爆売れC-HR、大ヒットの理由と賢い買い方

爆売れC-HR、大ヒットの理由と賢い買い方

 トヨタC-HRが売れまくっている。

 2016年12月にデビューしたこのコンパクトSUV、発売直後から順調に評判を高め、2017年4月にはついに車名別月間販売台数(普通登録車部門)で2位のプリウス(9920台)に大差をつけての1位(1万3168台)を獲得

 ※2017年4月の販売ランキング結果&分析はこちらを参照。

 現在C-HRの納期は約半年まで延びており、首都圏の一部では年内納車が難しくなってきたお店もあるとのこと。

 いったいなぜここまで売れているのか? 自動車評論家の渡辺陽一郎氏に、ヒットの理由と賢い買い方を聞きました。

 ※なお車名の「C-HR」は「Compact High Rider」と「Cross Hatch Run-about」を合わせた造語です

文:渡辺陽一郎 写真:池之平昌信


■C-HRヒットの理由は「トヨタの中で一番買いやすい」?

 C-HRはトヨタのコンパクトSUV。2017年4月には1万3000台以上を登録して、プリウスやN-BOXを抑え、国内の最多販売車種になった。2016年12月の発売以来、好調な売れ行きを保つ。

 好調に売れる背景には複数の理由があり、まずはSUVというジャンル自体の高人気がある。SUVはフェンダーがワイドに張り出して、ボディの下側は存在感が強い。

 なおかつ上側は5ドアハッチバックやワゴンに準じた形状だから、居住性や積載性も優れている。

 個性的なクルマを求めるユーザーの趣味性と、ファミリーカーとして使える実用性を両立させてSUVは人気を得た。C-HRが好調に売れる背景にもSUVの魅力がある。

 2つ目の理由は、SUVの中でも特に思い切りの良い外観デザインだ。ボディ全体を彫刻のようなメリハリのある造形に仕上げた。同じトヨタのシエンタも、コンパクトミニバンの実用性と、個性的な外観が独特の魅力だ。

 3つ目の理由は、トヨタで唯一の購入がしやすいコンパクトSUVであることだ。ランドクルーザーやFJクルーザーは、悪路向けのLサイズSUVだから、取りまわし性や乗降性に不満があって日本では売りにくい。価格も高い。

 ハリアーは都市型SUVで堅調に売れるが、主力グレードのプレミアムは、2WDの2Lエンジン搭載車でも価格が300万円を超える。

 その点、C-HRは全長が4360mm、全幅は1795mmに収まり、後方視界が悪いものの、市街地でも運転がしにくいとは感じない。価格は251万6400円から用意される。

 かつて人気を高めながらも販売を終えたRAV4、ヴァンガードといったSUVのユーザーが、サイズと価格の手頃なC-HRに乗り替えた。

■プリウスの顧客も奪っている

 販売店のセールスマンによると、先代プリウスからの代替えも多いという。現行プリウスも低燃費で割安だが、外観の評判はあまり良くない。

 ボディも拡大した。そこで現行プリウスに不満を感じるユーザーが、コンパクトで外観もスポーティなC-HRハイブリッドに乗り換えている。

 そのために2017年4月には、C-HRが好調に売れた代わりに、プリウスの登録台数は対前年比が50%以下に落ち込んだ。軽自動車も含めた総合的な販売ランキングは5位になり、C-HRに顧客を奪われている。

 4つ目はハイブリッドと1.2Lのターボというエンジンの品ぞろえだ。特にハイブリッドはJC08モード燃費が30.2km/Lに達して、ホンダのヴェゼルハイブリッドに勝る数値となる。新しいプラットフォームによるバランスの良い走行安定性と乗り心地も魅力だ。

 5つ目はトヨタの充実した販売網。トヨタ4系列の全店(4900店舗)が扱うから、1店舗が1か月に2台売れば、それだけで約1万台に達する。さまざまな好条件が重なって、C-HRは人気車種になった。

SUVというジャンル自体に人気が高まっていること、車単体での性能が高いこと(ライバルより優れていること)、トップメーカーであるトヨタの中でも特に買いやすい車両であること、<br>などがヒットの要因といえそう
SUVというジャンル自体に人気が高まっていること、車単体での性能が高いこと(ライバルより優れていること)、トップメーカーであるトヨタの中でも特に買いやすい車両であること、
などがヒットの要因といえそう

■ライバルはホンダ・ヴェゼルとマツダ・CX-3

 C-HRはSUVに分類されるが、グレード構成は個性的だ。ハイブリッドは前輪駆動の2WDのみ、1.2Lターボは4WDのみに分かれる。

 ターボに2WDがあれば、価格が最も安いグレードを225万円前後に設定できるが、4WDだから250万円を超えた。

 また最低地上高(路面とボディの最も低い部分との間隔)はハイブリッドの2WDが140mm、ターボの4WDでも155mmにとどまり、悪路の走破力は重視されていない。従ってSUVではライバル車を見つけにくい。

