まさにクルマ界のフランス革命! パナールがなきゃハチロクも頭文字Dも生まれなかった!?

まさにクルマ界のフランス革命! パナールがなきゃハチロクも頭文字Dも生まれなかった!?

 クルマ好きが好む駆動方式と言えばFRではないだろうか? 駆動と操舵の役割を前後で分けることでバランスに優れていて、ミドシップなどよりもコントローラブルなのが理由とされることが多い。FRの代名詞のようなモデルも多く存在する。しかし、初めて登場したFRはあまり知られていない。一体どんな背景でFRは誕生したのだろうか?

文:西川 昇吾/画像:ベストカーWeb編集部

現在でもまだまだ現役の駆動方式FRの歴史は長い。画像はレクサス LC500
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当時の自動車の問題点を解決

現在でもまだまだ現役の駆動方式FRの歴史は長い。画像はレクサス LC500
現在でもまだまだ現役の駆動方式FRの歴史は長い。画像はレクサス LC500

 FRが誕生したのは1891年とされている。その誕生はフランスの自動車メーカー「パナール・エ・ルヴァソール」(パナールと呼ばれることも)によるものであった。当時の自動車は基本的にエンジンの上に座席を配置していた。このようなレイアウトでは、乗員に振動や熱がダイレクトに伝わるほか、重心が高くなり安定性が低いといった問題点を抱えていた。

 それらの問題点を解決すべく、パナール・エ・ルヴァソールが考案したのがエンジンを乗員の前方に配置する方式だ。これならば乗員の快適性が向上するのはもちろん、座席の位置も低くなるため低重心となり安定性も向上する。また、前輪に荷重がかかるようにして操縦性を向上させる狙いがあったとも言われているのだ。

 エンジンの後ろにクラッチとギヤが直線的に並べられ、そこから伝えられた駆動力が後輪を回すというレイアウトは、現代のFR車と基本的には変わらないもの。こうして誕生した駆動レイアウトは当時「システム・パナール」と言われていた。

モータースポーツで「システム・パナール」の優位性を証明

FRがモータースポーツの歴史を作ったといっても過言ではない
FRがモータースポーツの歴史を作ったといっても過言ではない

 そしてFRという駆動レイアウト、もといシステム・パナールの優位性は当時のモータースポーツでも証明されていった。世界初の本格的な自動車レースとされている1895年に開催された「パリボルドーラリー」で1位を獲得している。

 ドライバーは創業者の1人でもあるエミール・ルヴァソール自身であった。その他でも黎明期のモータースポーツでシステム・パナールは素晴らしい成績を納めていった。

 システム・パナールの優位性が証明され始めると、他の自動車メーカーもこのシステムを採用するようになる。世界初のガソリン自動車を発明したダイムラーも1897年にシステム・パナールを導入している。その後は数多くの自動車メーカーに採用されていった。

 20世紀中盤以降に至るまで、システム・パナールを起源とするFR方式が主流となっていたのは言うまでもないだろう。

 モータースポーツという現場が自動車を進化させた最たる例の1つがシステム・パナールと言えるだろう。このシステムの考案が無ければ、快適性と安定性が高い自動車の誕生は遅れていたかもしれない。自動車の歴史を振り返ると、モータースポーツが大切な場であることを痛感させられるメカニズムの1つだ。

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