北米最古の自動車メーカーとGMがコラボ!! 水素燃料電池のダンプ・ミキサーなどを共同開発へ

北米最古の自動車メーカーとGMがコラボ!! 水素燃料電池のダンプ・ミキサーなどを共同開発へ

 米国の老舗自動車メーカー・オートカーとゼネラルモーターズが燃料電池トラックの共同開発で合意した。GMの燃料電池システムを搭載する大型ダンプやミキサー車を2026年に発売し、その後、展開する車型を拡大する予定だ。

 ゼロ・エミッション化は特装車(米国で「ボケーショナル」と呼ばれる車両)でも急務となっているが、消費エネルギーが大きいこれらの車両はバッテリーEVだけでは成立が困難。大型商用車において燃料電池の重要度が増している。

文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/General Motors・Autocar LLC

オートカーとGMが燃料電池で提携

北米最古の自動車メーカーとGMがコラボ!! 水素燃料電池のダンプ・ミキサーなどを共同開発へ
19世紀創業のオートカーは現存する北米最古の自動車メーカーだ

 米国の大手自動車メーカー、ゼネラルモーターズ(GM)と、現在は特装系トラックなどを製造している老舗自動車メーカーのオートカーは、GMの「ハイドロテック」パワーキューブ燃料電池を採用するゼロ・エミッション特装トラックの共同開発で合意したことを2023年12月7日に発表した。

 1897年から自動車を製造しているオートカーは北米最古の自動車メーカーとして知られ、2022年には創立125周年を迎えた。現在は北米市場のカスタム特装トラックでマーケットリーダーとなっている同社だが、実は1923年に電気駆動のトラック(オートカー・トラックE1/E2)を製造しており、2021年にはおよそ1世紀ぶりにEVトラックをラインナップしたことが話題を呼んだ。

 今回のGMとのイニシアチブについても、頑丈かつゼロ排出なトラックというソリューションを顧客に届けるため重要な機会になるとみている。

 燃料電池技術は、EPA(米国環境保護庁)の定める環境要件に適合するための新しい駆動系オプションで、米国では「ボケーショナル」(直訳すると「現場の」という意味)と呼ばれる特装系トラックのユーザーが多いオートカーの顧客が、ゼロ・エミッションに移行することを支援する。

 GMの電動化戦略においても水素燃料電池はキーとなるコンポーネントであり、主に乗用車で採用されるバッテリーEVを超えて電動化を進めるために重要とされる。

大型車で重要度が増している燃料電池技術

北米最古の自動車メーカーとGMがコラボ!! 水素燃料電池のダンプ・ミキサーなどを共同開発へ
GMの「ハイドロテック」パワーキューブ

 燃料電池は水素と酸素の化学反応から電気を作り出す装置で、これにより水素をエネルギーに変換し車両を駆動するという仕組みだ。システムの重量がバッテリーEV(BEV)より軽量となるため、商用車にとって最も重要な積載量を確保する上でも有用で、また長い航続距離や動作時の静粛性、充填時間の短さなど、とりわけ大型車両のヘヴィ・デューティな用途に適した特性を持っている。

 世界的に各国で環境規制が進んでいるが、積載量や航続距離などの要件から、現状ではBEVでディーゼル車を完全に代替することはできない。燃料電池トラックのアドバンテージは、ディーゼルエンジンの大型商用車と同じ仕事をゼロ・エミッションで行なえるという点だ。

 GMのエグゼクティブ・ディレクターのチャーリー・フリース氏は次のように述べている。

 「GMの『アルティウム』プラットフォームなどEV駆動系は乗用車の電動化には素晴らしいソリューションです。しかしオートカーのクラス8トラックやターミナルトラクターなど、大きな商用車はもっとたくさんのエネルギーと短い充填時間を必要としています。

 私たちは、大量のエネルギーを消費する自動車カテゴリーで最大クラスの車両でもゼロ・エミッションを実現したいと考えました。このようなエネルギー集約的な用途では、燃料電池は理想的な技術です」。

 共同開発するトラックはGMの「ハイドロテック」パワーキューブを搭載する。要求の多い商用車向けの燃料電池駆動ソリューションはコンパクトでパッケージしやすくスケーラブル(拡張可能)という特徴を持ち、様々な産業に応用できる。例えば消防車や空港の地上支援車、さらには鉄道機関車や発電機などもアプリケーションの一つとなる。

 GMとオートカーのコラボによる最初の車両は2026年に製造を開始する予定で、アラバマ州バーミンガムにあるオートカーの工場で生産する。車両はオートカーによる受注生産で、顧客に直接販売する。

 最初はコンクリートミキサー車とダンプトラック(これらの車両は共通のアーキテクチャを持つ)で、のちに塵芥車(ゴミ収集車)とターミナルトラクタ(港湾などのコンテナターミナルでコンテナを移動するための構内専用車)を追加する計画。

 オートカー社長のエリック・シュワルツ氏のコメントは次の通りだ。

 「オートカーはカスタマイズされた特装系ソリューションを提供しています。環境規制が厳しくなる中、『ハイドロテック』燃料電池は、お客様が車両排出ゼロでEPAの要件に適合するための追加のソリューションになると私たちは考えています。

 GMの規模と信頼性、そしてハイドロテックの能力により、オートカーの既存のプラットフォームはさらに強化されるでしょう」。

次ページは : GMの「ハイドロテック」燃料電池パワーキューブ

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