そんなにたくさん売れたわけじゃない。でも、何年経ってもみんなが覚えているクルマ……今回は日本のクルマでありながらランボルギーニ感あふれるバタフライドアを持つトヨタ セラをご紹介!! こいつを忘れられるワケがない!!
※本稿は2025年10月のものです
文:小沢コージ/写真:小倉 健
初出:『ベストカー』2025年11月10日号
バブルが生んだ隠れスーパーカー!?
日本が誇るスーパーカーと言えばトヨタ 2000GTやホンダ NSXってことになっている。が、小沢の独断と偏見で最も日本らしいスーパーカーと言えばコイツじゃないだろうか?
そう、懐かしきバブル最盛期の1990年に生まれたトヨタ セラだ。
「セラ」はフランス語で存在を表すエートルの未来形。「日常の枠を超えた胸を躍らせるような体験」を狙い、1987年の東京モーターショーに出たコンセプトカー「AXV-II」のリアル版なのだ。
ベースは当時の大衆車スターレットで全長わずか3.8m強。エンジンは当時の1.5L直4ハイメカツインカム5E型で、正直耐久性自慢。110ps&13.5kgmのピークパワー&トルクも全然凄くない。
だが全天候型オープンカーなるバブルなコンセプトのもと、日本の量産車では初めてガラスを天井まで回り込ませたグラスキャビンやガルウィングドア(リリースから)は華やかかつ衝撃的。まさに和製カウンタックであり、当時全車200万円以下の安さも国産スーパーカーならでは。
技術的にも高度で、飛行機のキャノピーの如きTバールーフや窓枠ナシの全面ガラス張りリアハッチを実現するために、当時珍しい液圧プレス成形法を採用。重くてデカいガルウィングを支えるためにドア操作力温度補償ダンパーステーも開発。結構なハイテクまで投入されていたのだ。
セラオーナーのクルマバカ水口先生によれば「いま日本では保有者が減ってますが、海外では人気が高くすでに1000万円レベルの引き合いも来てます」とか。最近になって海外で絶大な人気を誇るバブルの日本音楽シティポップのようにセラやマツダAZ-1、CR-Xデルソルが再評価されてるってわけなのだ。
事実、今みてもキュートな和製カウンタックぶりは健在。羽根を広げたカブトムシの如きフォルムはいるだけであたりがパッと明るくなるし、小さくて場所を取らない。
当時走る金魚鉢とも言われたグラスキャノピーは陽が出ると暑いが全車オートエアコン標準装備なので身体は涼しく、脱着式サンシェードを付ければ頭も涼しい。ヘッドレスト一体型のビオラフォルムシートは身体をゆったり包んでくれるし、インパネも未来的でカッコいい。
リアシートはコンパクトボディだけに広いとは言えず、身長175cmの小沢が座ると頭がTバールーフにぶつかり、ヒザもギリギリ。だが小学生くらいなら余裕だし、ラゲッジ容量も200L前後ってとこだが、リア背もたれを倒せばゴルフバッグ2つはいけそうだ。
何より予想以上なのは走りで、開口部の広いガルウィングドアだけに剛性は低いと思ったが密閉感は予想以上。フロアも絶妙に強化されているようでしっかり。
速さも110psエンジンだけに大したことないと思いきや車重1トン以下なので意外に速い。全高も1.3m以下と低めでハンドリングもシャープだし、4ATこそ少々かったるいが楽しい。加え10スピーカーのスーパーライブサウンドグレードは音響自慢。ガラス反響を上手く使ったコンサートホールのよう。
一方、維持費だが40年落ちで内外装パーツは少ないもののエンジンや足回りは直せるし、ドアダンパーはアマゾンで1万8000円で買えるとか。日本が誇る走るシティポップ。小沢もマジで欲しくなってきた!
●小沢コージ氏の評価
・タイムスリップ度:★★★★★
・レア度:★★★★
・お金かかりそう度:★★★★
・乗って楽しい度:★★★★★
バブルが生んだ超大衆的スーパーカー。骨格は普通だがデザインや工夫はスーパーカー級。今も100万円ちょいから買えるぞ!
























コメント
コメントの使い方