長年、セダンが「車の最も一般的な形」だった。子どもに「車の絵を描いてみて」といえば大概セダンを描く。
実際に日本ではカローラが販売トップの座に君臨し続けてきた。ところが最新の販売台数(2017年6月)を見ると、1位はC-HRで、セダンはトップ20に1台も入っていない。
なぜ、「脱セダン、SUV全盛」なのか。自身もSUV開発を手がける水野氏の視点で見るその理由とは?
文:ベストカー編集部/写真:編集部、TOYOTA
ベストカー2017年8月10日号
SUVとはユーザーの欲求不満の表われ
日産を退社後、台湾の自動車メーカーで「LUXGEN」ブランドの自動車開発に取り組んでいる水野和敏氏。水野氏が現在最も注目しているのがSUVだという。現在開発中のニューモデルもSUVだと明かしてくれた。
そんな水野氏だからこそ、SUVに対しては一貫した独自の考え方を持っているのだ。
「SUVというのは車型ではないんです。こういう形だからSUVだ、という決まったカタチがあるわけではない」
と水野氏は言う。
これはどういうことか!?
「SUVというのはお客さんの欲求不満のはけ口なのです」
ますますわからなくなってきた……。
脱ヒエラルキーの表現がSUVというジャンル
「カローラだったら、自分は団地族でやっと手に入れたマイカー。これがマークIIやスカイラインになると年齢も重ねて少し出世してマイホームを手に入れて、車もひと回り高級になりました……」
「でも、家のローンが大変ですと。クラウンだと部長クラスです。セルシオ……今ではレクサスLSですが、そのあたりになるともうオーナー社長で豪邸に住んでいて……という、その人の社会的なポジションが見えてしまう。つまりヒエラルキーなのです」
「SUVにはそれがない。むしろそこから脱却したいという気持ちの表われがSUVに対する欲求なのです」
つまりこういうこと。セダンやスポーツカーのような、長い歴史のあるカテゴリーでは自然と車格によるヒエラルキーができ上がっていて、メーカー側もそのヒエラルキーに沿ったクルマ作りをするし、買う側のお客さんもヒエラルキーに沿った車選びをする。
それを見る人も車からヒエラルキーを感じ取り、乗っている人の社会的なポジションを推し量ることになる、と水野氏は言うのである。
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