晴天の夏、運転中にトンネルに入ったら一瞬目の前が真っ暗で前が見えない……こんな経験は誰にでもある。視界が開けておらず、自車の状態が把握しにくいトンネル内では、コレ以外にも起こりやすい現象がある。
文/山口卓也、写真/写真AC、イラストAC
【画像ギャラリー】錯覚が起こりやすい!! トンネル走行をナメちゃダメなワケ(7枚)画像ギャラリー■トンネル内での「追従静止視界」による速度超過に注意
多くのドライバーは周りの景色が流れていくことで速度を感じている。しかし、トンネルや夜間の高速道路などでは周りの景色が流れていることを感じづらいため、速度の感覚を失いやすい。
前車に追いつき、そのまましばらく追従して走っていると、まるで前車と自車が同じ間隔を保ったまま止まっているかのような錯覚に陥ることがある。これを“追従静止視界”と呼ぶ。
前車が少しずつ速度を上げているのに気づかず、自車も意識することなく同様に速度を上げ、「気づいたらかなりの速度が出ていた」という経験のあるドライバーも多いだろう。
速度は上がっているのに車間は変わらないため、前車がブレーキを踏むと追突の可能性大。非常に危険な状態である。
高速道路のトンネルではこの追従静止視界に加え、空気抵抗が少なくなることによる速度超過も起きやすいので要注意!
●トンネル入り口では減速するクルマも多い
逆に、トンネルに入った途端に減速するクルマもある。
これは、トンネルに入ったことで道幅が狭く感じ、心理的圧迫のために無意識にアクセルを緩めてしまうため。
特に夏の晴天時、明るいところから暗いトンネルに入るとよりいっそう狭く感じることがあるので知っておきたい。
■トンネル内で起こる「溶け込み現象」と「蒸発現象」
明るい部屋から真っ暗な外に出ると、少しの間だけ目の前が真っ暗になることがある。いわゆる暗順応に時間がかかっている状態。
これと同様の現象がトンネル内でも起こる。そして、この状態の時に前車が濃色である場合は非常に見えづらくなり、追突の可能性が高まる。
また、自車が濃色の場合は後続車にも見えづらくなっていて、これらを“溶け込み現象”と呼ぶ。
オートライト装備車でない場合、溶け込み現象による事故を防ぐためにトンネルに入る前からライトを点灯しておくことをお薦めする。
●出口付近で起こる「蒸発現象」とは?
トンネル入り口付近での溶け込み現象に対し、出口付近でもこれと似た“他車が見えづらくなる現象”が起こる。
暗いトンネルから明るい場所に急に出ると、前車が周りの明るい光に同調して突然消えてしまったように見える“蒸発現象”である。
溶け込み現象では濃色のクルマに注意したいが、蒸発現象では白やシルバーなどの明るいボディカラーのクルマに注意!
明るいボディカラーのクルマほど消えたように見えやすく、これに驚いて急ブレーキを踏んだりすると後続車から追突されるおそれが……。
また、車線も見失いやすいので、特にトンネル出口がカーブになっているシーンでは車線を逸脱しやすいので要注意!
■左隣のクルマが寄ってくる…「視覚吸引作用」
周りを壁に囲まれている暗いトンネルには圧迫作用があり、壁に当たりそうな恐怖感を感じる人も多い。
そのため、壁から離れようとする左隣のクルマのドライバーの目線は右の車線の方へ……。目線を右の方に動かすことで、無意識に右に吸い寄せられる“視覚吸引作用”によって右の車線に寄ってしまうのだ。
1車線の場合は自車が対向車に寄りがちなので自分で注意して走行するしかない。
このような現象を考え、2車線以上の場合は隣のクルマと前後位置を少しずらして走るか、自車が少し減速して、できるだけ並走を避けることをお薦めする。
2車線以上で自車が壁側を走る場合は、壁と自車の間にある車道外側線を遠くに見るようにして運転すると、隣のクルマに無意識に寄ってしまうことを防げるだろう。
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