車両価格はどんどん上昇し、中古車を売る際にもさまざまな支障があり、愛車を長く乗れば税金が高くなる。おまけにガソリン価格は異常なまでに高騰し、政府の対策も限定的だ。なぜドライバーがこれほど苦しめられるのか? その理由を探ってみた。
文/鈴木喜生、写真/写真AC、Adobe Stock
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ご存知の通り、現在は世界的な物価高の状況にある。総務省統計局の調査(小売物価統計)を見ると、新車の平均車両価格(2024年時点)は2010年と比べて普通車が1.34倍、コンパクトカー(小型車)が1.82倍、軽自動車が1.47倍とされ、この十数年間で異常なほど上昇している。
また、同じ調査資料によると、2022年時点の車両平均価格(全車種の加重平均)が300万円だとすれば、直近の推定値では360万円(120%)まで上昇しているというデータもある。この価格上昇は今も続き、あらゆるクルマの販売価格をじりじりと押し上げている。
なぜこうした物価高騰が発生しているかといえば、それは2022年に始まったウクライナ戦争に起因する。
ロシアがウクライナに侵攻して以後、クルマに関連するあらゆる原材料価格が上昇し、特に触媒に欠かせないパラジウム、ロシアが高い原産比率を占めるアルミニウム、バッテリーに使用されるニッケルなどが急激に高騰した。
これらの価格高騰はいったん収束したものの、世界的なインフレは収まらず、他の要因を巻き込みながら現在も続いている。
世界インフレが加速すれば円安となり、円安は輸入車の価格を押し上げる。国内における輸入車の平均価格の上昇率は2020~2023年で7.2%(IndexBox)。
そもそも関税で割高となる輸入車は、中古車市場においても高止まりの状態にあり、もはや庶民にとっては高嶺の花となりつつある。
クルマが所有しづらいさまざまな理由
物価が上がれば金利も上がる。
日本では長くゼロ金利政策が続けられていたが、2024年3月に日銀がマイナス金利政策を解除し、政策金利を17年ぶりに引き上げる方針を明らかにした。
これによって自動車ローンの金利も現在では上昇傾向にある。特に変動金利型ローンの場合は変動率が高くなるので注意が必要だ。
車両購入時の補助金制度も続々と縮小され、活用できる補助制度も限られつつある。これらの金融状況がタイトになるなか、昨今では買い替えの時期、次の車両購入をあきらめるドライバーも少なくないようだ。
クルマを所有しづらくなっているのは、車両購入価格だけが理由ではない。輸入依存度が高い日本では、世界的な物価高騰がエネルギー価格にも大きく影響し、ガソリン価格は今も異常な高止まり状態にある。
この現状に対し、本来であれば政府がトリガー条項の凍結を解除し、その価格を安値に誘導べきだが、これを頑なに固辞。1リッター当たり一律25.1円かけられている暫定税率も、その名称とは裏腹に半世紀以上続く。
これらが解除されれば燃料価格は一気に下落かつ安定するはずだが、政府はその代替案として5月22日、1リッター当たり10円まで燃料販売価格を段階的に引き下げる補助金制度を発動した。
これは2025年夏に控える参院選対策を目的とした策と思われるが、その値下げ率は低く、半分近くを税金が占めるガソリン税制を根本的に是正するものではない。
ただし、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの分析によると、この異様な物価高は2025年の後半にかけて、ある程度収まると分析されている。
物価の下落に所得の減少に連動しなければ、愛車を所有することがもう少し楽になるかもしれない。








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