軽油の入れ間違いが後を絶たない理由とは? JAF調査が示す誤給油の実態と正しい対処法

軽油の入れ間違いが後を絶たない理由とは? JAF調査が示す誤給油の実態と正しい対処法

 JAFの調査によれば軽自動車に軽油を入れるケースやガソリン車に軽油、ディーゼル車にガソリンを入れるケースもいまだにあるという。さらに首都圏で軽油を入れた後、寒い地域に行くと凍るケースもあるので注意が必要だ。そんな軽油にまつわる最適解を解説していこう。

文:ベストカーWeb編集部/写真:ベストカーWeb編集部、Adobe Stock(トビラ写真はAdobe Stock@mikitea)

【画像ギャラリー】ハイオクガソリン、レギュラーガソリン、軽油の色って何色か知っていますか? 写真でチェック!(6枚)画像ギャラリー

軽自動車に軽油を入れる間違いが実際にある!

燃料の色はJIS規格で決められ着色されている。一番左の淡緑色が軽油、中央のハイオクガソリンとレギュラーガソリンはオレンジ色で同じ色だ
燃料の色はJIS規格で決められ着色されている。一番左の淡緑色が軽油、中央のハイオクガソリンとレギュラーガソリンはオレンジ色で同じ色だ

 「軽だから軽油を入れるんでしょ」――これは笑い話では済まされない実際のトラブルだ。2022年10月1日~10月31日の1カ月間、JAFが出動した「燃料の入れ間違い」による救援は全国で105件にも及んだ。

 そのうちガソリン車に軽油を給油してしまった件数が57件もあり、調査では「レンタカーを借りて普段と違うクルマに乗った」「軽自動車だから軽油を入れた」など、ドライバー側の認識不足が原因として挙がっている。

 一般的なセルフ式ガソリンスタンドの普及により、給油ノズルの色や燃料の違いを認識せずに誤って給油してしまう例が後を絶たないのである。セルフスタンドの給油ノズルは消防法により、レギュラーが赤、ハイオクが黄、軽油が緑と色分けされている。

 ハイオクガソリン、レギュラーガソリンの色については、無色透明な灯油との誤認による火災を防ぐため、オレンジ色に人工着色することがJIS規格によって義務付けられている。レギュラーガソリン、ハイオクガソリンの色は同じオレンジ色となる。

 軽油は淡黄色だが、これは精製工程における自然な色調変化によるもので意図的に着色されたものではない。

 現在、販売されている軽自動車は、ガソリンエンジンを搭載している。軽油はそもそもディーゼルエンジン専用の燃料であり、軽自動車に軽油を入れるとエンジンが正常に作動しないだけでなく、燃料系統にダメージを与える危険すらある。軽油はガソリンと比べて揮発性が低く、気化しにくいため、ガソリンエンジンでは正常な燃焼ができないのだ。

誤って給油すると起こるトラブルとは?

セルフ式ガソリンスタンドでは油種の違いを文字と色でハッキリ示している。これなら間違いようはないはずなのだが、それでも「ついうっかり」は起こりうる
セルフ式ガソリンスタンドでは油種の違いを文字と色でハッキリ示している。これなら間違いようはないはずなのだが、それでも「ついうっかり」は起こりうる

 誤給油の影響はケースによって異なるが、代表的なトラブルを見ていこう。まず、ガソリン車に軽油を入れた場合、軽油の配合が多い状態ではエンジン出力が低下し、加速が鈍くなってしまう。

 さらに軽油は気化しにくいため不完全燃焼が起こり、黒い排気ガスが発生することもある。そして最終的にはエンジンがかからなくなってしまう可能性が高い。

 一方で、ディーゼル車に誤ってガソリンを入れてしまった場合、軽油よりも潤滑性が低いガソリンは燃料ポンプや噴射ノズルなどの部品に深刻なダメージを与えやすい。燃料噴射装置が損傷すると、白煙の発生や異音を伴いながらエンジンが停止することもある。

 誤給油の対処としては、絶対にエンジンを始動しないことが鉄則である。給油後すぐに気づいた場合はガソリンスタンドのスタッフに伝え、燃料を抜いてもらう。

 もし走行後に気づいた場合は、JAFや保険会社のロードサービスを呼びレッカーで整備工場へ移動するのが安全だ。燃料タンクの洗浄だけで済めば比較的低コストで済むが、誤給油後に走行してしまうと配管・エンジン内部の洗浄や部品交換が必要となり、修理費用が数十万円に達するケースもある。

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首都圏で軽油を入れて寒い雪国に行くと、軽油が凍る

何も知らずに都内で入れた軽油を入れたまま積雪地方に行くと凍ってしまう
何も知らずに都内で入れた軽油を入れたまま積雪地方に行くと凍ってしまう

 軽油にはもともと灯油成分が含まれており、この灯油成分が少ないほど低温時に濁りやすく、流動性が落ち、最悪は凍結する。一般的に寒冷地軽油は灯油を混ぜることで製造され、灯油の比率が高くなるほど軽油の号数が高くなる。

