■トヨタこそ正しいというメンタリティ
自社の業績は好調だが日野自動車、ダイハツ工業、豊田自動織機と不祥事が相次ぐ形でグループ経営のコントロールが取れなくなっているという思わぬ弱点を露呈したトヨタ。かつてはむしろ結束の強さを強みとしていた。こうなったのは近年の話である。
変化のその底流にあるのはトヨタ生産方式などの企業戦略をはじめ“トヨタこそが正しい”という意識が強まっていることだ。
販売台数世界首位になって久しく、利益率も上昇基調。勝ちが続くと自分が正しいという意識が増大するのは人間の性で、そうなること自体は無理もない。大事なのは“今、自分がそういう状態にある”という自覚を持つことで、それがあれば自ずと注意力が働く。
今のトヨタに欠けているのはその自覚である。豊田章男会長は1月30日に新たなグループビジョンを発表し、自ら陣頭指揮を取ってグループ統治の改革を行うと宣言した。再結束を図るようで聞こえはいいが、トヨタの正しいやり方でグループ全体を統率するという極度の中央集権型改革だ。
豊田自動織機にしても100%子会社のダイハツにしても、トヨタとは別会社でそれぞれに個性というものがある。強い立場のトヨタがそれを尊重する姿勢を示さなければ、トヨタの言うことを聞いていさえすればいいというグループの空気は変わらないだろう。
トヨタが本当にやらなければならないのはトヨタ幕府のような統治の維持ではなく、個を生かすグループガバナンスの民主化だ。それができなければ上意下達的硬直化はトヨタのアキレス腱としてこれからもくすぶり続けるだろう。
(TEXT/井元康一郎)
■レジェンドネームの乱用は正しい戦略か!?
近年のクラウンは売れゆきが落ち、2021年は1990年の約10%だった。そこで存続を賭けて4タイプに増やし、この内の3タイプは人気カテゴリーのSUVだ。
確かに車名は残るが「クラウンの、アレ何だっけ?」になる可能性もある。しかしそれでも、ランドクルーザーを含めて商品力があれば売れる。
例えばカローラは6タイプも揃えるが、カローラクロスは好調で、カローラシリーズ全体の44%を占める。レジェンドネームの安売りは、今まで築いたブランドを汚して逆効果のように思えるが、販売台数に与える悪影響は小さい。
(TEXT/渡辺陽一郎)
コメント
コメントの使い方