フジエクスプレスで臨時運転士として採用された記者のバス運転士奮闘記は、名実ともに正運転士として独りで営業運転を行っている。本稿では引き続き、路線バスの運転についてお話ししよう。
文／写真:古川智規（バスマガジン編集部）
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■「ちぃばす」とは？
記者が担当するのは、企業契約輸送のシャトルバスと、東京都港区のコミュニティバスである「ちぃばす」の芝浦港南ルートである。さすがは大都会のコミュニティバスなだけあり、8ルート9路線もある。使用車両は小型の日野ポンチョやEVバスと中型の日野レインボー（一部でいすゞエルガミオ）だ。
地方のコミュニティバスは人口減少でバス事業者が廃止した路線を引き継いだり統合したりして、もっぱら小型車が使用されるケースが多いが、港区の場合は鉄道や路線バスが走っていない住宅地域とターミナル駅や公共施設、あるいは病院といった施設を結ぶ路線をわざわざ引いて運行している。
運行本数も多く、芝浦港南ルートの場合は循環路線なので単純往復の便数というわけではないが、主要ターミナルである田町駅東口から品川駅港南口間に限って数えると平日で40往復も走っている。それだけバスの台数と運転士が必要なわけだ。この概ね40便を8名の運転士で運行している。
■芝浦港南ルート
芝浦港南ルートは路線上の起点と終点は竹芝桟橋入口である循環線だ。竹芝桟橋入口から田町駅東口を経由して品川駅港南口で折り返す。折り返しなので循環路線の途中停留所扱いで、もと来た道を戻りながら、あるいは往路と復路でルートを違えながら再び竹芝桟橋入口へ戻る。この1周がおおよそ2時間だ。
竹芝桟橋入口から田町駅東口が30分、田町駅東口から品川駅港南口が30分、これを往復して循環すると120分になる。運賃は1乗車100円で、どこまで乗っても良い。竹芝桟橋入口から竹芝桟橋入口まで乗り通せば2時間で100円である。
ただし、需要が多い田町駅東口から品川駅港南口間の区間便もあるので、田町駅東口～品川駅港南口～田町駅東口と乗り通しても1時間のバスもある。2時間乗り続けてやろうというマニアの方は竹芝桟橋入口停留所からチャレンジしていただきたい。
■運転士の運用は田町駅が基本
路線の概要は以上だが、運転士も起点と終点で交代するのかといえばそうではない。運転士は田町駅東口で交代する運用がなされている。よってまだ運行途中で旅客が乗車中のバスであっても、田町駅東口で別の運転士に交代する。
まとめると運転士は田町駅東口から品川駅港南口方面行きのバスに乗務する。そして品川駅港南口で折り返してきて、田町駅東口に戻ってくる。そのまま竹芝桟橋入口まで運行して、いったん終点となり乗客は全員降車する。一度回送扱いにして、そのまま田町駅東口経由品川駅港南口方面行きになり、田町駅東口まで運行して別の運転士に交代する。次の乗務便が来るまでが休憩という形である。
運転士は田町駅東口～品川駅港南口までが30分、戻って田町駅東口までが30分、引き続き竹芝桟橋入口まで30分、折り返し田町駅東口までが30分で概ね合計2時間の乗務である。区間便を担当する場合は田町駅東口～品川駅港南口～田町径東口を1周としてこれを連続2周すると2時間で、時間的には同じでる。
こうした2時間や1時間の運行を組み合わせて仕業が組まれている。もちろん始発便は途中の停留所から運行を開始するダイヤだったり、品川駅に配車する仕業だったりする。逆に終バスは途中停留所止まりの便だったり、田町駅東口止めでそのまま回送で帰庫する便だったりする場合もある。
さらに、車両で出庫する以外にも、朝の遅い仕業は出発点呼を受けて徒歩で田町駅まで行き、バスを引き継ぐ場合も、あるいは早朝からの仕業の場合は、田町駅で他の運転士にバスを引き継いで徒歩で帰庫して終わりの仕業もある。
ここまで書くと、マニアの方は「一人の運転士の1ダイヤ2時間を乗り通そうと思ったら200円かかるなぁ」と思われたはずだが、そういうことになる。竹芝桟橋入口か田町駅東口で終点になるので、一度下車して同じ運転士が運行するバスにその場で乗り直さなければならないので200円かかる。
