欧州車といえば「クリーンディーゼル」の印象が強い。実際、ディーゼル車が少なく思える日本でも、実は今61車種もの欧州のディーゼル車がラインナップされている。
さらに、ここにきて新しいディーゼル車が急増。排ガス不正問題の影響を受け、販売が落ち込み気味の欧州とは逆に、日本ではディーゼル車の種類がどんどん増え続けているのだ。
なぜなのか? その理由を探るとともに、2018年以降に登場した欧州ディーゼル車のイッキ評価を展開。各車のオススメ指数も付けてお伝えする。最新欧州ディーゼルの気になるところをドカンとチェックしていこう!
※本稿は2019年3月のものです
文:桃田健史、/写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2019年4月10日号
■欧州クリーンディーゼルが日本市場を目指す理由
(TEXT/桃田健史)
ディーゼル車といえば、欧州。そんなイメージを持つ日本人は、今でも大勢いるだろう。
欧州に暮らす人々は、EUが誕生して国境での検問が簡素化される前から、欧州各地で長距離ドライブすることが多かった。夏の長期バカンスに出かけるのは当然のこと、税率が安い隣の国に日用品を週末にまとめ買いする、といったことも古くから当たり前のことだった。
そうなれば、ガソリン車より燃費がいいディーゼル車が好まれる。夜間の長距離移動では、走行ルート上にガソリンスタンドが営業していない場合もあり、満タンでの航続距離が長いディーゼル車が好まれるのだ。
そんな欧州で2015年、衝撃が走った。フォルクスワーゲングループがディーゼルエンジンを制御するコンピュータプログラムを不正にセットアップし、CO2規制を違法にクリアしていることが明るみに出た。同様の事案が、ほかのドイツメーカーでも行われている疑いも浮上した。
こうしたディーゼル車に対するネガティブな報道が世界中に広がり、火種であるフォルクスワーゲングループの企業としての信頼が一時的に大きく失われた。当然、ユーザーとしてもディーゼル車を敬遠する気持ちになる。
だが、このことが、昨今の欧州でのディーゼル車販売量の減少、さらには日本への欧州クリーンディーゼル続々上陸の主たる原因ではない。
●欧州CO2規制が米トランプ政権の動きに影響
欧州でディーゼル車の販売台数が低下しているのは、自動車メーカー自身が欧州でのディーゼル車の製造と販売を抑制しているからだ。
その理由は、欧州での排ガス・燃費規制への対応だ。2021年から、CO2排出量で95g/kmとなり、今後も2025年や2030年といった節目の年を目標に規制の度合いはさらに高まることが確実視されている。そのため、欧州メーカーのみならず日系を含めた自動車メーカー各社は、2010年代初めから中盤にかけて、パワートレーンに関する将来戦略を大幅に見直した。
具体的には、ガソリン車の小排気量化、48Vバッテリーを使ったアイドルストップと小型モーターによるエネルギー回生システムの導入、そして、EVやプラグインハイブリッド車の導入だ。
一方、世界最大の自動車市場である中国で、2019年から始まった新エネルギー車(NEV)規制への対応としてEVやプラグインハイブリッド車の量産計画を加速させている。そのなかで、中国では乗用ディーゼル車はマイナーな存在だ。
また、利益率が高い大型SUV人気が続くアメリカ市場では、トランプ政権の動きに目が離せない状況にある。カリフォルニア州のエネルギー車規制(ZEV法)と連邦環境局による燃費規制(CAFE)との融合に向けて、州政府と連邦政府の間で政治的な綱引きが続いているのだ。
アメリカでは2000年代にフォルクスワーゲンがディーゼル普及戦略を企てたことがあるが失敗。アメリカでは今でも、ディーゼル燃料を販売していないガソリンスタンドが多く、乗用ディーゼル車は中国と同様にマイナーな存在にすぎない。
●ディーゼル車の付加価値を理解する日本人
こうした、世界の主要市場での動きの反動が、日本市場に一気に押し寄せている。
近年の日本ディーゼル市場は、メルセデスEクラスなどが基盤を作りながら、2015年からのマツダ第五世代シリーズにおけるSKYACTIV-Dによって一気に拡大した。燃費のよさやディーゼル燃料の安さのみならず、低速回転域でのド太いトルクに魅了される日本人が多い。
ディーゼル車はガソリン車に比べて新車販売価格が高いが、日本人はディーゼル車に経済性だけではない付加価値を重視しているのだ。
そうした市場性を考慮して、欧州メーカー各社は日本市場にディーゼルを積極的に導入し始めたといえる。つまり、日本は皆さんが想像する以上にディーゼルを好む国ということ。それが急増している最大の理由なのだ。
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