自動運転にまつわる最新情報を届けする本企画、第4回となる今回は、先日(2021年3月5日)世界で初めて発売された「レベル3」にあたる自動運転技術を搭載したホンダレジェンドについて、それがどんな技術なのか、なにができてなにができないのか。そして「自動運転」の話題になると必ず出てくる「手放し運転」の目的と可能性について、じっくり解説していただきます。
文/西村直人 写真/ホンダ、ダイムラー
自動運転技術での「日本」の現在地 【自律自動運転の未来 第1回】
「自動運転」とは何か? 【自律自動運転の未来 第2回】
現在の自動化レベル3技術とは? 【自律自動運転の未来 第3回】
■「レベル3」は「レベル2」の延長線上…ではない!!
これから4月初旬にかけて、「自動化レベル3技術」を含む、Honda SENSING Eliteを搭載した「レジェンド」の試乗レポートが各媒体を通じて発信されます。世界ではじめて市販車に実装されたレベル3技術がもたらす走行状態は、誰もが気になるところでしょう。筆者もその一人です。
しかしながら、運転支援技術であるレベル2の延長線上に自動運転技術であるレベル3はありません。
確かに、政府によれば自動化レベルはレベル0~レベル5の6段階で示されています。よってレベル1→2→3……と、数が増えれば単に上位技術であると考えてしまいがちです。
ただし実際には、レベル2までは「運転支援車」であり、レベル3以上を「自動運転車」と明確な線引きがなされています。要素技術は同じでも、求められる精度はレベル3以上で大きく高まります。これはどういうことなのでしょうか? 本稿ではこの先、散見される自動運転関連の固有名詞の解説と共に進めていきます。
■ドライバーに車両の状況をすぐ伝えられるか
本連載の第二回 https://bestcarweb.jp/news/257738 で紹介したように、レベル3以上では車載センサーの精度やシステムの冗長性(≒複数経路による確実な実行が期待できる能力)を大幅に高める必要があります。ここがレベル2までの運転支援車との大きな違いです。また、単に精度の高い確実なシステムを構築するだけではなく、たくさんの車両が交錯する実際の交通環境で正確に機能(≒車両制御)することが絶対条件として加えられています。
このことはWP29(自動車基準調和世界フォーラム)で定めた国際基準や、国土交通省による自動運転車の安全技術ガイドラインのなかで次のように表現されています(以下、「」は原文)。
A/「少なくとも注意深く有能な運転者と同等以上のレベルの事故回避性能が必要」
B/「合理的に予見される防止可能な事故が生じないこと」
これをわかりやすく筆者の言葉で解釈すれば、
A/「漫然とした“だろう運転”ではなく、危険に素早く対処できる“かもしれない運転”という予測運転ができて、正確な運転操作で危険を回避できるドライバーと同じか、それ以上の能力があること」
B/「一例として、このまま走行していると前走車に衝突してしまうことが明らかな場合は、ゆとりある確実な自動減速制御で危険を回避し事故を起こさないこと」
A・B以外にも、システムの状況をドライバーに確実に伝えるHMI(Human Machine Interface/人と機会の接点)設計がなされているか、システムの作動状態を記録する装置があるかなど、ざっくり100項目以上の要件を満たして初めてレベル3技術の称号が得られます。
Honda SENSING Eliteは、こうした条件をクリアした世界で初めての市販車であり、ここが歴史に名を残す注目すべき事象です。
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