キューブ/2008年登場
キューブは売れる余地のあるコンパクトカーだ。
背の高いボディは車内が広く、内装は和風に仕上げた。ガラスルーフにはSHOJI(障子)シェードが装着され、車内を柔らかい光で満たす。2008年の発売だからインパネ周辺のデザインには古さを感じるが、曲線を描いて柔和な印象だ。
このキューブが備える雰囲気は貴重だろう。今の車はどれも目を吊り上げて速く走ろうと必死なイメージだが、キューブはまったく違う。「心地好い空間だから、ゆっくりと走り、長く乗っていたい」と感じさせる。そして、この雰囲気こそ、今の時代が求める居住空間のあり方だ。
従ってキューブをこのまま終らせるのは惜しい。まず当たり前のテコ入れとして、緊急自動ブレーキを装着する。JC08モード燃費も現状では19km/Lだが、15%くらいは向上させたい。
e-POWERも設定する。e-POWER搭載車には、合成皮革の内装(本革は高すぎる)、上質な足まわりなどを備えたプレミアム感覚の上級グレードも用意すると、ダウンサイジングするユーザーに喜ばれるだろう。ノートの「メダリスト」のようなグレードは、キューブにこそ必要だ。
その一方で、外観をSUV風に変更したクロスオーバーモデルも欲しい。いろいろと多彩に発展させられることも、キューブの特徴だ。
マーチ/2010年登場
かつてはコンパクトカーの定番車種だったが、2010年に発売された現行型は人気を大幅に下げた。理由は2つある。
まずは質感の低下だ。現在のコンパクトカーの中で見て、質感は低水準に留まる。1992年に発売された2代目マーチ、2002年の3代目マーチと比べても見劣りするほどだ。これでは売れ行きが伸び悩んで当然だろう。
2つ目は商品の性格だ。今は背の低いコンパクトカーも特徴がないと売りにくい。例えばノートの「e-POWER」やアクアのような「ハイブリッド」、デミオの「クリーンディーゼル」に相当する個性的なエンジン、フィットのような広い室内などが求められる。
売れ行きを伸ばすために、まず行うべきは外観の大幅な刷新だ。フロントマスクのダラーンとした形状、リアサイドウインドウの回り込みと合っていないルーフラインなど、見栄えの悪い部分を真っ先に直したい。
2つ目は安全装備だ。今どき、緊急自動ブレーキが非装着では売れるハズがない。ノートと同じタイプを装着する。
3つ目は外装パーツの充実だ。今のBMWミニは、ホイールに樹脂製パーツを装着するなど、外観をSUV風に仕上げた。ミニにはクロスオーバーもあるが、標準ボディの3ドアと5ドアもSUV風だ。
この方向で外観をアレンジすると、アルトラパンやミラトコットといった“カワイイ系”の軽自動車とは違う、コンパクトカーとしての存在感が強まるだろう。
パルサー/日本未発売車種
日産は海外ではさまざまな車種を販売している。これらのうち、コンパクトSUVのキャッシュカイ(日本名:デュアリス)、上級スポーティクーペのインフィニティ Q60(スカイラインクーペ)、ティーダなどは日本での販売を終えた。
「コストを費やして日本に導入しても、売れる見込みがない」というのが日産の判断だが、販売店の見方は違う。
「海外向けで少し売りにくくても、SUVなどの需要は多い。デュアリスやスカイラインクロスオーバーなどのお客様は、次に購入する車種がなくて困っている。スカイラインクーペのお客様には、次期型が発売されたら必ず買うよと、約束している方までおられる。このような有り難いお客様が、今は次々と日産から離れている。新型車の発売が急務になっている」と語る。
日本向けの新型車を発売するのが無理なら、せめて海外で売られている日産車を導入して欲しい。
筆頭に挙げられるのがパルサーだ。全長が4387mm、全幅は1768mm、ホイールベースが2700mmの5ドアハッチバックで、インプレッサスポーツやカローラスポーツのライバル車に相当する。エンジンは1.2Lのガソリンターボや1.5Lのディーゼルターボを搭載する。
ホイールベースが長いので、後席の居住性や走行安定性に余裕があるだろう。ノートの上級車種に位置付ければ、十分に売れる余地がある。
◆ ◆ ◆
このほか業務提携を活用して、例えばルノー・トゥインゴを日本では日産マーチとして売る方法もあるだろう。トゥインゴの雰囲気は、人気の高かった2代目、3代目マーチに似ている。
今こそ日産車は変わるべきだ。守るのは日産を育ててくれた国内市場。国内の販売順位は8メーカー中で5位まで下落し、もはや猶予の許されない販売状況だから、海外向けの車種を導入するなど、柔軟かつ迅速に対応してもらいたい。
コメント
コメントの使い方