あれれ? 振り返ってみたらGRヤリスDATってなんか速くなってない?? まさしくレースの現場が人もクルマも育てた!!

あれれ? 振り返ってみたらGRヤリスDATってなんか速くなってない?? まさしくレースの現場が人もクルマも育てた!!

 ラリーの現場でGRヤリスDATが、確かな存在感を示し始めている。開幕時はMTに一歩譲る場面もあったが、最近では互角以上の戦いを見せるケースが増えてきた! でも一体なにがきっかけなの? トヨタが大好き! でおなじみの大学生くま吉くんがその謎を調査してくれたぞ。そこにはトヨタ流の地道な進化と、現場の積み重ねがあった!

文:大学生くま吉くん/写真:大学生くま吉くん、トヨタ

【画像ギャラリー】モリゾウさんの「道が人を鍛える」を体現するラリーの現場!! GRヤリスDATがMTに匹敵するようになった秘訣!!(4枚)画像ギャラリー

DATがどうやら調子良さそうだぞ!?

下位に沈んだシーズン前半と比べて徐々に上位に組み込んでいったGRヤリスDAT勢。画像は第3戦のもの
下位に沈んだシーズン前半と比べて徐々に上位に組み込んでいったGRヤリスDAT勢。画像は第3戦のもの

 最近、ラリーをはじめとするモータースポーツの現場では、GRヤリスDAT(ダイレクト・オートマチック・トランスミッション)が強さを見せている。思い返せば数ヶ月前、ラリーの現場で、DAT勢は構造上の理由からアクセル応答でMT勢にわずかに遅れをとる場面が多かった。

しかし直近では、ターマックの山岳ステージでもDAT勢がMT勢と互角に戦うシーンが増えてきた。ただ、トヨタによると、DATに大規模なアップデートが投入された訳ではない。にもかかわらず、走りの雰囲気、そして速さは明らかに変わってきている。

 では、なぜDATは速さを見せ始めているのだろうか。その答えは、意外と地道なカイゼンの連続だった。

終わりなきもっといいクルマづくり

自ら先頭に立ちもっといいクルマづくりに取り組むモリゾウさん(画像中央)
自ら先頭に立ちもっといいクルマづくりに取り組むモリゾウさん(画像中央)

 もっといいクルマをつくろうよ。

 これは約16年前の社長就任時、現トヨタ自動車会長の豊田章男氏※が発したメッセージだ。※以下モリゾウさんとする。この「もっといいクルマつくろうよ」、そして「もっといいクルマづくり」。これは終わりのない、永遠と続くクルマづくりであり、地域や人によって“いいクルマ”は違うという考えから、あえてモリゾウさんは明確な答えを出していない。

 そして現在、トヨタ自動車ではモータースポーツを起点とした“もっといいクルマづくり”が非常に加速している。その象徴的な存在の一つが、GRヤリスやGRカローラ、LBX MORIZO RRに搭載されているDATだ。

 このDAT、圧倒的にATユーザーが多い中、「モータースポーツのすそ野の拡大」を意識し「MTより速いAT」を目指して開発されたトランスミッションになる。実際、サーキットレースではDATはMT勢より速いケースが多く見られるが、逆にラリーの現場ではMT勢に対し苦戦している様子が見られた。

 そこで筆者は今年5月、DATについてGRヤリスの担当エンジニアを取材した際、「トルクコンバーターを常に滑らせる構造のため、アクセル操作に対する反応がほんの少し遅れる傾向がある」と教えてくださった。

 その発言から早半年。

 先日、岐阜県高山市で行われた「全日本ラリーM.C.S.C. ラリーハイランドマスターズ2025」ではMCC(モリゾウチャレンジカップ)内でDAT勢が強さを見せた。そこで今回は、S耐岡山大会のパドックでGRヤリスの担当エンジニアに、この半年の中でDATにどのような進化があったのかについて取材してきたので紹介する。

担当エンジニアが語るDATの進化

Rd.8でMCC総合2位に入った兼松由奈選手のGRヤリスDAT
Rd.8でMCC総合2位に入った兼松由奈選手のGRヤリスDAT

 まず、GRヤリスの担当エンジニアによると、この半年間でMCCに参戦するGRヤリスDAT勢に対し、トヨタから「大規模なアップデートを配信した事実はない」という。

 ただ、同時にそれは「アップデートをまったくしていない」という意味ではない。

 その理由としてGRヤリスの担当エンジニアが挙げたのが、各チームが独自に様々なアップデートを行っているという点だ。もちろん、TGR-WRJで走る平川真子選手のアップデート状況については担当エンジニアは当然、把握している。

 しかし、それ以外のチームについては、どのアップデートを入れて速くなっているのかまでは、現状では把握できていないそうだ。各チームがどのようなアップデートを投入しているかは不明にしろ、このDAT勢の善戦には各チームや選手の努力があってこそのものなのだと、筆者は感じた。

二人三脚で進化するクルマとドライバー

MCCを戦うWGR-WRJの平川真子選手のGRヤリスDAT
MCCを戦うWGR-WRJの平川真子選手のGRヤリスDAT

 では、TGR-WRJで戦う平川真子選手のGRヤリスDATは、どのような進化を遂げているのだろうか。GRヤリスの担当エンジニアによると、クルマの進化だけではなく「ドライバーとクルマが一緒に切磋琢磨しながらアップデートしている」という表現がもっとも正しいという。

 具体的には、今回、平川選手のGRヤリスDATに大きなアップデートを投入したわけではない。むしろ足まわりを中心としたハード面、DATだからというより、車両としての基本性能に関わる部分を徹底的にアップデートしてきたことが大きいという。そして同時に、平川選手自身もクルマと対話しながらドライビングを進化させ、ステージごとに確実に速さを積み上げている。

 こうしたクルマとドライバーの“二人三脚の進化”が積み重なった結果、GRヤリスDATはMCCでトップ争いができるまで進化してきた。このお話を聞いて、モリゾウさんの言葉を借りるなら「道が人を鍛える」の一例なのだと思った。モータースポーツの現場では、多種多様な道を走ることでクルマが鍛えられ、そして同時に、ドライバーやメカニック、エンジニアなど“人”も鍛えられていく。

 その相互作用こそが、GRヤリスDATが速さを取り戻し、さらなる進化を見せ始めている理由なのだと、筆者は強く感じた。

 来シーズンからはDAT勢だけではなく、MT勢も進化した改良型GRヤリスの使用が解禁される。来シーズン果たして、GRヤリスDATそしてMCCに参加するドライバー達はどのような走りを見せてくれるのか、目が離せない!!

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