 それでも全長が4400mm以下に収まるので、ホンダ・ヴェゼルとマツダ・CX-3が最も分かりやすいライバル車だ。

 ライバル車の中で、実用性が最も優れているのはヴェゼルになる。燃料タンクを前席の下に搭載したから、荷室の床が低く、路上からリヤゲートの開口下端部までの高さも650mmに収まる。荷物を高い位置まで持ち上げる必要がない。

 また後席は床面へ落とし込むように畳めるので、広くフラットな荷室に変更できる。後席の足元空間にはLサイズセダン並みの余裕を持たせた。

 その半面、ヴェゼルはC-HRに比べて乗り心地が硬い。操舵に対する反応は軽快だが、重厚感が乏しい。コンパクトカーのフィットを上級化したように感じる。

 ハイブリッドの動力性能はヴェゼルが力強く、燃費はC-HRが勝る。ノーマルエンジンは、動力性能はC-HRの1.2Lターボが優れ、燃費はヴェゼルだ。価格は全般的にヴェゼルが安い。

 CX-3は全車がクリーンディーゼルターボを搭載して、実用回転域の駆動力がC-HRよりも高い。ガソリンエンジンに当てはめると2.7Lクラスだ。

 燃料代はC-HRハイブリッドが安いが、CX-3も2WDのJC08モード燃費は23km/Lと優れる。軽油価格はレギュラーガソリンに比べて1L当たり20円ほど安く、燃料代にあまり差は付かない。

 CX-3の価格は高めの印象もあるが、C-HRハイブリッドよりは少し割安だ。内装も上質で、機能と価格のバランスはCX-3が勝る。

 ただし後席の居住性はC-HRが快適だ。CX-3は足元空間が窮屈でファミリーカーには適さない。その点、C-HRは大人4名が不満なく乗車できる。

 つまりライバル車も含めて商品の指向性を考えると、ヴェゼルはファミリー指向、CX-3は5ドアクーペ的なパーソナル指向だ。そしてC-HRは、両車の魅力を適度なバランスで兼ね備えたことにより、高い人気を得た。

マツダCX-3はデミオベースのクロスオーバー型SUV。日本仕様は1.5Lのクリーンディーゼルのみの設定だが、今秋のマイナーチェンジでガソリン仕様が追加される、と各ディーラーには通知がいっているそう
マツダCX-3はデミオベースのクロスオーバー型SUV。日本仕様は1.5Lのクリーンディーゼルのみの設定だが、今秋のマイナーチェンジでガソリン仕様が追加される、と各ディーラーには通知がいっているそう
ホンダヴェゼルはフィットベースのSUV。2013年12月の発売と意外に老舗。コツコツと販売を伸ばしていて、日本のコンパクトSUV流行の立役者でもあり、現在は最量販車となっている。ハイブリッド仕様も用意されていて、C-HRとはガチンコのライバル。なお米国、ブラジル、韓国ではこのヴェゼルが「HR-V」の車名で販売されており、ちょっとややこしい
ホンダヴェゼルはフィットベースのSUV。2013年12月の発売と意外に老舗。コツコツと販売を伸ばしていて、日本のコンパクトSUV流行の立役者でもあり、現在は最量販車となっている。ハイブリッド仕様も用意されていて、C-HRとはガチンコのライバル。なお米国、ブラジル、韓国ではこのヴェゼルが「HR-V」の車名で販売されており、ちょっとややこしい

■お買い得のグレードはハイブリッドの「G」

 C-HRの推奨グレードは、ハイブリッド(2WD)のG(290万5200円)になる。1.2Lターボ(4WD)のG-Tに比べて12万9600円高く、4WDの価格(ハリアーと同じシステムだから19万4400円に換算)も加味すると差額は32万4000円に拡大するが、それでも安い。

 トヨタのハイブリッドは40〜50万円に達するからだ。

 しかもエコカー減税はハイブリッドが免税、1.2Lターボは減税の対象外だから自動車取得税と同重量税が9万1800円になる。この違いも含めると、約32万円の差額が23万円まで縮まる。

 そしてGのJC08モード燃費は30.2km/l、G-Tは15.4km/lだから約2倍の開きがある。レギュラーガソリン価格を1L当たり135円、実用燃費をJC08モードの85%とすれば、1km当たりの走行コストはハイブリッドが5.3円、1.2Lターボは10.3円だ。

 1kmにつき5円の差が生じる。そうなると23万円の実質差額は4〜5年で取り戻されるので、ハイブリッドがトクになる。

 グレードは価格の安いハイブリッドSも選べるが、ターボのS-Tを含めて、ヘッドランプがハロゲンだけになってしまう。バイビームLEDはGとG-Tのみに、15万1200円でオプション設定した。C-HRにハロゲンでは明らかに物足りないのでGを選ぶ。

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