーシップ型」で規模の拡大を狙って成功した珍しい事例である。
が、ゴーン氏が去ってからの次のリーダーに託された課題は重い。権力構造の変化でバランスが崩れれば”空中分解”する可能性もある。
■異業種とのコラボは「吉」と出るか?
完成車メーカー同士の最近のコラボでは、トヨタがスズキと業務提携を結び、マツダとも資本提携まで踏み込んだ。
今後注目されるのは、トヨタとパナソニック、ホンダとソフトバンクのように、EVバッテリーや「つながるクルマ」の次世代技術の共同開発など、「異業種との生き残り戦略型」のコラボが増えてくるのは間違いない。
そして過去の成功例を見ると、日産が経営危機に陥った三菱を子会社化して支援するような「お助けマン型」のコラボが圧倒的に多い。
それにはブランドの自主性を尊重しながら指揮系統を明確にして「主従」の関係を維持し続けられるかがポイントだ。
長年連れ添った仲のいい夫婦でも”熟年離婚”に発展するケースも少なくない。意気投合したライバルでも所詮は他人同士の寄り合い所帯。
市場環境の変化によっては、関係が断ち切れるという危うさを伴うことを肝に銘じ、プロジェクトをうまく進めていくことが、いいコラボを生む企業提携の秘訣だろう。
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