2018年11月26日に日産の西川廣人社長は、カルロス・ゴーン元会長の逮捕を受け、日産の従業員に事情説明を行った。このなかで西川社長は「日本市場へ十分な投資をできなかったのは、意思決定のゆがみによるものだから、今後は正していきたい」という趣旨のコメントをした。
ゴーン氏にその責任があるかはさておき、自動車メディアの視点から“車”に焦点を絞って見ると、特に日本で売っている日産車は人気・商品力の高い車種が近年減少している。販売の大半はノートとセレナ、三菱と共同開発した軽自動車が占めるという寂しい状況だ。
ただし、日産車のラインナップを見ると、現在は販売が低調な車種でも、発売当時は人気や実力が高かったモデルが少なくない。ジュークなどは正しくその筆頭例といえる。
そこで、本稿ではテコ入れを図れば売れ行きを伸ばせそうな日産車とその対策をあわせて解説。「日本市場への十分な投資」が、これらの車種になされるかどうか。“新たな日産”に期待したい。
文:渡辺陽一郎/写真:編集部、Newspress Ltd
ジューク/2010年登場
ジュークは2010年に発売されたコンパクトSUVだ。当時は今ほどSUV市場が盛り上がっていなかったが、ジュークは新鮮味のあるデザイン、コンパクトなボディによる運転のしやすさ、求めやすい価格などによって人気車になった。
その後も改良は積極的に行われ、緊急自動ブレーキも装着している。今の登録台数は1か月平均で300~400台だが、さらに改良を加えて宣伝すれば、売れ行きを伸ばすことも可能だろう。
最も効果的なのはe-POWERの投入だ。ノートはもともと売れ筋のコンパクトカーではあったが、e-POWERの投入で売れ行きを従来の2倍以上に増やした。セレナもe-POWERの設定で販売ランキングの上位に入ったから、ジュークにも拡販効果が期待される。
バリエーションも見直す。スポーティな「NISMO」はすでに用意しているから、オフロード指向を強めたクロスカントリー的なグレードを加えたい。最近はジムニーが人気を得るなど、SUVの原点回帰的な車種が注目されている。
エルグランド/2010年登場
2010年発売のLサイズミニバン、エルグランドも筆頭に挙げられる。現在の販売は低調で、1か月の登録台数は500台前後だ。アルファードは1か月平均で約4700台を登録しているから、エルグランドは10%程度となる。
売れ行きが伸び悩む理由は商品力とボディスタイルだ。商品力ではLサイズのハイルーフミニバンとしては車内が狭い。エルグランドの全高はアルファードに比べて約140mm低く、室内高の数値も100mm下まわるからだ。
しかも、3列目シートは床と座面の間隔が足りず、座ると腰が落ち込んで膝が持ち上がる。さらに3列目の格納方法は、背もたれを前側に倒す方式だから、広げた荷室の床が高くなって段差もできる。これでは自転車などを積みにくい。
このように背の高いLサイズミニバンなのに、3列目シートが窮屈で、畳んだ時の荷室も狭いとなれば、購入する価値が大幅に減ってしまう。
先ごろまでは緊急自動ブレーキにも不満があったが、2018年12月13日の仕様向上で刷新。設計の古いミリ波レーダー方式から、セレナなどと同様の単眼カメラ方式に改めている。従来は3.5Lエンジン搭載車のみの装着だったが、2.5L車も追加。
この点は進歩したが、運転支援機能を充実させた「プロパイロット」は未装着。エルグランドのシステムがセレナに負けるのでは困る。さらなる改善が必要だ。
JC08モード燃費も、売れ筋の2.5Lエンジン搭載車が10.8km/Lと悪い。せめてアイドリングストップは装着したい。
ただし、これらの改善を施しても、エルグランドの販売をテコ入れするのは難しい。先に述べたとおり3列目シートと荷室の狭さという致命傷があるからだ。
最も効果的な手段は価格の変更。アルファード&ヴェルファイアは、ライバル車が販売面で弱くなったこともあり価格を高めた。今では売れ筋の価格帯は380~500万円だ。
そこでエルグランドは、2.5Lエンジンとエアロパーツを備えたハイウェイスターの廉価グレードを、現在の353万1600円から299万円に大幅値下げする。
その代わり値引きには対応しないワンプライス販売だ。今でも30万円を超える値引き販売をしているのだから、ワンプライスと割り切れば54万円の値下げも可能だろう。
エルグランドが属するLサイズミニバン市場は、アルファード&ヴェルファイアの1人勝ちだ。この市場で活路を見い出すには、アルファード&ヴェルファイアを諦めたユーザーをカバーするしかない。そうなると値下げするのが効果的だ。
また、SUVが流行しているので、デリカD:5のように外観をドレスアップしたクロスオーバーモデルを用意する手もある。
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