クルマを運転する際の悩みのひとつである「腰痛」。厚生労働省の調査によると、身体に(病気やけが等によって)何らかの自覚症状がある人が訴える症状のトップは「腰痛」だそう(厚生労働省「令和4年 国民生活基礎調査の概要」による)。
まさに国民病ともいえる腰痛ですが、運転中は立ったり、姿勢を変えることができないことから、特に辛いもの。
実は筆者も腰痛持ち。腰痛解消を得意とする整体にも通い、対処方法を教わってきているのですが、いったん痛みを感じてしまうと、数日間悩まされてしまうため、できるだけ痛くならないよう、日ごろから注意をしています。筆者の実体験も踏まえつつ、腰に優しい運転姿勢と腰痛を予防(もしくは緩和)するためにやるとよいことをいくつかご紹介しましょう。
文:吉川賢一
アイキャッチ写真:Adobe Stock_ThawKyar
写真:Adobe Stock、写真AC、NISSAN、TOYOTA
背骨を立っているときと同じかたちに保つことがポイント
腰痛の原因は人によって違うようですが、クルマを運転中は、立っているときには両足へと分散されていた上半身の重みが、座っていることで腰へと集中しまうため、血流が悪化して神経を圧迫、腰痛となってしまうことがあるそう。特にAT車を運転中、左の膝を曲げた姿勢で運転している人は要注意。曲げたほうが楽であるため、ついついやってしまいがちですが、膝を曲げていることで血流が妨げられてしまい、腰痛の原因になってしまうことがあるそうです。
これらを予防するには、背骨を立っているときと同じ状態に保つように座ること。立っているとき、人間の背骨は(横から見ると)大きなS字となっていますが、椅子やクルマのシートに座っているときにも、背筋を伸ばして腰をぐっと前に押し出してS字ラインを保つと腰痛を防ぐことができるそうです。具体的には、下記の3つが注意点です。
1.シートの奥に腰がくるよう深めにかけ、左足でフットレストがしっかり踏める位置にシートの前後を合わせる
2.ランバーサポートがあるならば、できるだけ前に出す(ない場合にはクッションなどを挟む)
3.寝そべらないようにシートの背もたれは起こし気味にする
シートに深く座ることで、ハンドルやアクセル・ブレーキペダルが遠くなったように感じると思いますが、その場合は、左足がフットレストに届くようシート前後位置を合わせ、ハンドルを握ったまま180度回しても、肘が伸び切らない程度の位置にチルト(角度調節)、テレスコピック(前後調節)を使って合わせます。
力を抜いてリラックスしてしまうと、どうしても猫背になりがち。腰を前に押し出すような姿勢を保つのは辛そうに感じますが、長時間運転では、この姿勢のほうが、腰痛を抑えられるそうです。
シートを見直すのもひとつの手
大きなS字の姿勢を保持するためには、シートも重要。シート表皮が滑りやすい素材であったり、尻下の座面のクッションが硬かったり、逆にフカフカ過ぎていたり、横方向のサポート性が甘かったりすると、姿勢保持のために無意識に力を入れるため、腰痛や疲労の原因となってしまいます。その場合は、身体に負担がかからない正しい姿勢で座り続けられるように腰回りを支持する形状のシートを取り入れると、楽になるかもしれません。
有名なところだと、RECAROのエルゴノミクスシートです。筆者は、自動車メーカー勤務時代に、最上位クラスのエルゴノミクスシートを研究実験用に購入し、詳細に調査をしたことがあります。一見、普通のシートのようにみえて、シート表皮には滑り止めがきいている素材が使われており、座面とシートバックの形状は、お尻がすっぽりとはまり込む形状。尻下ウレタン素材は、弾力があってやや硬めで、シートへ座ると、身体との隙間が無くなるようなフィット感があり、無駄な力みが少なくなりました。腰痛につながるようなダメージが減ったうえで、ハンドリングなどの運転操作もやりやすくなったような印象を受けました。
ただ、ここまでではなくても、市販のシートカバーを使って体が滑らないようにするだけでもよいでしょう。市販されている後付けシートカバーの中には、非常に滑りやすい表皮素材を使っているものもあり、できれば部分的にでも、スエードやアルカンターラなどの滑り止め効果のある素材の商品を選ぶとよいと思います。
コメント
コメントの使い方座ってもS字を保つというのは一見理に適ってそうですが、足や尻の骨も筋肉も経ってる時と大きく違うため
骨盤尾骨など様々な骨や広背筋中殿筋など多くの筋肉に負担を掛け続けることが分かっています。しかもS字具合によっては内臓にまで悪い。
一番いいのは自分の体に合ったRECAROフルバケを入れて、全体で支えること。形状だけ似ていたり革にして必要な部分が滑ったり体型に合わない等のシートは意味がないので注意です