ニンジャ1000SXが排気量アップで1100SXになり、さらに余裕が生まれてツーリングマシンとして確かな進化を見せた。となると兄弟車のZ1000もまた1100になるのは自然な流れなのだが、ネイキッド版となるZ1000は「ストファイ」じゃないか? 上質になって…いいのか??
⚫︎写真:小川裕之 ⚫︎撮影協力:東京ドイツ村
初期型は“トンデモナイ”の代名詞
水冷Z1000のスタートは2004年のことで、ZX-9R系のエンジンを使ったいわゆる「ストリートファイター」だった。スーパースポーツ由来のエンジンをネイキッドスタイルのバイクに合わせ込んで、それはいったいどこでどう楽しむのよ? という問いに「ストリートでファイトするでしょう!」というヤンチャなコンセプトで答えたのはカワサキだけでなく、当時は他社含めてこういったモデルを展開していた。
その中でもZ1000はそのハシリとして他社に影響を与えた存在だったし、こういったコンセプトだったからこそ初期型はちょっと「過ぎる」ほど過激に作り込んであった。おかげでこういった大排気量の俊敏なネイキッドは人気となり、汎用性の高いいわゆる「ビッグネイキッド」に代わる存在となっていった。現在ではその過激さはいくらか落ち着いてはいるものの、ネイキッドといえばこういったハイパーネイキッド/ストリートファイターを指すようになるまで浸透している。

初代Z1000は2004年に登場。ZX-9R(C/D型)ベースのエンジンはサブバルブ付きFIや2.2mmのボアアップ(899.5→953cc)で127ps/10000rpmを発生。フレームは鋼管ダイヤモンドで乾燥重量は198kg。細身なステンレス製4本マフラーが特徴だ。
しかし「トンデモナイな!」と驚きと興奮で迎えられた初代Z1000に対して、2007年登場の2代目はだいぶ落ち着いていたのだった。むしろかつてのビッグネイキッド的な包容力も持った良きスタンダードであり「ファイター」感はほぼ無かった。

2007年登場の2代目Z1000は、エンジン出力を125ps/10000rpmに改めて低中速を増強。鋼管ダイヤモンドフレームや足回りも刷新され、よりフィードバックを得やすい車体に。ユーロ3をクリアするマフラーはメガホン型の左右2本出し(排気口は4つ)。乾燥重量は非ABS車で205kg。
安心していたのもつかの間、2010年に出た3代目は逆に極端に振ってきた。排気量アップやアルミフレームの採用などがトピックだが、なんといっても見た目も性格も初代のワルさに逆戻り。なんとシートはヘビ柄にしてきたのだから驚いた。乗り味も硬質になりエンジンの出力特性も2型のジェントルさはどこへやら…。打てば響くキンキンな性格だった。

完全刷新の3代目は2010年に登場。1043ccの新設計エンジンは77x56mmと、1/2代目(77.2×50.9mm)よりロングストローク傾向を強めつつ138ps/9600rpmに強化。フレームはアルミツインスパーとなり、リヤショックを寝かせたホリゾンタルバックリンク式リヤサスを採用(装備重量は218kg)。2010年のブラウンカラー車だけの「ヘビ柄シート」も話題に。
そうしたら2014年、見た目はギョロ目の凄みデザインが増したものの、中身は洗練の方向。わずかではあるが再び優しくなったのだった。 …こう考えるとZ1000の歴史は過激と優しいを行ったり来たりしている。トンデモナイと思っていた初期型から23年、最新のZは1100になってどうなったのか???

2014年登場の4代目Z1000は、低く構えたLEDヘッドライトを起点に後方へ跳ね上がる「SUGOMI(凄み)」デザインが特徴。エンジンはカムシャフトの変更などで142ps/10000rpmに出力向上。装備重量は220kg。

