昨今のクルマは、軽自動車であっても軽く200万円を超えてくるなど、本当に価格が高くなりました。環境性能や安全性能が求められることに加えて、先進運転支援などの装備も充実、また物価の高騰など、価格が高くなっていることには理由があるのですが、こんな令和の時代にあっても、税込106万円からという、驚くべき価格で新車が購入できるモデルがあります。スズキ「アルト」です。
文:吉川賢一/写真:SUZUKI
【画像ギャラリー】究極の低コスト車!! スズキ「アルト」の豊富なカラーバリエーション(15枚)画像ギャラリー令和のクルマとは思えないほど、軽くて安い
使い勝手のよさと、リーズナブルな価格を兼ね備えた実用的な軽自動車として、1979年に登場したスズキ「アルト」。初代から先代8代目までの国内累計販売台数は526万台に到達し、スズキのラインアップのなかでも主力級の軽自動車です。筆者も昔、母が運転する真っ赤なアルト(しかもマニュアル車)の後席に座り、買い物について行っていました。ボディカラーが艶やかだったので、非常によく覚えています。
2025年1月時点の現行アルトは、2021年に誕生した9代目。わずか710㎏(マイルドハイブリッド2WD、ガソリン2WDは680㎏)の軽量ボディの効果もあり、WLTCモード燃費はマイルドハイブリッド車で27.7km/L、ガソリン車は25.2km/Lにもなります。同じエンジンを積むスズキの主力スーパーハイト軽ワゴン「スペーシア」(車重900kg)は燃費23.9km/Lですので、軽さによるメリットの大きさがわかるでしょう。
車両価格はガソリン車が税込106~143万円、マイルドハイブリッド車は税込121~150万円。主力グレードはマイルドハイブリッドのHYBRID S(税込121万円)あたりでしょうが、軽自動車でも200万円オーバーが当たり前の令和の時代において、異次元のリーズナブルさです。
安いだけじゃないのがアルトの凄いところ
ただアルトは、安いだけではありません。アルトには、軽量・高剛性のプラットフォーム「HEARTECT(ハーテクト)」とよばれる衝突安全設計が採用されており、環状骨格構造や高減衰マスチックシーラーを使うことで、操縦安定性と乗り心地、静粛性の向上を実現。
また、ベースグレードの「A」を含む全車が「サポカー」の最上位の区分「サポカーS ワイド」を獲得しており、夜間の歩行者も検知可能なデュアルカメラブレーキサポートなどを搭載する「スズキ セーフティ サポート」や、運転席と助手席へのエアバッグのほか、フロントシートサイドエアバッグ、カーテンエアバッグを含む6エアバッグも全車標準装備。先代よりもガラスエリアを拡大することで視界を広くするなどの工夫も織り込まれています。
昨今はどの自動車メーカーも、衝突安全性能の基準が上がるたびにクルマを頑丈につくり込んできましたが、そのぶん、クルマは重たくなり、衝突予防技術や運転支援技術も導入されて、コストも上昇してしまいました。ところがアルトは、その流れに乗って廉価グレードにも十分な安全対策を標準採用しつつも、この低価格帯にまとめあげています。自動車の開発エンジニア出身の筆者からすると、本当に素晴らしいことだと感じます。
最廉価のAグレードは、法人向けの営業車用途がメインですので、ボディカラーも3色のみ(ホワイト、シルバーメタリック、ブルーメタリック)、センターモニター無し、オーディオ無し、と割り切った仕様ですが、55,000 円でバックアイカメラ付7インチディスプレイオーディオ(AM/FMラジオ、スマホ連携、Bluetooth対応)と、操作スイッチ付きのステアリングホイールを装備することが可能となっているなど、安いグレードに必要な装備を選んで追加することで、価格を抑えつつも満足する仕様にまとめることができるのも、アルトのうれしいポイントでしょう。
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