新型クラウンが好調な販売を続けるなか、ふと思うことがある。日本の高級セダンってクラウン以外売れてるクルマないんじゃね? と。
日本においての高級セダンの選択肢はクラウンかドイツ車。レクサスもあるが、1000万円を超えるLSはやはり少数。ポピュラーな高級セダンはクラウンかドイツ車、それが現実なのである。
ほかの国産メーカーはどうなっているか。別のカテゴリーではトヨタと渡り合えるクルマは数々あれども、こと高級セダンに限れば「てんでお話になんない」のが事実。それは昔からずっとそうなのだ。
ここでは「クラウン以外だいたい沈没」という物騒なタイトルで、クラウンに挑んでは駆逐されてきた国産高級セダンを振り返る。涙なくして読めない、そこそこ失礼な企画でごめんなさい。
※本稿は2018年9月のものです
文:清水草一、ベストカー編集部/写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2018年10月26日号
■死屍累々リスト クラウンに打ち砕かれた悲しいクルマたち集合
●1980年代後半以降の「人気が出なかった国産高級セダン」をリストアップ。
日本においてのクラウンの無敵ぶりと、クラウン以外のクルマたちのはかなくも美しい散りっぷりを思い出していきたい。なぜクラウン以外は沈没してしまうのか? その分析は別の記事に譲るが、とりあえずはこの哀しき戦士たちの勇姿をどうかご覧ください。
●日産の歴史的ザンネン車たちを思い出すと、目頭が熱くなる……
インフィニティQ45
1989年登場。V8、4.5Lの280psエンジンを搭載し、4輪マルチリンクの凝ったサスペンションを採用。大型高級セダンとしては異例のスポーティな走りを実現した。52万円の18金製ゴールドキーをオプションで用意するなど、バブル絶頂期にふさわしい贅沢な装備も話題に。
レパードJ・フェリー
1992年登場。初代から不遇の時代が続いていたレパードの3代目。北米デザインセンター案の尻下がりデザインは米国では受けたが日本では不発だった。エンジンはV8の4.1LとV6の3Lを用意し、エレガントな走りはよかったが、そのデザインから珍車扱いされたこともあった。
初代以外の歴代シーマ
爆発的ヒットを記録した初代シーマだが、その栄光は1代かぎりで終焉。以降それはそれは悲しい物語が続いている。写真は上から2代目(1991年)、3代目(1996年)、4代目(2001年)。2012年登場の5代目現行型も健在だが、あたりまえのように売れていない。思うに、初代ですべての運を使い果たしてしまったのかもしれない。それでもシーマの名を捨てない日産に乾杯したい気分だ。
歴代フーガ
セドリック/グロリアの後継車として2004年に初代が登場。2代目の現行型は2009年より販売されているが、売れていない。北米にはV8、5.6Lエンジンを積む猛者もいる。
●ホンダ レジェンドの折れない心に最敬礼
1985年登場の初代こそ比較的売れたが、2代目(1990年)、3代目(1996年)、4代目(2004年)、そして3年間の空白期間を経て2015年に登場した5代目現行型まで辛酸をなめ続けている。
「米国で人気だから」ということだろうが、SH-AWDという新しい技術を投入(4〜5代目)しようが何をしようが日本人にまったく受けないのはハタから見ていても気の毒。それでも折れない心には感心を通り越して、尊敬の念すら覚える今日この頃だ。
3代目
4代目
5代目(現行)
●三菱デボネアからの〜 プラウディア/ディグニティ
デボネアからプラウディア/ディグニティと続く三菱フラッグシップセダンの歴史は、ある意味日本車の裏街道。そもそも初代からして人を寄せ付けない異様なオーラを発散したまま、1964年から1986年まで23年間も生産されたアナーキーなクルマで、2代目以降はそこからの方向転換を目指したものの血は争えず、どうしても「三菱グループのお偉いさんが乗るクルマだからして庶民はシッシッ」という雰囲気を醸し出してしまう。
結局、1999年に3世代にわたるデボネアの歴史は終了。その後は2000年登場のプラウディア/ディグニティがあとを継ぐが、そっちは開き直ったかのように「庶民は乗るな」オーラを爆発させて撃沈。最後は日産シーマとフーガのOEM車だった。
3代目デボネア
初代ディグニティ
●味はあったが人気はなかった。マツダの高級車は、それがいい……
トヨタと違う高級車を作りたい。その意思の強さは感じるものの、結果は出ず。でもマツダはそれでいい。
アンフィニMS-8
ユーノス800
華々しく散っていった高級セダンたちを見ていると「けっこうよかったのにね」というクルマもあることに気づく。
担当、個人的にはレパードJ・フェリーが「けっこうよかったね」の枠に入ってきて、年を取るのはこういうことなのかという感慨にふけっている。若い頃には「ありえん……」と思っていたのに、自分の未熟さを恥じるばかりだ。
そんな「レベルが高すぎたクルマ」も散見されるが、みんな売れなかったのは事実。花を手向けたい。
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