経営統合に向けた会見を行ったホンダ、日産、三菱の3社だが、噂されていた台湾の鴻海(ホンハイ=フォックスコン)との交渉については「まったく接触がない」と否定した。しかしこれで鴻海話が終わったわけではない。将来を考えれば、ホンダ・日産・三菱の統合後に、鴻海が参加することはそれなりに意味があるように思える。鴻海には協業を検討するだけの「旨味」があるからだ。
文:ベストカーWeb編集部/写真:鴻海、ベストカーWeb編集部
【画像ギャラリー】あなどれん! 台湾で走る鴻海のEVバスを見て! (5枚)画像ギャラリー■今回の経営統合はゴールじゃない
今回のホンダ日産統合の話題には、鴻海の陰が常に付きまとってきた。現在鴻海のEV事業のトップは、かつて日産でCOO(副最高執行責任者)を務めた関潤氏だが、関氏は12月中旬からフランスに渡り、ルノーの持つ日産株の譲渡を巡って交渉中という報道もなされている。
いっぽうホンダと日産自体も、今回の統合がゴールだとは考えていない。12月23日の会見でもホンダの三部社長が「今回の施策だけで(新興勢力に)勝てるほど甘くはない。今回は一歩目の検討」と述べている。
となれば、ホンダ、日産、三菱の統合後に、鴻海をパートナーに迎えることは悪いことではないように思える。実際鴻海にはそれだけの魅力があるからだ。
【画像ギャラリー】あなどれん! 台湾で走る鴻海のEVバスを見て! (5枚)画像ギャラリー■エヌビディアやTSMCとも繋がる鴻海ネットワーク
鴻海が持つ最大の魅力は、「台湾ネットワーク」だろう。ご存知の通り鴻海は、アップルのiPhoneの受託生産で成長したが、現代ではその有力クライアントに、あのAI半導体の巨人エヌビディアがいる。
鴻海の現CEOのヤング・リウ氏は、エヌビディア創業者兼CEOのジェンスン・ファン氏とは個人的にも親交があるから、このパイプは「知能化が必須」といわれる次世代自動車の領域でも間違いなく強い意味を持つはずだ。
さらに鴻海、エヌビディアは半導体受託製造の世界最大手TSMCとも繋がる。鴻海創業者の郭台銘氏はTSMC創業者のモリス・チャン氏とは親戚関係にあるうえ、モリス・チャン氏は後継者選びの際に、エヌビディアのジェンスン・ファン氏も候補と考えたと明かしているのだ。さらにいえばジェンスン・ファン氏は、米半導体大手AMDのCEOリサ・スー氏とも縁戚関係にある。
【画像ギャラリー】あなどれん! 台湾で走る鴻海のEVバスを見て! (5枚)画像ギャラリー■鴻海にはネガティブなイメージも
鴻海には、日産との縁を感じさせる側面もある。実は鴻海は数年前からEVの受託生産にも乗り出し、「フォックストロン」というEV基盤を作る子会社を立ち上げた。このフォックストロン設立には台湾の裕隆(ユーロン)汽車が協力しているのだが、この会社は1957年以来、日産とパートナー関係にある自動車メーカーなのだ。
もちろん鴻海合流を手放しで喜べない点もある。日本人としては同社がシャープの再建でつまずいたこともネガティブに響くし、安全保障という点では経済産業省も警戒感を抱いているようだ。
とはいえ、ホンダと日産のトップも述べている通り、従来の発想や速度感では新興勢力には太刀打ちできないことも事実。今回の経営統合にさらなる「燃料」が必要だとしたら、鴻海との協業はあながち悪い材料ではないと思うのだが……。この動き、今後も注目する価値がありそうだ。
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