自動車メーカーのレースマシンは、その多くが役目を終えると博物館の展示品になるか、倉庫で眠ることになる。アウディは違う道を選んだ。レースマシンを販売するという。果たしてどんなビジネスなのだろうか?
文:古賀貴司(自動車王国) 写真:アウディ
【画像ギャラリー】い、いくらなんだろ…アウディのガチなマシンが買える!! 正体はコレ(3枚)画像ギャラリーレースで実際に活躍した2台が販売対象に
アウディの新プロジェクト「アウディスポーツレーシングレジェンド」により、かつてル・マン24時間レースやDTMで活躍した伝説的マシンが、再び走る機会を得るだけでなく、一般の愛好家の手に渡る可能性が開かれた。
今回販売対象となっているのは、具体的には2台のマシン。ひとつは2012年にロマン・デュマ、ロイック・デュバル、マルク・ジェネがFIA世界耐久選手権(WEC)のスパ・フランコルシャン6時間レースで勝利を収めたR18 e-tronクワトロのシャーシ207号。
このマシンはル・マンでは5位に終わったが、アウディはこのR18 e-tronクワトロで2012年、2013年、2014年と3年連続でル・マン24時間レースを制覇している。
もう一台は、2015年にティモ・シャイダーがステアリングを握り、ホッケンハイムのDTMフィナーレで優勝したRS 5 DTMのシャーシ107号だ。
このDTMマシンは2L 4気筒エンジンを搭載し、約600馬力を発揮。現在のDTMで使用されているGT3規格のマシンよりもはるかに高性能で、市販車からかけ離れた純粋なレーシングマシンとなっている。
販売後もアフターケアなど手厚いサポートが受けられる
アウディの取り組みは単にレーシングカーを販売するだけにとどまらない。
購入者へはスペアパーツの供給、定期的な技術検査、修理サービス、そして元開発者からの専門的なアドバイスまでが含まれる。
アウディスポーツGmbHのマネージングディレクター、ロルフ・ミヒル氏は「厳格な基準と高度な専門知識に基づき、当時の再生部品とともにこれらのシャーシをレーシングカーに再構築している」と説明する。
特にR18 e-tronクワトロのようなハイブリッドレーシングカーは恐ろしく複雑なメカニズムを持ち、アウディの支援なしには個人オーナーが運用することはほぼ不可能だろう。
F1マシンのサポートプログラムに似た取り組みだが、より包括的なサービスを提供している点で特筆に値する。
これらのマシンはまさに「コストを問わず」開発された時代の産物だ。
現在のモータースポーツは予算上限や厳格な規則によって制約されているが、この時代のマシンは技術の限界に挑戦して造られたミサイルのような存在だった。
DTMのクラス1マシンも現在使用されているGT3マシンと比べ、はるかに高度な技術が投入されているそうだ。
果たして2台のレーシングカーは誰の手に?
アウディスポーツレーシングレジェンドは今年、ヨーロッパの複数の著名なモータースポーツイベントで姿を見せる予定だ。
5月9日から11日までドイツのホッケンハイムで開催されるジム・クラーク・リバイバル、7月3日から6日までフランスのル・マン・クラシックイベント、そして7月10日から13日までイギリスのグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードで、これら2台のマシンが披露される。
最初のマシンは今年の夏に販売され、新しいオーナーへの引き渡しが予定されている。今回のプロジェクトが成功すれば、他のマシンも市場に出る可能性がある。
当然、これらマシンは超高額になろうが、アウディが最も輝かしい成功を収めた時代の一部になれる希有な機会とも言える。
個人的にはアウディによる超富裕層の囲い込み戦略のひとつではないか、と睨んでいる。
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