ホンダが国内の自動車メーカーとして初めて定年を65歳に延長するという方針を明らかにしたのは2015年12月のこと。
本誌では、まさにその直後にホンダへ取材を行った。すでにサントリーが定年65歳制導入を開始し、みずほ銀行なども定年65歳制導入を表明している。そうしたなかでホンダが来年度から定年65歳制を導入する理由とは?
文:ベストカー編集部
ベストカー2016年1月26日号
『アポなし日本全国電話調査』
定年延長だけでなく実態に合わせて労働条件全体を見直し
編集部 もしもし。ホンダでは定年が60歳から65歳に延長されると聞いたんですが、これ本当なんですか?
ホンダ広報部(以下、ホンダ) ええ、そうなんです。ただ、今回の労働条件見直しについては、定年の延長だけがメインではないんです。
編集部 それは、どういうことですか?
ホンダ 労働条件も、現在と昔ではかなり変わりました。今では、例えば「夫婦共働きで、またご両親の介護も必要」といった昔は少なかったケースも見られるようになりました。
そうしたなかで、実態と合った形に総合的労働条件の見直しを行う方向性になったんです。
編集部 なるほど。ということは、定年延長以外にも見直される労働条件があるんですね?
ホンダ はい。詳細は資料(下のまとめ)のとおりですが、子どもがいる社員の手当なども変わります。
60歳以降の給料は60歳未満の8割程度。従来の3割増しに
編集部 で、定年延長の話ですが、これまでと比べ、60歳以降の給与は変わるんですか?
ホンダ 従来は60歳定年で、それ以後は再雇用という形でしたが、平均すると給与は、定年前の概ね半分程度になっていました。
それから海外駐在もできないなどの制限もありましたが、新たな制度では60歳以降の給与は平均すると、60歳未満の8割程度になります。それに仕事ぶりに応じた評価制度もありますから、以前に比べ、より社員のパフォーマンスに直結した給与体系になると思います。
編集部 でも、65歳定年となると退職金はどうなるんですか?
ホンダ 今回は退職金制度も改定されまして、60~65歳の好きな時に定年しても、きちんと退職金が出るという仕組みになっています。
編集部 そりゃ凄いですな。全社員が対象になるんですか?
ホンダ 同じ労働協約のところが対象となるので、本田技研工業と本田技術研究所、ホンダアクセス、ホンダ・レーシング、ホンダエンジニアリング、そしてホンダ学園の計6社、延べ4万人が対象となります。
編集部 ホンダ=本田技研工業だけでなく、関連会社も対象ということなんですね。それで、実際ホンダの社員としては今回の労働条件改定をどう思いますか?
ホンダ 個人的には子育て世代が育児をしやすくなるのが嬉しいですね。それから60~65歳のなかで定年時期を選べて、退職金もちゃんと出るところがいいです。
部 最近は年金もいくら貰えるかわからないですもんね。
ホンダ そうですね。年金の支給が始まる65歳までどうやって生活するかって大きな問題ですよね。
〈まとめ〉ホンダ65歳定年制を含む主な改定内容
- ・定年年齢の延長
- →65歳まで定年を延長
- →60歳~65歳の間に自分で定年時期を決める選択定年制を導入
- ・育児・介護関連制度の拡充
- →家族手当を育児・介護手当に転換
- →在宅勤務の導入、育児の短時間勤務、子どもの看護休暇など
- ・退職金制度の改定
- →定年延長に合わせ退職金カーブを見直す
- →退職金の一部に確定拠出年金を導入
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