伊豆半島には本格的な峠越えをする一般路線バスが幾つか通っていて、同エリアでの路線バスらしい味付けに一役買っている。そんな中、乗りごたえの面ではどの路線がベストか選ぼうとするなら……東海バス「I41系統」かもしれない。
文・写真:中山修一
(バスマガジンWeb/ベストカーWebギャラリー内に、東海バスI41系統にまつわる写真があります)
■どこへ行くバス? 東海バス「I41系統」
東海バスが運行している「I41系統」は、伊豆半島にネットワークを広げる路線バスのハブ的な役割を持っている、修善寺駅前のバスターミナルと、半島北東寄りで海沿いの有名観光地・伊東駅前との間、およそ23.7kmの距離を結ぶ一般路線バスだ。
山で隔てられている修善寺と伊東の間には、伊東修善寺線の愛称を持つ静岡県道12号と、伊東西伊豆線の県道59号が敷かれていて、後者に「冷川峠(ひえかわとうげ)」と呼ばれる、標高360mくらいの峠道が含まれている。
I41系統はこの県道59号をメインルートに修善寺〜伊東を直通する経路が取られており、伊豆半島内で活躍する峠越え系路線バスの一つに数えられる性質の持ち主でもある。
修善寺〜伊東という主要地同士を結んでいるのと、他にダイレクトで両地を結んでいるバスが特にない状況から見て、極太の幹線かと思いきや、2026年2月時点のダイヤ準拠で1日6往復。
なんともローカル路線バスの雰囲気漂う本数で、利用の際はある程度どの便に乗るかを狙っておくと安心な細さ。河津方面から来る天城峠経由C50系統の一部便ほか、乗り継ぎでキレイにつながるタイミングもある。
■ごくレギュラーな郊外路線?
2025年12月にI41系統を利用する機会ができ、修善寺→伊東方向で試してみることにした。通常は修善寺駅バスターミナルの3番乗り場からI41系統が出ている。
バスが修善寺駅を出発すると、修善寺の市街地を通る県道12号にすぐ入り道なりに進んでいく。市街地を出てしばらくの間、空広めで自然の緑と人工物がほどよく混ざり合った、平均的な郊外の路線バスといった風景が続き、伊東までずっとこんなマッタリ調子かな? と思った。
ところが、出発から20分ほど経って伊豆スカイラインの交差をくぐり「冷川」バス停を通過、県道12→県道59号に入ってすぐ、これまで片側1車線だった道のセンターラインが消え、急に道幅も狭くなった。
■豹変するバス像
途中で一瞬だけ、わざわざ狭いほうの道を選んで進む路線バス自体は全国各地、大都会/ローカルに関係なくかなりの数が存在していて、道幅と車両サイズが全く合わないアンバランスさが妖艶な刺激に置き換わり、「狭隘系」として大変な魅力がある。
I41系統もその一種かな? と考えて、いつものように狭隘系特有の狭さを満喫していると、何やら道幅がまったく戻る気配を見せず、そのまま上り坂へと突入していった。
このバスが冷川峠という所を通るまでは乗車前に覚えておいたものの、道幅まではつゆ知らず。この冷川峠、どうやら今となっては、よく“旧道”と呼ばれるような昔の作りのまま、手を加えず今日に至っているようで、とにかくめちゃくちゃ狭いのだ。
視線の先に続くのは、木々のトンネルに囲まれ圧迫感が強調された、必要ながらも絶対に十分ではないであろう幅しか持たない硬派な道筋。
峠道ということで見るからにガツンと来るヘアピンカーブと、中型路線車のディーゼルターボが唸る連続勾配が加わり、ここでI41系統がタダの狭隘系では済まないと確信した。
こんなのホントにバスの通り道なのかと、現在進行形でバスに乗っている事実すら疑うほどのスリルに衝撃を受けつつ、これといって物ともしないように、スルスルと難所をこなして行くドライビングテクに脱帽。
平成初期なら旧道の狭い難所を通るバス路線が各地にたくさんあったかもしれないが、今の時代にここまで凄い逸材がまだ残っていた実情もまた、込み上げるものが大きいところだ。
アップダウンを繰り返し、山を越えるとやや高所に抜け、目的地の伊東の街が見えてくる。その後はずっと勾配を下っていき、出発から57分ほどで伊東駅の前に乗り付けてI41系統のバス旅は完了。運賃は正規で1,360円になる。






