イタリアのイタルジェットが強烈なインパクトの「ドラッグスター200/125」を日本国内で発売した。フロントのISSというステアリング機構が、独特なスタイルと走りを生み出しており、発売からバックオーダーを抱えるほどの人気で話題を呼んでいる。
とにかく華やかなスタイルは質実剛健な日本製スクーターとは対照的。イタリア生まれの異色のコンセプトを解説したい。
文/市本行平、写真/MV AGUSTA JAPAN
【画像ギャラリー】懐かしの旧ドラッグスターと新型のディテール解説(8枚)画像ギャラリー圧倒的なプレミアム感で、スクーターのフェラーリに名乗り!
2019年のイタリア・ミラノショーで初公開されたイタルジェットのドラッグスター200/125の国内出荷が昨年末からスタートしている。むき出しのトラスフレームにハブステアのフロント機構は目立ち度満点で、正式発表とともに予約が殺到し、現在でも販売店によってはバックオーダー状態の人気車だ。
日本への輸入は、バイク界のフェラーリと呼ばれる「MVアグスタ」を日本で取り扱うMVアグスタジャパン。MVアグスタとイタルジェットはともにイタリアのメーカーで、MVアグスタの傘下にイタルジェットが位置しているような印象だが、本国では別会社となる。日本の販売事情がこの2メーカーを接近させたのだ。
それでもドラッグスターとMVアグスタの製品イメージは近く、ともにスチールトラスフレームを採用しているのが特徴。ドゥカティの主要モデルがアルミフレームに移行している現在では、MVアグスタならではのアピールポイントとなっており、さらにスクーターにトラスフレームを採用する例はイタルジェット以外に見られない。
そんなMVアグスタの立ち位置に近いこともあって、ドラッグスターはさながらスクーター界のフェラーリ。徹底的に磨き上げられたトラスフレームの機能美は本家のMVアグスタと同等以上で、さらに一般的にハブステアと呼ばれるフロント機構は非常にレアな装備となる。他に並ぶ者がいない唯一無二のプレミアムスクーターなのだ。
独自のメカ=インディペンデントステアリングシステムって何?
ドラッグスターで最も注目されるメカニズムがフロントのインディペンデントステアリングシステム(ISS)だ。なぜインディペンデント=独立かと言うと、バイクのフロントまわりが果たすステアリングと衝撃吸収の2つの要素を分離して独立させたことに由来している。
一般的なバイクでは、フロントブレーキを作動させるとサスペンションが減速Gの影響で沈み込み、衝撃吸収の役割を果たすためのストロークが減少してしまう。ISSでは、ブレーキング中でもフロントサスペンションはニュートラルな状態が保たれるようになっており、路面の凸凹を吸収することができるのだ。
また、ISSはフロントブレーキをかけてもフロントまわりが減速Gで沈み込むことがないので、前のめりにならずに安定したブレーキングが可能。つまり、キャスター角やトレール量といったハンドリングに大きく影響する設定が変化しにくいため、常に一定のコーナリング性能を発揮できるのもメリットとなる。
ISSは、厳密にはハブステアとは異なるメカニズムとなるが、ともに目的は一致しており、一般的なバイクが採用しているテレスコピック式フロントフォークの欠点を解消するために開発されたもの。ドラッグスターでは、1995年に発売された先代モデルから受け継がれており、他にもBMWが1993年から採用するテレレバーも同種のメカと言えるだろう。
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