レクサス最量販セダンの「IS」が売れていない。
直近の月販売台数(2019年7月)は151台。発売時期が違うとはいえ、価格が倍ほど違う最上級セダンのLSでさえ278台を販売している。
しかも、ISの販売台数は競合するメルセデスベンツ CクラスやBMW 3シリーズと比較しても明らかに少ない。
なぜISは身内にもライバルにも販売面で負けているのか? 車としての評価を含めて、その理由を解説。巻き返しの鍵は「次期型」が握っている!
文:松田秀士
写真:編集部
レクサスISの車としての「出来」はどうなのか?
まず、レクサス ISがどういう車なのか? ざっと説明しよう。
現行モデルは2013年から発売され、現在のラインナップは、最高出力318psを発揮するV6・3.5Lエンジン搭載のIS350、IS350バージョンL、IS350 Fスポーツ。
同178psを発揮する直4・2.5LハイブリッドのIS300h、IS300hバージョンL、IS300h Fスポーツ。同245psを発揮する直4・2.0LターボエンジンのIS300、IS300バージョンL、IS300 Fスポーツという構成。
全モデルFRの後輪駆動モデルだが、ハイブリッドモデルのみ後輪駆動以外に4WDを設定している。
ISは最近のマイナーチェンジでボディ剛性アップ、サスペンションアームのアルミ化、ショックアブソーバーの改良などを行い、乗り心地や室内静粛性、さらにハンドリングを進化させている。
もともと欧州、特にドイツ車をベンチマークに開発してきた経緯があった。
筆者自身、今はもう生産終了したがV8 5.0Lエンジンを搭載した当時トップスポーツモデルのIS Fで2010年にニュルブルクリンク24時間レースにチャレンジ。クラス4位で見事完走した経緯がある。
V8 5.0Lエンジンは、現在RC Fに搭載されているのと同じパワートレーンだが、そんなハイパワーのビッグエンジン&8速ATを搭載しても、ボディ剛性、ブレーキングそしてハンドリングはしっかりしたものだった。しかもレーシングフィールドで。
このことはスーパースポーツバージョンをビルトできるほど、ISの基本設計が堅実であることの証明だ。またハイブリッドモデルもラインナップされるなど、豊富なバリエーションが揃っている。しかし、なぜ売れないのだろうか?
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BMWやベンツ 競合車と比較して何が足りない?
まず売価から見てみよう。ラインナップのなかで廉価版のIS300は471万4000円、ハイブリッドのIS300hは516万4000円、V6エンジンを搭載するIS350は563万4,000円となっている。
ここでライバルを登場させよう。BMW 3シリーズの最廉価モデルは452万円。アウディ A4も447万円~と似たような設定。メルセデスベンツ Cクラスは455万円~。
まぁ最新の安全装備などオプション設定となっていたり、輸入車の場合は詳細を確認しないと、この価格を鵜呑みにすることはできないが、アウディなどは9月いっぱいまでの特別ローンを設定するなど、購買意欲を掻き立てるストラテジーも採っている。これらは明らかにISへの購買意欲を押し下げている。
さらに個人的に強く感じることが、運転支援システムの進化だ。
新型BMW 3シリーズには、あのハンズオフ機能(=いわゆる手放し運転機能)が高速道渋滞時に使える。日産 スカイラインは渋滞時だけではないので凄いのだけどね。BMWではこの2019年夏以降、順次設定モデルが発売される。
もうひとつ、3シリーズが凄いのは「リバース・アシスト」という機能。例えば、狭いすれ違いできない幅の路地を進んで行ったとき、対向車が現われたとしよう。
この時、このリバース・アシストを使えば、来た基線をそのままトレースしてステアリング操作。クリープでバックしてくれるのだ。ドライバーはブレーキで速度を調整するだけ、ステアリング操作から解放される。
BMW 3シリーズもメルセデス Cクラスもアウディ A4もACC(先行車追従型クルコン)+LKA(車線逸脱防止支援システム)がある。ISにもACCはあるがLKAはない。レーンを外れそうになった時にアラートなどで警告するシステムのみだ。
「LKA」とはレーンキーピングアシストとかレーントレーシングアシストなどの、車線をカメラで認識して車線の中央を維持して走るようにステアリングをアクティブに操作してくれるシステム。
ドライバーは無意識のうちにこの車線内中央維持を行っていて、これが運転疲労の一原因でもある。つまり、これがあれば疲れにくい。
他に、アウディはクワトロシステムと呼ばれるフルタイム4WDで定評がある。
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