写真/鶴身健
2022年、日本での実写映画興行収入トップとなった『トップガン マーヴェリック』。その劇中登場車両「GPZ900R」は、神戸の「カワサキワールド」でも一般展示 されました。ファンなら是非目にしたいこの車体、36年前に公開された初代「トップガン」で撮影された姿をリアルに再現したエイジングが感動モノ!
キズやカウルの色褪せっぷりもさることながら、ミリタリーテイストあふれるステッカー類も印象的な「トップガン仕様」のGPZ900R。真似したいというGPZオーナーも多いと思われますが、意味もわからず貼るのはつまらないですね。はたしてこのステッカー、どういう意味のマーク なのか気になったので調べてみることにしました。
文/西田 宗一郎
まずは「TOPGUN」を象徴するエンブレム
アメリカ海軍のパイロットは、部隊それぞれのオリジナルのマーク「部隊章」パッチをフライトジャケットなどに取りつけています。部隊の活躍や役目を表現したこれらのパッチは千差万別のデザインで、勇敢な戦闘機からポップなカートゥーンまで様々なテーマで描かれています。基本的にパッチは右胸に自分が現在所属する部隊のものを取り付けるのですが、場所や枚数は自由。過去所属していた部隊のものをそのまま……というパターンもあり、軍歴が長いベテランだということも表しているもの。
それをイメージした劇中のGPZ900Rに貼られていたのはさまざまな戦闘飛行隊の部隊章。主人公であるマーベリックが優秀な戦闘機パイロットとして、様々な部隊を渡り歩いた歴戦の勲章としているのかもしれません。また要注意なことに、劇中仕様のステッカーは実在の部隊章とはわずかに違う (文字など)部分も多くあります。あくまでも部隊章は「モデル」ということですから、リアル志向のファンは要注意!
まずは最も目立つこのパッチから。これは「United States Navy Fighter Weapons School」 のパッチがモデルで、「アメリカ海軍戦闘機兵器学校」所属を表しています。第二次世界大戦ののち、急激に発展を遂げた空対空ミサイルによって、戦闘機同士がいわゆる「格闘戦」を行う必要はなくなると思われた時代がありましたが、1964年に勃発したベトナム戦争では、ミサイルのみの力で戦闘機と闘うことができないことが発覚しました。
このため急遽アメリカ海軍は「戦闘機による空対空戦闘のプロフェッショナルを育成する学校」を設立したのです。これが「アメリカ海軍戦闘機兵器学校」いわゆる「トップガン」 で、各基地から選りすぐりの戦闘機パイロットがこれに志願しました。映画の通りパイロットたちは過酷な訓練に耐えながらも大きく操縦技術を伸ばし、各地で活躍することとなったのです。
映画を見て「トップガン」にあこがれを持った若者は日本のみならずアメリカにも多くいたようで、1986年の初代トップガン公開後には多数の志願者が殺到したとのこと。しかしカッコつけてトム・クルーズのセリフを言う学生は「プロ意識の欠落」のペナルティとして5ドルの罰金 を徴収された……ということもありました。
いろんな部隊を渡り歩いたマーベリックの戦歴が見える
続いて赤いツチブタが描かれているパッチ。これはアメリカ海軍「第114戦闘飛行隊(VF-114)」 のエンブレムで、原子力空母「エンタープライズ」に配属されてベトナム戦争を戦った部隊です。初代トップガンでも空母は登場し、艦長はエンタープライズの帽子を被っていました。
星座の「しし座」と黒いライオンを描くのは「ブラックライオンズ」とも呼ばれた「第213戦闘飛行隊(VF-213)」 のエンブレム。こちらもベトナム戦争に参加しており、空母「キティホーク」に配属されています。
急降下するワシのパッチ2種類。上の赤いワシは「第110空挺早期警戒飛行隊(VAW-110)」 の部隊章をモデルにしています。「ファイアーバード」の異名で呼ばれた偵察隊で、さまざまなパッチの中で唯一戦闘隊ではありません。が、これは下の「第51戦闘飛行隊(VF-51)」と同じミラマー海軍基地を拠点としていた部隊のため、リアリティが出るセレクトといえそうです。
下の青いワシは「第51戦闘飛行隊(VF-51)」 。1920年代から複葉機を運用していた歴史ある航空隊で、第二次世界大戦や朝鮮戦争も経験した部隊です。ベトナム戦争時は空母「コーラルシー」に配属されていました。この部隊は映画の舞台となったミラマー海軍基地を拠点としており、初代トップガンの撮影に全面協力。登場する戦闘機「F-14」はこの部隊所属の機体でした。「トップガン マーベリック」でも、登場人物に「VF-51」のヘルメットバッグなどが登場しています。
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