2026年2月12日、日産自動車は第3四半期決算を発表した。今回発表された通期決算予想によると、2025年度通期の純利益は-6500億円。二期連続で6000億円超の最終赤字となる見通しだ。数字だけ見れば日産の再建は遠く見える。だが今回の決算、第3四半期(10〜12月)は営業利益が175億円の黒字へと戻っている。累計ではなお赤字圏でも、経営再建策がすこしずつだが効いていることがわかる。いま必要なのは黒字の芽を見誤らず、現場でふんばるエンジニアを信じて、「商品」での回復を目指すことだ。
文:ベストカー編集局長T、画像:日産自動車
【画像ギャラリー】日産公表資料と会見に臨むエスピノーザ社長(4枚)画像ギャラリー小さくない「175億円」の意味——黒字は「回復局面入り」のサイン
今回の決算発表で、まず押さえたいのは、日産自動車が第3四半期単体で営業利益175億円の黒字に転じた事実だ。利益率は0.6%と薄い。だが薄利の自動車産業では0.1%が数百億円単位に化ける世界。黒字に戻ったこと自体が、操縦桿が効き始めた証拠になる。
累計(第3四半期まで)で見ると、売上高は8兆5780億円、営業利益は-101億円、当期純損失は-2502億円と厳しい数字が並ぶ。それでも、赤字額が縮んでいるのも事実で、通期の営業損失見通しは-600億円へと上方修正された(前回見通しは-2750億円)。日産がいま立っているのは、「止血→回復」へ移れるかどうかの境目だ。
注目すべきは、通期の販売台数見通しをグローバル320万台へ修正している点だ。台数を追いかけすぎない代わりに、売上高見通しは11兆9000億円へ引き上げ、利益の取り戻しを優先する。世界市場は、需要が弱含みの地域(日本・欧州)と、NEV競争が苛烈な中国、販売奨励金が膨らみやすい米国が同時進行する。「全部取り」が難しい局面で、利益を出すための経営判断が透けて見える。
販売面の現実も直視したい。第3四半期累計の小売販売は225.7万台(前年239.7万台)と減少。日本・欧州は需要の弱さと競争激化の影響を受けた。一方で米国では小売販売を重視し、フリート比率を下げたことで市場シェアを安定させたという。中国は新型の新エネルギー車(NEV)投入で堅調——地域ごとに勝ち筋が違う難しい局面だ。
ここで重要なのは、「台数が伸びない=利益が出ない」という時代ではないこと。値引きで台数を買うのではなく、台数を絞ってでも収益性の高い売り方に寄せ、同時にコストで勝つ。第3四半期は、コスト削減が関税影響を吸収したと整理されている。
経営再建策「Re:Nissan」の本質:コスト削減ではなく「稼ぐ構造」への作り替え
希望が持てるのは、改善がプログラムとして走っている点だ。経営再建策「Re:Nissan」では、変動費の削減で数千件規模のアイディアを創出し、想定効果額2400億円を見込む。固定費も上期で800億円超、第3四半期累計で1600億円超を削減し、2026年度までに2500億円以上の削減を見込む。エンジニアリングコスト(時間当たり労務費)の削減も、目標20%に対して15%まで進捗している。
日産の経営再建は痛みを伴いながら進んでいる。10か月で7つの生産拠点(アルゼンチン、インド、追浜、日産車体湘南、メキシコの2工場、南アのロスリン)の整理を公表し、生産資産の売却合意まで進めた。自動車メーカーにとって生産拠点の整理は命運を左右するほどの決断だ。周辺地域への影響は計り知れない。それでも日産は実行する。復活のために不可欠だからだ。
もちろんこれで「再建の痛み」がすべて出きったわけではない。生産拠点を失った地域の不信感は根強いし、離れていったファンの心を取り戻すには時間がかかる。それでもコツコツと売れるクルマを作り、地域の販売店が一台ずつ売っていくしか復活の道はない。
そして、資金繰りにはまだ余力があることも示された。日産の自動車事業の手元資金は2025年12月末で2兆1492億円、未使用コミットメントラインも2兆5760億円。フリーキャッシュフローは累計でマイナスだが、下期はプラスに転じる見通しも示されている。資金があるうちに、改革と商品投入を同時に回せるか。これが再建の成否を分ける。単純計算だがあと3年は今年度なみの赤字でも耐えられる。
いま開発現場でエンジニアたちが必死になって作っている新型車が世に出て、「攻め」に回るまで本丸を守る城壁は、まだ厚い。
最後はやはり「商品」——新型車が黒字を“太くする”
自動車メーカーにとってコスト改革だけでの復活はない。利益を押し上げる解決策は、どこまでいっても商品力だ。エスピノーザ社長は「第3四半期に投入した新型車で勢いを増していく」とし、日本ではリーフの受注台数が約5000台、ルークスが累計受注4万台、米国ではセントラが2026年1月の販売台数7900台と好調に推移したことを説明し、さらに今後、エルグランド、QX65、フロンティア、グラバイトなどグローバルで新車攻勢をかけていくと語る。
第3四半期の営業黒字は、日産にとって「復活そのもの」とは言い難い。しかし、二期連続の巨額赤字見通しの只中で、単体とはいえ黒字を作れることを示した意味は大きい。次に問われるのは、①固定費削減の継続、②関税・競争環境の変動に耐える変動費構造、③商品ラインアップの強化、④在庫と販促の規律——この4点を四半期を跨いで再現できるかどうかだ。
希望は、数字の中にある。175億円の黒字は「やればできる」ではなく、「やり切れば戻れる」を示した。日産が復活しないとクルマ界は面白くない。元気になって、また暴れ回ってほしい。魅力的で楽しい新型車、待ってます。
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