一寸のムシにもゴムの魂 タイヤにとって大切なバルブコアの話

■バルブコアの使用管理のカンどころ

装着してしまえばバルブコア本体は頭の部分しか見えません。真ん中に見えるピンを押すとバルブが開いてエアが出てきます。脱着は専用工具で!
装着してしまえばバルブコア本体は頭の部分しか見えません。真ん中に見えるピンを押すとバルブが開いてエアが出てきます。脱着は専用工具で!

 バルブコアは空気入りタイヤには必須アイテムなんですが、空気入りタイヤはエアを規定圧充填した後も定期的に点検、補充する必要がございます。

 理由は分子レベルでゴムは空気を透過してしまうからです。即ちパンクしていなくても定期的に点検、補充を行なわなければ空気圧は低下し続け、タイヤの性能を発揮しないばかりか故障を招きます。

 そこで我々タイヤ屋、整備工場、そしてユーザー様自身で空気圧点検、あるいは補充という作業を実施するわけなんですが、推奨されているのが「月1回程度、タイヤの冷間時にエアゲージ等で点検」です。

 ユーザー様自身でこの点検を実施している場合に必ず実施していただきたいことがございます。それは、点検、補充後には石鹸水等でエア漏れのチェックを実施していただきたいということです。

 ごく稀なケースですが、エア点検後に異物等を踏んでいないのに謎のパンクが発生するケースがあります。

 点検時にエアゲージ、あるいはエアチャックでバルブコアの先端部分を押してバルブを開き、タイヤの内圧を測定・補充するワケなんですが、この時にエアゲージ・チャックの先端の小さなゴミ等がバルブコアシール部分に付着し、わずかな隙間ができ、そこから内圧を逃がしてしまうというものです。

 漏れ方にもよりますが、大体1週間以内でパンクに気づくくらい内圧は低下します。せっかくタイヤのメンテナンスに時間を掛けても、石鹸水によるチェックを怠ってエア漏れを見逃してしまっては本末転倒でございます。

 この現象が起きた場合の対処法ですが、破損等ではなくシール部分にゴミが噛み込んだ状況が多いので、バルブコアの先端部分を押し、内圧を利用して噛み込んだゴミを吹き飛ばすイメージで対処してくださいませ。おそらく復帰(エア漏れが抑えられる)すると思います。

 それでもダメな場合は、バルブコアを新品に交換か、タイヤ屋さんにご連絡してバルブコアの交換をお願いしてみてください。

 また、応急処置としてバルブキャップの裏側にシールが付いているキャップを装着すれば、簡易的ですが内圧の大気開放は幾らか緩和されると思いますので、緊急時に思い出してくださいませ。

 それを踏まえてバルブコア先端付近のゴミの付着、あるいは錆の発生を抑えるためにも、ぜひバルブキャップの装着は必ずお願い致します。

 また、バルブコアを交換する場合は専用工具が必要です。ドライバー等の代用では外すこともキッチリと取り付けることもできませんので、必ず専用品を! これはカー用品店や通販でも入手可能です。

 価格はピンキリで数百円からございますが、上級モデル(?)になりますとバルブコアを保持してくれる物やトルク管理できるものもございます。

 そして、バルブコアにも寿命がございます。我々タイヤ屋ではタイヤ交換時はもちろん、パンク修理や組み替え時にも新品を装着し、パンクのリスクを少しでも低減できるよう作業を実施しております!

一瞬たりとも気を抜くことのない「ムシ」の偉大さに心を打たれ、タイヤ屋さんは今日も車輪の下でもくもくと作業するのでした、人とクルマの安全を守るために……
一瞬たりとも気を抜くことのない「ムシ」の偉大さに心を打たれ、タイヤ屋さんは今日も車輪の下でもくもくと作業するのでした、人とクルマの安全を守るために……

 いかがでしたでしょうか? バルブコアはバルブに装着してエア充填を開始してから仕事を始め、破棄されるまで一瞬たりとも気(空気)を抜くことなく使命をまっとうしております。

 まさに「一寸のムシにもゴムの魂」(ゴムってタイヤのことです)。我々もプロとして生きるならば見習わなければいかんな……と、わずか20mmのパーツに教えられるタイヤ屋でございました。

【画像ギャラリー】この部品がないとタイヤは役目を果たさない……小さいけれどムシできない『バルブコア』とは!?

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