日本の200倍ってマジか!?? 年間100万台のクルマが盗まれる米国で特に古いホンダ車が狙われまくる理由

■古いホンダ車が数多く盗まれている理由

 過去10年間(2010‐2020)においてアコードとシビックの盗まれやすい年式は、以下のデータが明らかにされている。

・アコード→1994年、1996年、1997年
・シビック→1995年、1998年、2000年

 アコードもシビックも1990年代を中心とした年式が数多く盗まれているわけだ。なぜ古いホンダ車が数多く盗まれているのか。これにはいくつか明確な理由がある。

日本にも輸入されたアコードワゴン。こちらは米国ホンダ公式のカスタムカー。K20Cエンジン搭載の1997年型
日本にも輸入されたアコードワゴン。こちらは米国ホンダ公式のカスタムカー。K20Cエンジン搭載の1997年型

(1)ホンダ車はエンジンをはじめ、車種間での共用パーツが多い

 古いホンダ車が盗まれる理由としては、これが最も大きな理由だろう。盗難の多くは「エンジン本体」および「エンジン回りの部品」を転売することを目的としている。窃盗団が狙うのはホンダの「B型エンジン」。1990年代前後のホンダ車にはB型エンジンがアメリカで人気のシビックやインテグラ、CR‐Xやアコードなど複数の車種に同じ型式、同系統のエンジンが搭載されている例も少なくない。

 一例をあげてみると、

B16A→インテグラ DA6/8、シビックEF9/EG6/EK4、CR-X EF8等
B16B→シビックTYPE R EK9
B17A→インテグラ北米向けDB2
B20A→アコード/アコードエアロデッキ/ビガー CA3/プレリュード BA1/4/5
B20B→CR-V RD1/2、S-MX RH1/2
B21A→プレリュード (BA7)

 上記のように、車種間でパーツを融通しやすいという理由がある。ホンダ車はエンジンに汎用性があるので人気が高い。1車種にしか使えないパーツよりも、複数車種に使えるパーツの方が当然付加価値も高くなり高値で流通される。

アキュラ・インテグラもカスタムカーのベース車として根強い人気がある
アキュラ・インテグラもカスタムカーのベース車として根強い人気がある

 海外のホンダ車事情に詳しい技術者も以下のように話してくれた。

「1990年代のシビックはカナダでのEL(日本名ドマーニ,いすゞジェミニ),インテグラSJ,シビックと部品がほぼ同じの車は勿論,プレリュードと共有部品が多岐に渡っています。アコードも三極体制で共有部品も多い一方,独特の部品形状が多かったユーロアコードと共有も見られることが特筆すべき点です。

 機関系の部品共有も多い車というと、日産のRB同様にスワップが利くなどの特徴があります。正回転エンジンが主流の中、逆回転だったのもホンダ車(直列5気筒などは除く)ですし、その点流用範囲が限られていますが、実際アコードにプレリュード譲りのH22Aを入れるとかもありました。メーカーレベルでも当たり前のようにやっていたのが1990年代の汎用性の良さであり……犯罪とも関わってくるのかもしれませんね。」

■ホンダ車は耐久性能が高いため、古い個体が多数残っている

 部品の共用が多いという理由のほかに、古いホンダ車の盗難が非常に多い理由はほかにもある。

(2)ホンダ車は再販価値高い

 アメリカではアコードやシビックの人気には長い歴史があり、中古車になっても信頼性も耐久性も高い。バラして部品単体で売る場合にも高く売れる、という事情がある。また、そもそもこれまで販売されてきた台数が多く車齢20年以上のクルマも多く現存する。アメリカにおけるホンダ車はその耐久性の面においても非常に評価が高く、100万マイル(160万km)を走るホンダ車も少なくない。

 2021年には36,000台のアコードが盗まれたが、そのうちの5,000台が1997年モデルだった。

塗装がかなり傷んでいるが気にせず元気に走るシビック(EK4)
塗装がかなり傷んでいるが気にせず元気に走るシビック(EK4)

(3)古いクルマは盗みやすい

 当然と言えば当然なのだが、1990年代のクルマにはメーカー純正のセキュリティ装置などほとんど存在しない。よほどのマニアでもない限り、古いクルマにアフターマーケットの高級セキュリティ装置を付ける人もそれほど多くはないだろう。ということで、セキュリティと言えばドアロックのみ…という90年代のクルマは窃盗団にとって非常に都合がよい状況がある。

 また、アメリカではガレージは所有していても、「家の前の道路にクルマを駐車する」というスタイルもよくみられるため、夜間、人通りが少ない時間帯にわりと簡単に盗まれてしまうのだ。

 このような背景から、耐久性の高いホンダ車は新車から20年以上経過しても多数が現役で活躍しており、さらに台数が多く、セキュリティもゆるいので盗みやすい…。そしてエンジン関連をはじめ部品の共有が多いので盗まれる。盗まれた車両はばらされて、パーツとしてジャンクヤードやネットフリマなどに流れていく。発売から20年以上経過し、メーカーからの純正部品供給が困難な状況になった場合でもオーナーにとって純正パーツが安価な価格で手に入るのはありがたいだろうが…。

 日本でも、初代シビックタイプRやインテグラなどの盗難が増えつつある。注意喚起の意味も込めて実例を挙げておきたい。写真は筆者の友人M氏のシビックタイプR(EK9)である。2021年春に盗まれて約2か月後、アメリカの日本車専門店J-Spec Auto Sports Inc.で販売されていたことが分かった。

 同社のSNSにおいて「日本から到着した、走行距離が少ないシビックタイプRのB16Bエンジンを販売します!」とお知らせを出している。

盗まれた車両とパーツナンバーが同じエンジンがフリマサイトで売りに出されている…
盗まれた車両とパーツナンバーが同じエンジンがフリマサイトで売りに出されている…

 エンジン番号「B16B 1203718」はまさにM氏が所有していたEK9と同一である。しかし残念なことに、このエンジンも、搭載されていたシートも、M氏の元にいまだ戻ってきていない。

まさにこの場所で盗まれてしまったMさんのEK9(初代シビックタイプR)。その後アメリカに密輸されアメリカの日本車専門店で販売されていた
まさにこの場所で盗まれてしまったMさんのEK9(初代シビックタイプR)。その後アメリカに密輸されアメリカの日本車専門店で販売されていた

 古いホンダ車、とくにタイプR系の高性能エンジン搭載車を所有の方はどうか気を付けて欲しい。海外に出ていくと日本に戻る可能性はほぼゼロだからだ。

【画像ギャラリー】1990年代後半のホンダ車が盗まれまくり!! …すこしわかるのは、この頃のホンダ車カッコいいんですよね…という画像(11枚)画像ギャラリー

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