ガソリン値上げ報道でも来週170円前後? 高市政権の補助再発動と備蓄放出で“レギュラー200円台回避”はできるのか

ガソリン値上げ報道でも来週170円前後? 高市政権の補助再発動と備蓄放出で“レギュラー200円台回避”はできるのか

 ガソリン価格の超高騰はありうるのか。現在、都内の市況価格はジリジリ値上げしており、レギュラーガソリンの全国平均価格は1Lあたり161.8円(3月9日付け発表値)。そのうえで、石油元売り各社は3月12日から卸価格を1Lあたり約26円引き上げると発表した。「このままいけば190円台、下手をすると200円もあるのでは」と不安が一気に広がっている。そんなタイミングで、高市早苗首相はガソリン価格を全国平均で170円程度に抑制する方針を打ち出し(3月11日夜の会見)、来週からの補助開始に加えて3月16日にも石油備蓄放出に踏み切る考えを示した。クルマを生活の足にしている人にとって、ここで政府がどこまで本気で「効く対策」を打てるのかが最大の焦点になっている。以下、「すぐ値上げはある?」「今週中に給油しておいたほうがいい??」と不安になっている人へ向けて、「いや、落ち着いてください」と判断材料にすべき情報をお伝えします。

文:ベストカー編集局長T、画像:首相官邸、AdobeStock

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石油備蓄はどれくらいあるのか 日本は無防備”ではない

 まず押さえておきたいのは、日本は決して「無防備」ではない、ということだ。資源エネルギー庁の最新資料によると、2025年12月末時点の日本の石油備蓄は、国家備蓄が146日分、民間備蓄が101日分、産油国共同備蓄が7日分で、合計254日分ある。IEA(国際エネルギー機関)基準でも214日分に相当し、製品換算では約7157万キロリットル、保有量ベースでは約7445万キロリットル、約4.7億バレル規模になる。

資源エネルギー庁が発表している「石油備蓄の現況」。平成8年(2026年)2月時点で「合計254日分」の備蓄がある
資源エネルギー庁が発表している「石油備蓄の現況」。平成8年(2026年)2月時点で「合計254日分」の備蓄がある

 つまり、日本は「来週にも油がなくなる国」ではなく、ショックを吸収するためのかなり大きなクッションを持っている。

 ただし安心しきれない要素もある。日本の原油輸入が中東に極端に依存しているからだ。資源エネルギー庁によれば、2023年度の日本の原油輸入に占める中東依存度は94.7%にのぼる。これは米国の9.3%、欧州OECDの16.5%と比べると突出して高い。イラン情勢が危機に陥り、ホルムズ海峡閉鎖が続けば、日本が真っ先に神経質にならざるを得ないのは当然である。高市首相が3/11の会見で「世界でも中東依存度が突出して高い我が国」と強調したのも、決して大げさではない。

カギはホルムズ海峡 短期で戻るなら170円前後、長引けば再び上振れも

 ではガソリン価格は急騰するのか。問題は、今回のイラン情勢が「数週間のショック」で終わるのか、それとも「数か月単位、数年単位の供給不安」に発展するのかだ。

 IEAによると、2025年にはホルムズ海峡を平均日量2000万バレルの原油・石油製品が通過し、世界の海上石油貿易の約25%を占めた。そしてその約80%はアジア向けだ。代替ルートとして使えるのはサウジアラビアとUAEのパイプラインくらいで、迂回可能量は日量3.5〜5.5百万バレル程度にとどまる。つまり、海峡の機能が大きく落ちれば、すべてを代替で埋めるのは難しい。

 現時点の国際機関の見立ては、悲観一色ではない。米EIA(エネルギー省エネルギー情報局)は、3月時点の見通しで、ホルムズ海峡を避ける動きで物流が細っている一方、閉鎖が長引かなければ生産停止は4月初めごろにピークを迎え、その後は通航が徐々に戻ると想定している。

 その前提では、ブレント原油(石油価格の重要な指標のひとつ)は2026年4〜6月期平均で91ドル、年末には70ドル前後まで低下すると予測する。要するに、ベースシナリオは「足元は高いが、ずっと上がり続けるわけではない」というものだ。

 もちろんリスクシナリオは軽く見るべきではない。ロイター通信によると、軍事・海運の専門家の見方として、イランのドローン攻撃や機雷敷設が本格化すれば、ホルムズ海峡の混乱は数か月単位で続きうると伝えている。IEAも「長期の混乱は起こりにくい」としつつ、もし長引けば価格急騰と実物不足が早い段階で起きると警告している。

 つまり、短期で収束すれば政府の補助と備蓄放出はかなり効くが、長引けば「備蓄があるから大丈夫」ではすまなくなる。備蓄は万能薬ではなく、あくまで時間を買うための装置なのだ。

高市政権の初動は悪くない 来週の焦点は“170円前後に抑え込めるか”

 そう考えると、高市政権が昨日(3月11日時点)打ち出した「補助再発動」と「備蓄放出」の同時投入は、現実的な一手だと言っていい。首相は、原油価格が一時120ドルに迫る局面もあったと認めたうえで、ガソリン価格が200円を超える可能性も否定できないと説明し、それでも全国平均を170円程度に抑える方針を示した。さらに、民間備蓄15日分に加え、当面1か月分の国家備蓄を放出する考えを明言している。価格と供給の両面に一気に手を打った点は、率直に評価したい。

2026年3月12日午前0:56、高市早苗首相の「X」公式アカウントで、備蓄石油の放出と価格安定のための補助金についてポストされた。判断が早い

 もちろん、来週から全国すべてのスタンドが一斉に170円になるわけではない。資源エネルギー庁も、補助の効果は徐々に価格へ反映されるとしており、在庫や地域差によって170円台後半や一時的な180円近辺を示す店は出てくるだろう。

 それでも全国平均ベースでは、放っておけば190円台、場合によっては200円も見えた局面を、高市政権が政策で170円前後へ押し戻せるかどうかが最大の見どころになる。一部のSNSでは「200円になる」「いやもうすぐ250円だ」というような呟きもあるが、端的に言って、騒ぎが大きくなって得する人に乗せられないよう注意しよう。

 日本の備蓄は十分にある。

 さらにガソリン価格安定の要素として、3月11日の日本時間夜11時頃、IEAが加盟国32カ国による全会一致で4億バレル(過去最大)の戦略石油備蓄放出を合意・発表したことも挙げられる。あとは、その時間を使って市場の混乱を鎮められるかだ。

 本稿冒頭の議題に戻れば、最寄りのガソリンスタンドがレギュラー160円台/Lであれば、入れておいて損はなさそう。それ以上、たとえば170円台になっても、ここ2~3週間は焦る必要はないだろう。政府の備蓄放出判断や補助金などで、180円、200円と値上がりしていく心配は、ここ2~3週間はなさそうだ(便乗値上げの可能性もあるので注意)。

 今後のガソリン店頭価格は、高市政権の物価高対策への本気度を測る試金石になる。ガソリン価格は物流の根幹を担っており、食料品や各種サービス料金に直接的に効く。まずは今回の迅速な政治判断を評価しつつ、日本政府には引き続きすばやい対応と、抜本的な対策(たとえば米トランプ政権に停戦とホルムズ海峡タンカー航行の安全保障対応を提言する等)を求め続けたい。

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