ランドクルーザーFJが積む2.7Lガソリンエンジンの最高出力は163ps、燃費は8.7km/L。数字だけを見れば、最新の高性能エンジンとは言いにくい。しかし、その設計にはランドクルーザーに欠かせない「壊れにくさ」が貫かれている。これも立派な高性能ではないだろうか。
文/写真:ベストカーWeb編集部
【画像ギャラリー】プラドにも積んでいた名機!! ランクルFJの心臓部は耐久性ハンパないんです(5枚)画像ギャラリー20年以上も世界の働くクルマを支えてきた
ランドクルーザーFJに搭載される2TR-FE型エンジンは、排気量2693ccの直列4気筒自然吸気ガソリンエンジンだ。FJでは最高出力163ps/5200rpm、最大トルク246Nm/3900rpmを発生し、電子制御6速ATと組み合わされる。
スペックだけなら、正直いって驚くようなものではない。2.7Lという排気量がありながら最高出力はたった163ps。車両重量1960kgのボディを引っ張るのだから、俊足とも言いにくい。WLTCモード燃費も8.7km/Lにとどまる。
しかし2TR-FEは、パワーや燃費の競争に勝つために生まれたエンジンではない。
登場は2004年。ランドクルーザープラドをはじめ、ハイラックスやフォーチュナー、ハイエースなどに搭載され、世界各地で使われてきた。悪路を走る本格四駆から、人や荷物を載せて毎日働く商用車まで、過酷な環境で鍛えられてきた実績があるのだ。
基本構造は、95.0mmのボアと95.0mmのストロークを持つスクエア型。DOHC16バルブと可変バルブタイミング機構を備えるものの、ターボなどの過給器は使わない。登場から20年以上が過ぎたいまも現役であること自体、このエンジンへの信頼の厚さを物語っている。
もちろん、古いエンジンをそのまま載せただけではない。FJでは発進時や低速走行時の滑らかさを高めるとともに、下り坂で車速をコントロールしやすいよう制御を改良。最新の排出ガス規制にも対応させている。新奇なメカニズムではなく、長年使い込んだ基本設計を磨き直したのである。
鋳鉄ブロックとタイミングチェーンは重いが強い!
2TR-FEの頑丈さを象徴するのが、鋳鉄製シリンダーブロックだ。
現在の乗用車用エンジンでは、軽量化に有利なアルミ製ブロックが主流となっている。対する鋳鉄は重いものの、強度や耐摩耗性に優れ、熱による変形にも強い。軽さや燃費より耐久性を重視する、世界戦略エンジンらしい選択である。
カムシャフトの駆動には、ゴム製のタイミングベルトではなく金属製のタイミングチェーンを採用する。チェーンも完全なメンテナンスフリーではなく、オイル管理を怠れば摩耗や伸びが発生する。それでも定期交換を前提とするベルトに比べ、長期間使い続けることを意識した構造といえる。
さらに注目したいのが、2.7Lから163psという控えめな出力だ。1Lあたりの出力は約60psで、現代のターボエンジンと比べればかなり穏やかである。
トヨタが「低出力だから壊れにくい」と公式に説明しているわけではない。しかし、過給器を使わず、極端な高回転や高い筒内圧に頼らない設計は、熱や圧力によって各部品へかかる負担を抑えやすい。最高出力を絞り出すのではなく、十分な余裕を残して長く働かせる思想が見えてくる。
弱点は明確だ。鋳鉄ブロックは重く、動力性能や燃費にも華がない。高速道路での追い越しや急な上り坂では、最新のターボエンジンほどの余裕は期待できないだろう。
それでも、世界のどこで使われても壊れにくく、万一の際にも特殊な設備を必要とせず整備できることは、ランドクルーザーにとって重要な性能だ。目的地へ速く着くこと以上に、どこからでも無事に帰ってこられることが求められるからである。
パワー、燃費、軽さだけがエンジンの性能ではない。20年以上にわたって働くクルマを支え、これからも淡々と回り続ける。2TR-FEが誇る「壊れにくさ」は、数値には表れないひとつの高性能なのだ。
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