ハイエースを名乗る車種は数多あるが、その中でも最もスポーティで精悍な「ツーリングハイエース」を知っているだろうか。1999年から2002年までの短い間に販売されたクルマだが、その仕様が凄かった。アルファードのエグゼクティブラウンジに、ヴォクシー煌のエクステリアが合わさったような豪華全部乗せの、スーパーミニバンを紹介していく。
文/佐々木 亘 写真/トヨタ、三菱 ほか
■グランビアやハイエースレジアスの兄弟車
ツーリングハイエースのベースは、グランビアをナローボディ化したハイエースレジアスである。ここに、大型エアロパーツを付けて3ナンバーボディに変身させた。
エンジンは2.7Lのガソリンか、3.0Lのディーゼルターボから選択可能。4WDではビスカスカップリング式のLSDも付いていた。車両本体価格は259万5000円(ベースグレード2.7GAS FF)~338万円(Vパッケージ3.0ディーゼルターボ 4WD)となっている。
特に豪華仕様のVパッケージが、価格破壊とも言えるような豪華装備満載だった。300万円そこそこのクルマとは思えない、驚愕の中身を見ていこう。
■首脳会談でもする? 回転シートでお茶会はいかが?
Vパッケージの専用装備は、ツインムーンルーフ、専用アルミホイール、フロアコンソール、そしてフロント対面シートである。また、メーカーオプションとしてセカンドシート・サードシートの脱着ができるマルチディタッチャブルシートを選択できた。
ミニバンではシートの跳ね上げや床下格納はよく見かけるが、そもそもシートを取り外してしまおうというぶっ飛んだ発想が、ツーリングハイエースにはあったのだ。
通常は2×3×3の8人乗りとなり、車中泊のためのフルフラットも可能。セカンドシートは前後スライドができ、サードシートを折りたたみ前方に移動すれば、大きなトランクルームも誕生する。
さらに、セカンドシートを前方へ倒すと、テーブルに早変わり。また、フロント2席とセカンドシートの2名乗車分は回転させることができ、サードシートと向かい合わせて7人がけの半円形対面状態を作り出すことも可能だ。セカンドシート1脚をテーブルに使えば、和やかな午後のひと時を楽しめそう。
そして、脱着可能なセカンドシートとサードシートを取り外せば、本家ハイエースも真っ青の超広大な荷室スペースが生まれる。取り外したシートをどこに置いておくかという問題はあるのだが、これだけのシートアレンジがあり、使用用途が広いというのは嬉しいところだ。
フラットな乗り心地で快適性も悪くないし、制振・遮音材も積極的に使用しているから、走行中はかなり静かである。こんなクルマがコミコミ400万円で買えた時代を、とても羨ましく思う。
■対面シート復活もアリじゃない?
最近ぱったりと見なくなった対面式のシート。ツーリングハイエースはもちろん、エスティマなどのミニバンで見られた仕様だが、2000年代初頭を最後に絶滅してしまったのだ。
キャンプシーンや人数の多い移動時のサービスエリアなど、活躍の場はありそうだからぜひ復活してもらいたい。
絶滅の背景には、「ギミックの多いシートは小ぶりにせざるを得ない」といった理由や、単純に後ろ向きの状態で乗っていると「酔いやすいから」といったものがあったという。安全基準云々が絶滅の理由かと思っていたが、どうやらそうではないらしい。
シエンタ、フリードや、ノア/ヴォク、セレナ、ステップワゴンあたりまでなら、回転対面シートの利点がありそう。4人家族でお出かけする時に、車内で向かい合わせになって軽食を取るという光景は、令和の今も微笑ましい。
いろいろなアイディアが詰まっていたツーリングハイエース。こうした思い切りのいいクルマづくりを、現代でもまた見てみたいものだ。
【画像ギャラリー】ホテルのラウンジが走ってるみたい!? シートがすごいスーパーミニバンの今昔(16枚)画像ギャラリー
コメント
コメントの使い方1枚目の写真、当時の海外向けハイエース(国内向けではグランビア、グランドハイエースとされてた車種)の商用仕様ですね。たまに写真が間違ってるので確認してほしい。