「中古車売買ってこんなめちゃくちゃだったの!?」一連のビッグモーター騒動を受け、一般の皆さんの反応に、中古車業界に詳しい記者が解説する!!
※本稿は2023年10月のものです
文/萩原文博、写真/ベストカー編集部、ビッグモーター、Adobe Stock(トップ画像=yu_photo@AdobeStock)
初出:『ベストカー』2023年11月26日号
■ビッグモーター事件で判明した中古車業界の問題
2023年7月、中古車販売業界で売り上げトップだった「ビッグモーター」の、板金塗装部門による保険金不正請求問題が発覚した。
これにより創業者であった兼重宏行社長(当時)が辞任し、その後、店舗前の街路樹伐採や枯死など、さまざまな問題が明るみに出た。
このビッグモーターの保険金不正請求発覚を機に大手中古車販売店での不正が次々と明らかとなり、中古車業界全体に暗い影を落として、本件発覚の2023年7月以降、好調だった中古車販売が急激に落ち込むことになった。
中古車大手オークションのUSSが発表した2023年9月の平均落札価格は107万4000円。前年同月比で12%安となり、前年同月を下回るのは7月から3カ月連続となっている。
オークション価格が下がっている要因には、ビッグモーターなどの大手中古車販売店の不正だけではなく、ロシアへの輸出規制などの影響もあるが、知り合いの中古車販売店に話を聞くと、「8月からピタッと客足が止まりました」と困り果てていた。
そこで、今回はビッグモーターによる一連の不適切な行為は、業界内では氷山の一角と言えるのか、そして中古車の支払総額表示などにより今後中古車購入はもっとガラス張りとなり誰でも安心して購入できるようになるのかを検証したい。
■「中古車店」と「新車ディーラー」の違い
最近は新車と中古車を両方取り扱う販売店も増えているが、一般的に「自動車販売店」といえば、新車を扱うディーラーと中古車を扱う中古車販売店の二業種に分けることができる。
自動車メーカーの副代理店であり、中古車を販売している某店長に、「中古車販売店」と「新車ディーラー」の違いを聞いてみた。
「中古車は古物商の許可を取れば誰でも始められます。(古物商の)申請は、営業する所在地を管轄する警察署です。
個人で申請する場合、許可申請書と略歴書、本籍が記載された住民票の写し、保管場所(駐車場)の賃貸借契約書、誓約書、身分証明書、URLの使用権限があることを証明する資料を用意し、手数料1万9000円を払うだけで通ります」
つまり、必要書類を揃えて、手数料と一緒に警察署に申請し、許可が出れば次の日から中古車販売店を開店できるというわけだ。
続けて店長は、「ただし、分解整備を行うのであれば整備士資格のある個人または陸運局から認証工場の資格を取らないとできません」と話してくれた。
中古車を仕入れて販売するだけならば、古物商許可だけでもいいが、整備を行う場合は資格を取らないとならなくなるということだ。
では、新車を販売する場合について聞いてみると、
「新車ディーラーになるためには、自動車メーカーから販売権を購入することになります。ただし、現在自動車メーカーから直接販売権を買えるのは国産メーカーではスズキだけだと思います。
また、スズキとダイハツは副代理店制度があるので、副代理店として、地元の販売会社から卸価格で新車を購入することが可能です。スズキでは年間24台販売すると副代理店の権利がもらえ、ダイハツはいくつかランクがあり、最も下のベストピット店では年間12台販売すれば、代理店の権利がもらえるはずです」
と話してくれた。
同じ「クルマを扱う販売店」でも新車と中古車ではハードルの高さがかなり違うことがわかる。スズキ、ダイハツ以外のメーカーは開業の門戸すら開かれていない。この結果、中古車販売店はよい販売店もあればそうでない販売店も存在することになった。
ここ日本では、新車を作ること、新車を売ることについては何重もの手続きや資格が必要だが、一度販売されたクルマが流通することについては、比較的チェック項目が少なく、ゆるやかで門戸が広がっている。そのことが、今回の「ビッグモーター」騒動で広く明らかになったともいえる。
そこで、「こうした悪質な中古車販売店の手口は昔からあったのか」、「ビッグモーターが特別だったのか」、「もっとひどい店があるのではないか」などを、元リクルート社『カーセンサー』でマネージャーを歴任し、現在は主に自動車販売店の人材育成、マネジメント、組織活性、販促強化、関係性マーケティングなど組織のパフォーマンスを引き上げるコンサルティングを行っている村瀬永育氏に伺った。
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