ネットニュースを騒がせた高速道路を走るサビだらけのプリウス。発売から10年も経たないプリウスがどうしてこんなにサビまみれになってしまったのか!?
ネット上でさまざまな憶測を呼んだ1台を、ベストカーも取材してみました。するとそこには巧みな職人芸と熱き情熱が隠されていたのです。
文:ベストカー編集部
写真:Takinosuke Ara (カラップ提供)
初出:ベストカー2017年5月10号
「身から出たサビ」はもう古い!?
クルマ好きは洗車を定期的にしてピカピカに磨き上げるべし。言われなくてもそうしている人も多いはず。
しかし所変われば文化も変わるものでして。外国では「朽ちていくクルマ」を愛でるという、ハイパーマニアックな趣味もあるそうな。
そんな豆知識を頭に入れたうえで写真をご覧いただこう。サビだらけのプリウス。『傷だらけのローラ』みたいな語感だが、とにかくこのプリウスのサビ方は尋常ではない。
森の中に長年放置していたならまだしも、初期モデルでも製造から10年も経っていない30プリウスがこんな状況になるなんて。現在の塗装技術ならここまで錆びることはなさそうなのに……。
さっそくこのクルマのオーナーの福島県の服部純也さんに電話取材をしてみた。
「私が経営するカラップというカーラッピングショップの社用車なんです。サビはもちろんラッピングで表現しているんですよ」
サビはすべてラッピングでフィルムの下には綺麗な塗装面が残っているという。いやはやラッピング恐るべし。
こちらがラッピング前のプリウス。いたって普通のキレイなプリウスだ
上のプリウスがたった数日でここまでサビサビになる!! なんてことだ!!
サビに隠された超絶技巧とは?
ふつふつとわき上がる疑問が、なぜこのようなラッピングをしたのかということ。せっかく綺麗なプリウスなのに。
「海外で3年前くらいにサビのラッピングが流行したんですよね。業界としてはもう定着している技法ですが、日本ではあまり施行しているクルマはいないんです。だから看板代わりに全国を飛び回る社用車に施行しました」
しかもこのラッピング、データは自社製だという。「サビの写真は素材として購入しましたが、それを画像処理ソフトで加工してピラーにはこのサビ、ボンネットにはこのサビ、というように車種専用のサビシートを作りました」と服部さん。
その効果は写真のとおり。風雪に耐えたようなリアルなサビ具合、雨水の滴った跡に流れるサビもみごと。さらに要注目はサイドシルのぼこぼこのサビだ。当然ラッピングだから実際にはサビによる穴は開いていない。
「クルマが完成したのが今年の3月初めですが、構想としては半年前からありました。シートのデータ製作が10時間、貼り込みが3日間。素材探しも含めるとだいたい5日間くらいで完成しました」
自然界でこの状態に持っていくにはきっと50年はかかるだろうから、5日でできちゃうなんてこれも時短か!?
風雪に耐えて早50年……、そんな味わいを見せるが実はまだまだ新しいクルマだ。ルーフから流れ落ちるサビは実車を研究しないと出てこないもの。トヨタマークにしても遊び心が満載だ
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