そしてリッター直4のストリートファイター系Zとしては5世代目となる、2026モデルの「Z1100」。外観は基本的に2014モデルを踏襲しつつ、アンダーカウルの追加やメーターカバー/フロントフェンダーの形状などを変更。マフラーは左右2本→右側1本出しに。
全11グレード! ストファイZは巨大ファミリー
今のカワサキZシリーズ(除くRS)はZ H2を頂点に、4気筒では今回試乗したZ1100とZ900。ツインではZ650、500、400、250とラインナップされ、全7機種/11グレードを数えるのだから、なかなか大きなファミリーである。
Z H2(998cc 並列4気筒+スーパーチャージャー)
Z1100(1098cc 並列4気筒)
Z900(948cc 並列4気筒)
Z650(648cc 並列2気筒)
Z500(451cc 並列2気筒)
Z400/Z250(398cc/248cc 並列2気筒)
スーパーチャージャーのZ H2はプレミアムな立ち位置。ならばこのZ1100およびZ900が中核となるわけだ。1100があるため900は(とてもいいバイクだが)ちょっとマニアック。そこでこの1100は通常版とSEをラインナップし、まさにカワサキZシリーズの王道ど真ん中を歩く。
新型は排気量を1043㏄から1098㏄にアップ。ルックス的には先代のZ1000と大きく変わらないSUGOMIデザインを継承しているが、Z1000がずっと守ってきた4本出しのマフラーはニンジャ1100同様に右側1本出しに改められた。IMU搭載やRIDEOLOGY THE APPの搭載などの近代化も合わせて行われている。スタンダード版の価格は158万4000円だ。
対する今回試乗できたSE版は、先代のR版のような足まわりが豪華になったバージョンで176万円。フロントにブレンボキャリパー、リアにはリモートプリロードアジャスターも備えるオーリンズサスペンションを奢り、合わせてフロントフォークもゴールド仕上げとすることでプレミアム感を追求。またハンドルにはUSBタイプCの電源取り出しも標準装備し使い勝手の良さも提供する。

3mmのストロークアップで55cc増となったエンジン。先代の142ps/10000rpm・11.3kg-m/7300rpmから、136ps/9000rpm・11.5kg-m/7600rpmと、出力を下げつつトルクを増強。より低い常用回転域でも一回り力強い駆動力をプラスしている。この余裕が後述する「高級車」感を作っているのだろう。
絶品の新エンジン
カワサキのエンジンは「大当たり!」というものと、必ずしもそうでもないものがある気がする。回転や速度が乗ってくればどのエンジンもカワサキらしい伸びやかさや溢れ続けるパワーといった魅力があるが、ここで言っている「当たり」とはアクセルの開けクチのところだ。
特に素晴らしいと思ったのはZZR1400やZX-14R系、あとはH2系(そして2型のZ1000も!)だ。ジワッとアクセルが開けられて、クラッチがスルリと繋げられる。駆動力がトランスミッションやチェーン、ハブダンパーを介し後輪を回し始めるまでが手に取るようにわかるから、巨体でも全く怖くない。
Z1000で言えば2型がコレだった。「カワサキはこの開けクチがなんて上手なんだろう」と感じ入るのだが、ところが逆に開けクチが乱暴なモデルもあるのだ。それも演出の一つかもしれないが、なぜそこをもう少し丁寧にしてくれないのだろう…と感じるモデルもあるのは、まぁカワサキに限った話でもない。
そしてZ1100は明らかに前者である。ジワッとアクセルが開けられてライダーの思い通りに後輪に駆動を伝えられるその感覚は本当に素晴らしい。発進、停止を数回繰り返しただけでZ1100は「素晴らしいバイク」の太鼓判を押せた。
加減速も素晴らしい。排気量増大の恩恵もあるのだろう、包まれるトルクで思いのままに加速ができるのにそこに唐突さや怖さはない。ヘンな演出がないままスルスルと発進して速度が上げられるし、50~80㎞/hといった常用域でも上質でスムーズ、しかも回転数が上がりたがるとか下がりたがるといったことがなく、常に落ち着き払っていて回転の座りが良い。Z1000の出発点であった「ストリートファイター」というイメージとは違ってドラマチックさはないが、代わりに得た上質さによって、完全なる高級車に生まれ変わっているのである。
なお、3パターン(+1つのユーザーモード)から選べるパワーモードを「スポーツ」にしてもこの上質さが失われないのも良い。スポーティなモードでは扱いやすさよりもエキサイティングさを追求してしまうモデルも散見されるが、Z1100は扱いやすさをそのままに、さらなる興奮を上乗せしているのだ。
ストファイとビッグネイキッドの2in1
エンジンが優しいとはいえ、マッチョに盛り上がったタンクとその後ろにえぐれたシートにスポッと体をフィットさせると、その一体感から積極的に振り回すストリートファイター的乗り方をどうしてもしてしまう。股間をタンクに押し付けて、肘はちょっと開いて、前輪を意識しながらグリグリ走るイメージだろうか。車体自体はニンジャ1100同様に軽快というよりは落ち着きのあるタイプなのだが、それでも振り回すのは容易で大排気量車を意のままに操っている感覚は楽しい。この点ではZの血筋が感じられた。
一方で逆にちょっと腰を引いてタンクと股間の間にスキマを作ってあげ、肘も張らずに肩の力を抜けば、むしろZRX1200ダエグのような付き合いやすさも発見できた。ハンドリングからシャープさは抜け、前輪がコーナーを切り取るのではなく上手になぞっていく感覚。このおおらかさと接地感、ドシッと路面を捉えて離さない安心感。カワサキはこの味付けがとても上手だと改めて感心した。
先述したスムーズで急かしてこないエンジン特性のおかげもあり、ちょっと腰を引いてリラックスして乗れば淡々とツーリングするのだって苦ではないはず。ルックス的には「凄みデザイン」などと謳いワルぶっている感もあるものの、その実はなかなか紳士的なナイスガイなのである。

