新車で売るのが大変なクルマは何だろうか。大変さというのがやや抽象的だが、筆者が売り方の壁を感じたのはランドクルーザー200を販売したときだった。クルマという何百万円もする大きな契約を、一日にいくつもこなす自動車ディーラーの営業マン。クルマを売ることに長けた彼らでも、デカくて高いクルマの取り扱いには慎重になる。
文:佐々木 亘/画像:トヨタ
【画像ギャラリー】ランクル200ってカッコイイな!! モニター付きに豪華内装をギャラリーでチェック(24枚)画像ギャラリートヨタの最高級車であり扱いの難しかったランクル200
高額なクルマほど売るのが難しい。いわゆる高級車を売る際には、非常に神経を使うものだ。
トヨタの中で、最も神経を使うクルマは何か。それはザ高級車のイメージの強い「クラウン」ではなく、ランドクルーザーであろう。価格も車体も、クラウンよりビッグであり、筆者も初めてランクル200の注文書を作った時には、嫌な汗をかいた。
特にランクル200で販売に神経をとがらせるようになったのは、2009年の一部改良以降だ。登場時には、最上級グレードがAX‘Gセレクション(540万円)だったのだが、一部改良で最上級グレードZXが追加となり、車両本体価格は635万円まで引き上げられた。
このZXをメーカーオプション全部付けにすると、価格は780万円に迫る。ここへディーラーオプションでエアロパーツと快適装備をプラスしたら、車両とオプションの合計金額は850万円近くなるのだ。
プリウスの中間グレードがコミコミ300万円で買えた時代に、3倍近い金額の注文書を作るのは嬉しくもあり緊張もする。このレベルの注文書へ判をもらう前には、必ず管理職から「注文者は信頼に足る人なのか」「絶対キャンセルされないよな」などと入念な確認作業が行われるものだった。
店舗全体に、嫌な緊張感が漂っている時には、どこかの席でランクルの商談をしていることが多い。昔のトヨタの店舗では、高いクルマの契約をもらうことが、お店の一大イベントだったのだ。
【画像ギャラリー】ランクル200ってカッコイイな!! モニター付きに豪華内装をギャラリーでチェック(24枚)画像ギャラリー回収・登録が終わると待っているのが日本一丁寧な納車準備
仕様に間違いないことを確認し、二重三重のチェックを済ませてランクル200がオーダーされる。すると次の仕事は、注文者からお金を回収することだ。
今では銀行振込が当たり前になってきているが、当時はお店に現金を持ってきて支払う人も多かった。特にランクル200 ZXを買う人は現金主義が多く、資金回収が次に大変な仕事である。
大多数の営業マンが初めて目にする900万円近い現金。これを間違いなく数えて、預かるのが一苦労なのだ。お金の威力に圧倒されながら回収を終え、クルマを無事に登録したら、納車を迎える。
納車日前日、契約・回収・登録と大変な業務をこなしてきたが、最後に最もキツイ仕事が待っている。それが納車準備である。
書類の準備や付属品の装着確認などを済ませて、行われるのが洗車と清掃。あの大きな車体を営業マン一人で、絶対傷つけずにキレイにするのだ。この作業だけで2時間近くはかかってくる。
キレイに洗ったクルマを、一晩濡らさずにおいて置けるスペースがあればまだ良いが、店舗もサービス工場も小さい場合には前日に準備をしておくこともできない。そうなると、納車準備は納車日当日の朝に始まる。早出をしてきて、洗車に2時間。これが冬となると、心が折れそうになってくるのだ。
同じく高額でも、クラウンサイズのクルマなら納車準備は易しい。また、クラウンよりもクルマへのこだわりが強い人がランクル200を買う傾向にあり、納車後のアフターフォローも結構骨が折れるものだった。
トヨタ販売店で味わう、高級車販売の壁。それは今も昔も、ランドクルーザーの販売時に感じられるものだろう。ランクルの商談では、営業マンの背筋もピンと伸びるのである。
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コメント
コメントの使い方現役トヨタディーラー営業だが、高額車両の方が相手にも余裕が有る方が多いため気楽に手続きが進むけど、捉え方によって違うんですね。