豊田自動織機、日野自動車、そしてダイハツと、関連会社による不正が発覚し、盤石とはいえない面が露呈したトヨタ。新車販売台数世界1位という好調ぶりの陰にある、今のトヨタにとっての最大のアキレス腱とは?
※本稿は2024年2月のものです
文/佃義夫、井元康一郎、渡辺陽一郎、写真/ベストカー編集部、トヨタ
初出:『ベストカー』2024年3月26日号
■子会社で続く不正はどう影響する!?
ダイハツ工業とトヨタ自動車は2月13日、ダイハツ工業の経営陣を刷新し、親会社のトヨタから中南米本部長の井上雅宏氏(60歳)が3月1日付けでダイハツ工業社長に就任すると発表した。
井上新社長とともに会見に臨んだ佐藤恒治トヨタ社長は「不正再発防止に向けたダイハツの改革を現場主義で進めるとともに、ダイハツの負荷を軽減するため軽自動車を軸とする事業領域へ」とトヨタ主導でダイハツの立て直しを進めることを強調した。
2016年にトヨタ100%子会社となったダイハツの認証不正が内部告発で明らかになったのが2023年4月だが、前年の2022年3月にトヨタ50%出資子会社の日野自動車のエンジン認証不正が発覚している。
加えて2023年3月にトヨタの源流会社である豊田自動織機がフォークリフト用ディーゼルエンジンのデータ不正を発表し、いずれもその後の社内調査で不正が拡大するとともにかなり前から不正が続いていたことも判明したのだ。
トラックの日野、軽・小型車のダイハツ、ディーゼルエンジン委託の豊田自動織機と、トヨタグループの中核を担うこの3社の不正だけでなく、この間、トヨタ販社による車検不正も明るみに出ている。
これはある意味で、豊田章男トヨタ体制14年間の歪みとの見方もある。トヨタ本体の業績好転と裏腹にグループ社内に鬱積したものが噴き出したのか。
■グループをどう立て直していくか
豊田章男会長はグループビジョン説明会で改めて深く陳謝し「トヨタ創業の原点を見失った」とし、自らがトヨタグループ全体再生の最高責任者で動くことを宣言した。
皮肉にもダイハツと日野を含む2023年トヨタ連結世界販売は1123万台と4年連続首位を堅持し、2023年度連結純利益は4兆9000億円と過去最高を更新する。
商品フルラインナップとグローバル全地域でグループによる生産・販売をカバーしているトヨタとしても子会社の立て直しのなかで地域戦略・商品戦略の事業分担や委託見直し、短期的な台数減など業績面の影響は避けられない。
また、すでにトヨタは独ダイムラー傘下の三菱ふそうと日野の統合を決断してトラックの日野の方向を定めた。2024年末までに日野・三菱ふそうが統合し、国内商用車メーカー再編にまで繋がるものとなった。
軽・小型のダイハツも新たに送り込んだ新経営陣と豊田章男会長が先頭に立ってどう立て直すか、ということになろう。
(TEXT/佃 義夫)
■マルチパスウェイ掲げるけど……BEVに弱さが!?
欧州委員会や中国が仕掛けた急進的なBEV化戦略に対して、トヨタ自動車は一貫して石油燃料の消費削減や電力、水素、カーボンニュートラル燃料の導入をバランスよく進めるという「マルチパスウェイ」を提唱し続けてきた。
バッテリー技術が未熟なうえ莫大なエネルギー消費を伴う道路交通向けの送電網更新も進んでいない今の状況では、バッテリーEVへの早期転換が無理筋であることは確かで、技術革新に従って徐々に変えていくという現実主義のマルチパスウェイの思想自体は間違っていない。
そんなトヨタの提唱が世界の政策に影響力を持てなかったのは、首脳陣のBEV嫌いに引きずられてバッテリーEVの商品展開があまりにおろそかになっていたことが大きい。
もしトヨタが世界に先んじて、欧米中国勢が腰を抜かすような性能のバッテリーEVを作ったうえでマルチパスウェイを主張していたら、状況はまったく違ったものになっていただろう。
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