先代から引き継ぐ、低く構えた4連ギョロ目のLEDヘッドライトはまさに凄みがある。筆者は従来から「もう少し柔らかい表情でもいいのでは?」と思ってきたが、今回の試乗後はさらにその気持ちが強くなってしまった。「本当は紳士なのにワルぶっちゃって!」という感覚だ。

アルミフレームやホリゾンタルバックリンク式リヤサスなどは先代を踏襲しつつ、電子制御を最新世代化。6軸IMUの情報を元に、トラクションやホイールリフト、旋回中ブレーキなどを統合制御するKCMFを新搭載。上下双方向のクイックシフターやクルーズコントロールも獲得した。

ハンドルバーは従来型から前方へ13mm移動し、幅を22mm拡大。SEはメーター左側にUSB電源も純正装備する。ウインカースイッチが親指にとても近く、非常に操作しやすかったことは特筆点。シンプルなメカニカルキーも個人的には好ましい。

メーターはTFTカラー液晶となり、表示も先代の(特にタコメーターの表示が)特徴的なものから、より一般的な見やすいものに。スマホ接続機能も搭載され、専用アプリ「RIDEOLOGY THE APP」を使えば簡易ナビの表示も可能に。
※ライダー着用ジャケットは「カワサキ×IXON M-Night WP A」
バリエーションに期待してしまう
今回は上級版のSEだけの試乗だったため、スタンダード版との違いは未経験だが、違いは基本的にリアサスとフロントブレーキであることを思えば、ここまで書いてきた魅力はスタンダード版と共通していることがほとんどだろう。試乗を終えて思ったのは、Z1100は2型のZ1000に回帰したかのよう、という感覚だった。
これだけ包容力のあるエンジンならば、ゼファーに750と1100があったように、Z900RSにも「1100」があってもいいのではないか、などと想像してしまう。さらに言えば「エリミネーター1100」にも勝手に期待してしまうほど、この新作1100エンジンとその包容力、汎用性に大いに惚れ込んでしまったのだった。
2026 Z1100 SE 主要諸元(【】内はZ1100)
・全長×全幅×全高:2,055mm×825mm×1,085mm
・軸間距離:1,440mm
・最低地上高:125mm
・シート高:815mm
・装備重量:221kg
・エンジン:水冷4サイクル並列4気筒 DOHC4バルブ
・最高出力:100kW〈136PS〉 / 9,000rpm
・最大トルク:113N・m〈11.5kgf・m〉 / 7,600rpm
・燃料タンク容量:17L
・変速機形式:常時噛合式6段リターン
・ブレーキ形式(F/R):ダブルディスク/ シングルディスク
・タイヤサイズ(F/R):120/70ZR17/ 190/50ZR17
・販売価格:1,760,000円【1,584,000円】
詳細はこちらのリンクよりご覧ください。
https://news.webike.net/motorcycle/554740/
【2026 新型カワサキ「Z1100 SE」試乗】優しく成熟した“元・トンデモナイ奴”【画像ギャラリー】
https://news.webike.net/gallery3/554740/556285/





















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