ダンロップの住友ゴムが開発した「アクティブトレッド」が自動車用タイヤに革命を引き起こすかもしれない。ドライ路ではサマータイヤとして使える硬度を持ちながら、水分と反応するとゴムがソフトになってウェットグリップを高めたり、氷雪路のような極低温下で柔軟性を高めるというゴムだ。タイヤの世界の常識がガラリと変わってしまうかもしれないアクティブトレッドの詳細を解剖しよう!!
文・写真/梅木智晴(ベストカー編集委員)
【画像ギャラリー】灼熱も凍結路も1つのタイヤで!? ダンロップの驚愕技術「アクティブトレッド」ってなんなのよ(6枚)画像ギャラリー天候や路面環境に応じてタイヤ性能がスイッチする!?
現在、タイヤは路面コンディションや天候環境によってユーザーが要求性能に応じてチョイスをして交換するというのが一般的だ。冬の氷雪路面ではスタッドレスタイヤを履き、春~秋の路面ではいわゆるサマータイヤに交換する。オールシーズンタイヤもあるけれど、基本的にはサマータイヤがベースで緊急的に積雪路面でも走ることができる、と言う位置付けの製品がほとんどだ。
住友ゴムが開発した「アクティブトレッド」は、水や外気温に反応し、トレッドゴムの硬度が変化する。
皆さんイメージとしてお持ちだろうが、一般的にゴムは低温では硬化して温度が高くなると軟化する性質を持っている。でも、このゴムでタイヤを作ると気温の高い夏場はやわやわになってフニャフニャしたハンドリングになり、気温が下がる冬にはカチンコチンになってグリップしない。
ここまで書けばもうお分かりだろう。そう、アクティブトレッドはこの逆の特性を持たせた新素材ゴムなのだ。つまり、気温が高い場面ではしっかりとした硬度を持った状態を維持。グッと気温が下がるとゴムがソフトになるのである(TYPE ICE)。また、これとは別に、水分と反応してゴムをソフトにする変化特性も盛り込んでいる(TYPE WET)。
驚異的性能!! ドライ路とウェット路でブレーキンググリップに差が出ない!!
具体的にはウェット路面でトレッドゴム硬度が34%減少(軟化)し、エネルギーロスが11%増大(グリップ向上)する。試作タイヤでのテスト結果は、ドライ路とウェット路でのブレーキング距離にほぼ差が出ないレベルになっているという。これは驚愕の性能と言えるものである。
ウェット路ではトレッド面と路面の隙間に「水膜」ができることで滑りやすくなるのだが、ゴムをソフトにすることで路面の微細な凹凸にトレッドゴムが柔軟に対応。これにより水膜を切り裂いて接地面積を拡大することでグリップ力を高めるのだ。
細かい技術的な解説は化学の世界の話になってとっても難しいので割愛するが、水分と反応してゴムを軟らかくする特殊な軟化剤やポリマーを配合することでこの効果を実現することができたのだという。実際、この素材を配合したゴム片に水をかけると、手で触ってわかるほどの硬さの変化が体感できた。
低温で軟化する特殊素材も配合して氷雪路グリップを高める
アクティブトレッドのもうひとつの効果が温度に反応してゴム硬度を変化させる「TYPE ICE」だ。これまた化学の話になるのだが、特殊な樹脂と軟化剤を配合することで、氷点下の低温でゴムが軟らかくなるのだ。これは言うまでもなくスタッドレスタイヤに活かせるゴム素材技術である。
現時点では素材技術の段階だが、密閉されたビニールに充填されたある程度の硬さを持った透明の素材をキンキンに冷えた氷水の中に入れると、みるみるうちに軟らかくなる。ちょうど、常温に置いた保冷材のような手触りだった。これをトレッドゴムに配合することで、氷雪路面で柔軟性を発揮し、ドライ路面でしっかりとした硬さを保つオールシーズンタイヤとなる、と言うのがこの技術のポイントだ。
まずは今年秋、オールシーズンタイヤに搭載して市販化される!!
このアクティブトレッド、まだまだ実験室レベルの研究開発途上なのかと思ったら、なんと、今年秋にオールシーズンタイヤに搭載して市販するというからまたまた驚き。現段階で具体的な発売時期にまで言及するということは、タイヤ製品として一定のレベルに仕上がっている、と言うこと違いない。果たしてどのような性能を見せてくれるのか? 今から発売が楽しみだ!!
それにしても、ドライからウェット、さらに氷雪路面までをひとつのタイヤで走れるとなると、タイヤメーカーとしては売り上げが減少してしまうのではないかと余計な心配をしてしまうが、タイヤの製造や廃タイヤ廃棄時のCO2排出、あるいは原材料の天然資源保護など、地球環境を考えると、タイヤ消費量の低減は、重要な課題となってくるのである。
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