信号のない横断歩道で歩行者が「どうぞ」と手で合図をしてくれた。そこで発進した瞬間、白バイに停止義務違反で切符を切られた――。一見すると納得しがたい出来事だが、道路交通法では「歩行者が譲った」ことと「ドライバーの停止義務」は必ずしも同じではない。なぜ違反となるのか。道路交通法第38条の考え方と、ドライバーが取るべき最善の対応を改めて整理してみたい。
文:ベストカーWeb編集部/写真:Adobe Stock、トビラ写真:naka@Adobe Stock
信号のない横断歩道で歩行者にどうぞと譲られたのに切符を切られた
「歩行者が何度も『どうぞ』と手で合図をしたので発進したら、すぐ先にいた白バイに停止義務違反で検挙された」。
こうした事例がSNSやニュースなどで話題となり、「歩行者が譲ったのに違反なのか?」と疑問の声が上がっている。
実際、現場では白バイ隊員も歩行者がドライバーに道を譲るしぐさを見ていたという。しかし、それでも違反として扱われた。
理由は道路交通法第38条にある。
道路交通法第38条では、信号のない横断歩道に横断しようとする歩行者がいる場合、ドライバーは横断歩道の直前で一時停止し、その通行を妨げてはならないと定められている。
ここで重要なのは、「歩行者が譲ったように見えた」という事実だけでは停止義務が消えるわけではないという点である。
歩行者の合図は法的な優先権の放棄を意味するものではない。また、その場の状況によっては歩行者が再び横断を始める可能性もある。
そのため警察は、歩行者が横断しようとしていた事実が認められる以上、停止義務違反に当たると判断するケースがあるのである。
ドライバーからすれば理不尽に感じるかもしれない。しかし道路交通法は「歩行者保護」を最優先に考えており、ドライバー側により重い注意義務を課しているのである。
改めて横断歩道のルールや罰則をみる
道路交通法第38条では、横断歩道に近づく際には、歩行者がいないことが明らかな場合を除き、いつでも停止できる速度で進行しなければならない。
さらに、横断しようとする歩行者がいる場合は、横断歩道の直前で一時停止し、その通行を妨げてはならないと規定されている。
この違反は「横断歩行者等妨害等違反」となり、普通車では違反点数2点、反則金9000円が科される。
警察庁によれば、令和7年中だけでも横断歩行者等妨害等違反の取締り件数は約30万件に達している。これは全国的に重点的な取締り対象となっていることを示している。
また、歩行者が「どうぞ」と合図したからといって、それだけで安全が確保されたとはいえない。
横断歩道の反対側から別の歩行者が現れることもある。子どもが走り出すケースもある。高齢者が途中で引き返すことも考えられる。
だからこそ法律は、歩行者との「アイコンタクト」や「ジェスチャー」ではなく、ドライバー側に確実な安全確認を求めているのである。
ではドライバーはどうするべき? 最適解は?
では、歩行者から「どうぞ」と譲られた場合、ドライバーはどうすればいいのだろうか。
最も安全で、かつ違反を避けやすい方法は、一時停止をしたうえで歩行者の意思を再確認することである。
まず横断歩道の手前で完全に停止する。その後も歩行者が繰り返し「どうぞ」と合図し、横断する意思がないことを十分確認しても、歩行者に横断歩道を渡らせた後、ゆっくり発進するのが望ましい。
最近では「歩行者優先」が社会全体で強く求められており、警察も横断歩道での取締りを強化している。「歩行者が譲ってくれたから大丈夫」という考えではなく、「まず止まる」が信号のない横断歩道の基本である。
譲り合いの精神は日本人の美徳として昔からあるが、やはり歩行者に「どうぞ」と譲られても、応じずにドライバーも手で「どうぞ」とジェスチャーをして歩行者に渡ってもらうように促したほうがいいだろう。
実際、2022年6月、東京都内で横断歩道にいる歩行者から「お先にどうぞ」と譲られたドライバーが、そのまま進行したところ、警察に道交法違反(横断歩行者妨害)で反則切符を切られる事案が発生した。
切符を切られたドライバーはその後弁護士を代理人としてドラレコ映像を署長宛てに送付し抗議した結果、およそ1カ月後に違反不成立となった。
ドラレコ映像には歩行者が明確に先に行ってくれと意志表示した映像が映っており、裁判になったとしても妨害とは認められないと思われる。
このように切符を切られる事案が発生する可能性が高いことから、歩行者にどうぞと譲られても、渡ってもらったほうが無難だ。
少し待つことで事故も違反も防げる。横断歩道では、法律だけでなく、歩行者の安全を最優先にする運転を心掛けたい。
【画像ギャラリー】横断歩道を渡ろうとしている人にどうぞと言われたら?(3枚)画像ギャラリー






コメント
コメントの使い方