現在、タクシーとして使われることを第一に開発され、販売されているトヨタのJPNタクシー。タクシー事業者からの意見を吸い上げて開発されたモデルだけあって、今では路上で見ない日はないと言っても過言ではないほど街中を走り回っている。ただ実はJPNタクシーよりも前に、タクシー用途に合致するモデルとしてリリースされていたモデルが存在する。それが1993年7月に発売された日産クルーである。
文:小鮒 康一/画像:日産
【画像ギャラリー】タクシーの装備例もじっくり観察できちゃう!? これが日産 クルーのインパネまわりだ! Y31セドリックも同じ時代を走った営業車だ!(19枚)画像ギャラリーCREW(乗組員)というストレート名前を冠した日産クルー
日産のセダン型のタクシーベースとしては、古くからセドリック/グロリアやローレル、ブルーバードなど、乗用モデルが存在する車両をベースに装備を簡素化してタクシー向けに変更したものが存在していたが、クルーに関しては当初からタクシーや教習車として使われることを前提として開発されていた。
そのため、言い方は悪いが見た目よりも室内空間の確保が優先されており、キャビンをロング・ワイド・ハイルーフ化することで、ボディサイズを当時の小型規格内に抑えながらも中型タクシー並みの居住空間を確保していたのだ。
さらに乗客の乗り降りのしやすさを優先するために、後席左側のドアは前後方向に寸法を50mm拡大した大型ドアを採用するなど、乗用モデルベースでは盛り込みにくい要素を最初から採り入れていたのも特徴だった。
パワートレーンもタクシー用途をメインとしたため、直列4気筒2LのLPGと直列6気筒2.8Lディーゼルというラインナップで、優れた経済性と整備性、耐久信頼性を備え、シャシーもすでに十分実績のあったローレルのフロントとセドリックのリアを組み合わせるなど、ビジネスカーとして必要な要素を詰め込んだものになっていたのである。
自家用車から商用車まで幅広くカバー
そんな働くクルマに特化して展開されたクルーだったが、1994年1月には一般ユーザー向けの「クルーサルーン」なるモデルを追加する。クルーサルーンはコンサバティブなキャラクターゆえに保守的なユーザーをターゲットとしており、すでにラインナップされていた2.8Lディーゼルに加え、直列6気筒2Lのガソリンエンジンも設定していた。
同年4月には、こちらも働くクルマのひとつであるパトロールカー仕様も追加され、タクシー、ハイヤー、教習車、パトロールカーとほぼすべてを網羅するモデルとなったのだった。
その後も働くクルマとして粛々と販売が続けられていたクルーだったが、2002年6月に2Lガソリンと2.8Lディーゼルが廃止となり、乗用モデルのクルーサルーンも終売。2LのLPGモデルのみのラインナップとなったが、エントリーグレードであれば150万円を切る安価なモデルとしてタクシーベースとしては根強い人気があり、2009年夏に終売となるまでおよそ16年の長い歴史を誇った。
質実剛健なビジネスセダンとして愛されたクルーだったが、FRレイアウトや直列6気筒のRB型エンジンを搭載していたこと、また純正でフロア5速MTがあったことなどから、一時期はRB25DETやRB26DETTエンジンを換装して変わり種ドリ車に供されることもあった。
しかし、そもそもガソリンモデルのクルーがそこまで売れたワケではなかったことや、RBターボエンジンの高騰などもあって最近ではめっきり見かけなくなってしまったのも時代の流れを感じる。





















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