自転車の交通違反に反則金を課す「青切符制度」が2026年4月1日に始まった。スタートから数日も経たない4月4日、広島県呉市でさっそく悪用された。「手信号をしていない」「違反だから2000円払え」——見知らぬ男にそう迫られた高校生が、その場で現金2000円を渡してしまったのだ。4月9日に広島県警が発表したこの被害は、制度への「なんとなくの不安」が詐欺師に狙われることを如実に示している。本物の青切符は、路上で現金を取り上げる仕組みではない。制度の正確な知識が、自分とわが子を守る盾になる。
文:ベストカーWeb編集部、画像:AdobeStock
制度開始4日目、高校生が2000円騙し取られた
広島県警が発表した被害の概要はこうだ。2026年4月4日朝、呉市内の路上を自転車で走行中の高校生が、見知らぬ男から声をかけられた。男は「手信号をしないといけん」「違反だから2000円を支払う必要がある」と告げ、その場で現金2000円を受け取って立ち去った。男の特徴は50代くらい、暗めの青の作業服姿。
広島県警はこの事案を詐欺と断定し、注意を呼びかけた。注意のポイントはシンプルかつ明快だ——「青切符制度があっても、反則金をその場で直接受け取ることはない」。
制度が大々的にニュースで取り上げられた直後、「なにか変わった」という空気が広まっていた。高校生が騙されたのは知識の問題ではなく、「ありえなくはないかも」という心理的隙間を突かれたからだ。悪意ある人間が制度の”曖昧さ”を最初に利用したのは、施行からわずか4日後のことだった。
また、4月13日(月)夜、北海道室蘭市では、警察官を装った男が自転車に乗る中学生に「それ違反だから反則金5000円払って」と声をかけた詐欺事例が報告されている(不審に思った中学生が「警察手帳を見せて」と言ったら男は逃げていった)。
そもそも「自転車の青切符」とは何か?
まず制度の全体像を整理しよう。これまで自転車の交通違反は、悪質なケースを除き「指導・警告」で終わることがほとんどだった。今回の改正道路交通法施行(2026年4月1日)により、16歳以上の自転車利用者が一定の交通違反をした場合、自動車と同様に「反則金制度(交通反則通告制度)」の対象となった。
具体的な流れはこうだ。
- 警察官が違反を確認し、違反者に「青切符(交通反則告知書)」と「納付書」を交付する
- 違反者が反則行為を認める場合、告知を受けた翌日から原則7日以内に、銀行または郵便局の窓口で反則金を納付する
- 仮納付しなかった場合は、交通反則通告センターへの出頭または書留郵送で対応
- 反則金を納付すれば刑事事件として処理されない(不納付の場合は刑事手続きへ移行)
路上で現金を受け取るステップは、どこにも存在しない。納付書を持って金融機関へ行くのは違反者本人であり、その相手は銀行・郵便局の窓口だ。制服を着た警察官であっても、路上で反則金を徴収することは制度上ありえない。
反則金の金額一覧——いくらかかるのか
警察庁が公表している主な違反と反則金額は以下のとおり。
| 違反の種類 | 反則金額 |
|---|---|
| 携帯電話使用(保持) | 1万2000円 |
| 信号無視 | 6000円 |
| 通行区分違反(逆走等) | 6000円 |
| 指定場所一時不停止 | 5000円 |
| 公安委員会遵守事項違反(傘さし運転等) | 5000円 |
| 並進・二人乗り | 3000円 |
今回の詐欺で使われた「手信号違反」について補足しておく。道路交通法上、車両には発進・転回・停止などの際に合図を行う義務があり、自転車も例外ではない。しかし「手信号違反で2000円をその場で払う」というルールは存在しない。反則金の支払いはすべて納付書経由であり、金額も上記の通り定められている。「2000円」という数字自体、制度上どの違反にも対応していない。


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