トヨタ自動車現会長、豊田章男氏の「今の日本で頑張ろうという気になれない」という発言。その真意はメディアに向けたものだった。では仮に、本当にトヨタが日本脱出したらどうなるのだろうか? 今回は、トヨタの日本脱出で起きる良い点、悪い点を紹介していこう。
※本稿は2024年8月のものです
文:国沢光宏/写真:ベストカー編集部、トヨタ
初出:『ベストカー』2024年9月10日号
■トヨタと日本のユーザーの関係は不変
結論から書くと、日本のクルマ好きにとってはいいことばかりだと考える。
思い出していただきたい。国交省、かつてはドアミラーや60以上の扁平タイヤ、オープンカー、サンルーフなど禁止していた。いずれも大きな理由なし。強いて言えば「暴走族対策」か?
はたまた2010年まで自動ブレーキに代表されるADASを完全否定していた。日産やスバル、ホンダなどが承認の要請をしても「ダメに決まってるだろ!」
現在進行形で、赤信号や一時停止の標識を見ての制御は完全否定している。誤作動だってあるだろうから急減速こそ無理でも緩い減速くらいいいでしょ、と言ったって「ダメ!」。これまた理由なし。
先日、警察関係者に「赤信号の減速はなぜダメなのか?」と聞いたら、警察は大歓迎だという。国交省が強いブレーキを踏んでいる。
トヨタがアメリカの企業になったらどうか?
ドアミラー、扁平タイヤ、オープンカーすべて輸入車ならOKだった。ADASもボルボがこじ開けた。
安全や楽しさに直結する新しい技術をドンドン出せるようになると思う。本社を海外に移転させたって開発の主体は日本。今と変わらない「トヨタと日本のユーザー」の関係のまま、国交省がコントロールできない外国の自動車メーカーになるということ。
高齢者が赤信号を認知できず、横断歩道で子どもハネるような事故を大きく減らせるんじゃなかろうか。もちろん現在禁止されている電気自動車の電池のレトロフィット(安価で高性能な新世代電池に載せ替え)だってできます。
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ダメージを受けるのは国や自治体だ。まず納税の基本が海外になる。現在、世界中のトヨタの利益は日本に還流し、それに対する税金を日本に払っている。
海外籍の企業となれば、日本で得た利益分の税金だけ日本に払えばOK。2023年度で言えば、国家の税収に相当する「営業収益」46兆円のウチ、半分以上が海外分。これをゴッソリ失う。2023年における我が国の総税収は72兆円だ。トヨタがどれだけ日本の国際収支や税収に貢献しているかわかると思う。
当然ながらトヨタ分だけに限らない。自動車産業は周辺企業に支えられている。こういった企業も海外に軸足を移されたら、もうひどいことになる。
困ったことに今回の騒ぎを受け、アメリカなどから「収益の多くをアメリカで挙げているのなら本社も移してアメリカに税金を納めてていただきたい」みたいな動きも出ていると聞く。トヨタにその気がなくても海外からプレッシャーかけられたら分社化は避けられないかもしれません。
国交省、寝ている子を起こすようなことはやめて!
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