 日本の軽油はJIS K 2204で、主に低温での流動性の違いによって「特1号・1号・2号・3号・特3号」の5種類に分類されている。簡単にいうと、数字が進むほど寒さに強い軽油である。

 ここで重要なのが「流動点」と「目詰まり点」である。流動点は、軽油が低温になったときに流動性を保てる性質を示す指標。

 一方、実際のディーゼル車では、気温が下がると軽油中のパラフィン(ワックス)分が析出し、それが燃料フィルターを詰まらせることがある。そのため実用上は「目詰まり点」もかなり重要になる。

 特1号は、流動点が+5℃以下、目詰まり点が規定なしで暖かい時期向け。1号は流動点が-2.5℃以下、目詰まり点が-1℃以下、夏期向け。2号は流動点が-7.5℃以下、目詰まり点が-5℃以下、一般的な冬期用。3号は流動点が-20℃以下、目詰まり点が-12℃以下、寒冷地の冬用。特3号は流動点が-30℃以下、目詰まり点が-19℃以下、厳寒地用となっている。

 ENEOSでは「夏期は1号または特1号、冬期は2号、寒冷地では3号・特3号」と説明している。概ね、10月頃から地域の気温に合わせて2号軽油→3号軽油へと切り替わっていく。

 ここで厄介なのが、普段は都市部の市街地しか走らないクルマが、スキーなどで積雪地へ向かうケースである。都市部では真冬でも1号軽油や2号軽油が供給されているため、出発前に満タンにして寒冷地へ行くと、その道中や翌朝に軽油が凍りつき、エンジンがかからなくなる、というトラブルが実際によく起きるのだ。

 「軽油が凍るって本当?」と疑問に思う読者も多いだろう。実は軽油にも種類があり、その低温特性は大きく異なる。ベストカーWebの実験では、都市部で一般的な2号軽油と寒冷地用の3号軽油を冷凍庫で比較した。

3号軽油、2号軽油を使ってテストを行った。一緒に冷凍庫に入れた温度計は、-21.4℃を指している
3号軽油、2号軽油を使ってテストを行った。一緒に冷凍庫に入れた温度計は、-21.4℃を指している

 流動点は軽油の“凍り始める目安”であり、JIS規格では2号軽油が−7.5℃以下、3号軽油が−20℃以下と定められている。

 冷凍庫内が−14.6℃まで下がった段階で、2号軽油はワックス成分が析出して明らかに流動性が悪化し、これをエンジンに使うと燃料フィルターや配管が詰まるなどのトラブルが発生しうる状態となった。3号軽油はまだ問題なく流動性を保っていたものの、さらに低温になるとこちらも結晶が発生することが確認されたのである。

各都道府県の2号、1号、特1号軽油の使用状況
各都道府県の2号、1号、特1号軽油の使用状況

 この現象が意味するのは、首都圏や温暖な地域で普段走るディーゼル車に入れた軽油を満タンにして、そのまま寒冷な雪国へドライブに出かけると、途中や現地で軽油が“凍結(正確にはワックス析出による流動性低下)”してしまう可能性があるということだ。軽油がゲル状になってしまうと、燃料ポンプやフィルターが詰まり、最悪エンジンが始動できないトラブルにつながる。

 対策としては、寒冷地に到着する前に燃料を減らし、現地で寒冷地仕様の軽油(3号や特3号など)を給油することが推奨される。さらに、燃料タンク内に軽油用の凍結防止剤を添加することで、流動点をさらに低温に引き下げることも可能だ。

 ちなみに、2号軽油が一般的な東京などでも3号軽油は購入できる。これは、長距離トラックが利用する幹線道路沿いのガソリンスタンド(※すべてではない)では、12〜3月の期間のみ3号軽油を供給しているためである。

庫内温度−21.4℃下の3号軽油の表面を拡大。瓶のふちに沿うように盛り上がり凍っている。混ぜてみると、フローズンドリンクのようになってしまっていた
庫内温度−21.4℃下の3号軽油の表面を拡大。瓶のふちに沿うように盛り上がり凍っている。混ぜてみると、フローズンドリンクのようになってしまっていた

 なお、「凍った軽油はもうダメなのか?」という疑問を持つ人も多いが、全国石油協会によれば、低温で析出したワックス成分が再び融ければ元の品質に戻るという。つまり、一度凍っても使い物にならないわけではないので、そこは安心してよい。

 軽油はガソリンと違い、条件次第で“凍る”可能性がある燃料であること、そして誤給油によるトラブルは決して他人事ではないことを知っておこう。

 給油時には自分のクルマに適した燃料を選択するのはもちろん、冬の長距離ドライブでは燃料の種類と供給地域にも注意を払うことが、快適かつ安心なカーライフにつながるのである。

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