2017年6月19日付けの日経新聞にて、一面に「クライスラーが日本撤退」という報道がなされた。
クライスラーの日本法人であるFCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)は即日中に「クライスラー社の取り扱いについては決定した事実はございません」と報道を否定したものの、日本におけるクライスラー車の販売は低迷を続けていることは確か。
思い起こせばフォードの日本撤退は2016年1月であった。どうしてアメリカ車の販売は日本で伸び悩むのか?
近年、最もアメリカ車が売れていたのは1996年で、その年シボレーは2万3732台、クライスラーは1万7404台を販売している。これは同年のアウディ1万16台を凌ぐ数字だ。しかし現在の状況は厳しいかぎり。
日本人の気質にアメリカ車が合わないのか、それとももはやアメリカ車自体に魅力がないのか。このままアメリカ車の販売不振が続くと、クライスラーも撤退ということが現実になってしまう。
ここからは米国車の人気低迷を渡辺陽一郎氏に分析してもらおう。
文:渡辺陽一郎
ベストカー2017年8月10日号
■クライスラー300Sの販売台数は月平均24台……
クライスラーが’18年に日本市場から撤退する報道が流れた。FCAジャパンは否定したが、本体がジープに経営資源を集中する方針は公表済みだ。
そこで正規輸入されるクライスラー車を見ると、セダンの300Sにかぎられる。そのために2016年のクライスラーの登録台数は283台(月販平均24台)で、ジープブランドの9392台に比べると3%だ。撤退しても不思議はない。
2016年にはフォードが撤退しており、クライスラーはダッジブランドを2007年に日本へ導入したが長続きしなかった。日本ではアメリカ車が根づきにくい。
2016年に輸入された海外メーカー製乗用車の登録台数を見ると、メルセデスベンツ/BMW/MINI/VW/アウディ/のドイツ5ブランドが全体の74%を占める。
ただしアメリカ車がすべて低調ともいえない。2016年の登録台数は、キャデラックが635台、シボレーは593台だが、ジープは前述の9392台になるからだ。プジョーやフィアットよりも多い。
アメリカのSUVは以前から人気があり、1990年代中盤にはジープチェロキー、撤退したフォードのエクスプローラーが好調に売れた。1996年にはフォード車が2万3273台登録され、この実績は今のBMW MINIと同等だ。
さらに1970年まで戻るとVWは5765台、メルセデスベンツは1457台しか登録されていないが、フォードは2028台、シボレーは894台、クライスラーも892台であった。
つまり昔は輸入車に占めるアメリカ車の割合が今よりも大幅に多く、1990年代にはセダンが廃れても、SUVが人気を保って今のジープに繋がっている。
コメント
コメントの使い方