巨大なグリルを搭載した車両デザインが人気だ。新型ノア/ヴォクの販売は絶好調だし、アルファードも公なクルマに採用されるなどどんどん日本市場にも浸透していっている。
この動向はいつまで続くのか、そしてどうして続いているのか。筆者に解説してもらった!
文/清水草一
写真/BMW、トヨタ、ベストカーWeb編集部
■巨大化したグリルのオラオラ顔モデルは依然売れゆき好調
フロントグリルの巨大化の流れが止まらない。直近では新型ヴォクシーの「超獣顔」が話題になったが、その売れゆきは絶好調。姉妹車のノアと合わせて、予約開始から約2カ月で7万台の受注を集めた。
一方、ノア/ヴォクの対極的なシンプルグリルを持つステップワゴンの受注台数は、現状発売から1カ月で約2万7000台。当初から「オラオラグリルには勝てないが、あえて違いを出す」という狙いだったが、やはりオラオラ完勝の雲ゆきだ。
オラオラグリルの帝王たるアルファードにいたっては、最高級ミニバンでありながら、一時は販売ベスト5に食い込む勢いだったし、宮内庁の御料車を務めるなど、フォーマルカーとしても認められつつある。
現行アルファードが登場した時は、あの巨大グリルに対してカーマニアの間で大ブーイングが巻き起こったが、ヴォクシーに関してはそういう動きは見られなかった。
デカすぎるグリルに拒絶反応を示してきた古典的カーマニアも、もはや巨大グリルに目が慣れ、当たり前のものとして受け入れつつある。
■受け入れられる巨大化と受け入れられない巨大化
が、古典的カーマニアがいまだ抵抗を見せているのが、同じように巨大化が止まらないBMWのキドニーグリルである。トヨタのミニバンや軽ハイトワゴンの巨大グリルには目が慣れても、多くのカーマニアが憧れる「あの」BMWが、アルファード的な方向に進んでいるのが許せないのだ。
なかでもキドニーグリルを上下方向に拡大した現行4シリーズは、M4というカーマニア夢のスポーツクーペを含めて顔が激変したため、「あれだけは許せない!」「BMWは終わった……」と言う声を多数聞く。
アルファードやヴォクシーはもちろんのこと、BMWのSUV(Xシリーズ)の顔がどうなろうと、自分が買うわけではないので他人事だが、永遠のアイドルだったM4があんなゲテモノ顔になってしまうなんて! ということなのである。
レクサスも、グリルの巨大化を進めている。先代LXと新型LXを比較すると、スピンドルグリルは明らかに新型のほうがひと回り大きくなっている。もはや「大きくせざるを得ない」のだと私は見ている。大きくすれば、それだけで多くの人は「デカい!」と驚き、インパクトを与えることができるからだ。
昔の基準では、「バランス狂いまくりじゃん!」なグリルの巨大化だが、すでに多くの巨大グリルを目にしているため、もはやバランスが狂っていなければ、インパクトはない。これはもう、狙った狂気なのである。飲食店が、絶対完食できなさそうな超超デカ盛りをウリにするのに似ている。
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