「なでしこトラッカー」として知られるPUNKさんは、単身アメリカに渡り、トラックドライバーとして全米を駆け巡っています、
PUNKさんはカリフォルニア州に住み、自分でトラックを購入し、自分の裁量で仕事を請けて荷物を運ぶオーナーオペレーター(O/O)なんですが、まさにそのPUNKさんがいま窮地に陥ろうとしています。それはなぜか?
文/フルロード編集部 写真/なでしこトラッカーPUNKさん
【画像ギャラリー】独特とも言えるトラック文化を確立してきたアメリカの根幹が揺らぐAB5法(5枚)画像ギャラリーオーナーオペレーターを規制するAB5法の成立
米国のカリフォルニア州では、2019年に州議会法律第5号(California Assembly Bill 5、通称AB5法)が成立している。同法は雇用の分類に関するもので、同じ仕事に従事している労働者をIC(独立請負業者)に分類することを制限している。
同じトラックドライバーでも、米国では運送会社の従業員としてトラックに乗務するカンパニードライバーと、独立して自ら仕事をするオーナーオペレーター(O/O)という2つの形態がある。
AB5法はICと認めるための3項目の条件(ABCテスト)を示しているが、多くのO/Oの業務は「行なっている作業は雇用側の通常業務外の仕事である」を満たさないため、テストをクリアできない(特にトラック/トレーラがリース契約となっている場合)。
従ってカリフォルニア州のO/Oは、ICではなく「従業員」に再分類され、働き方が大きく変わる可能性がある。
影響を受けるドライバーは約7万人
直接影響を受けるドライバーは7万人に及ぶため、カリフォルニアトラック協会がドライバーへのAB5法適用除外を求めて訴訟を起こし、裁判中はその適用が猶予されていた。しかし6月30日、最高裁が訴えを棄却したため、同州でO/Oの存続が危うくなっている。
こうした状況は今後、他州へも波及する可能性がある。O/Oが法律を遵守してドライバーを続けるためには、州外へ引っ越す、カンパニードライバーへ転身する、名目上の雇用主となる企業に登録した上で、トラックの購入を含めた業務はこれまで通りドライバー自身が行なう、などの方法が考えられる。
ただ、トラックドライバーの独立性が制限されれば、米国のドライバー特有の起業精神にも影響を与えるかもしれない。独特のトラッカー文化を育んできたアメリカのトラック業界が今、岐路に立たされている。