“ミニトレ”ことGT50/80は、多くのライダーを育てたミニバイクの名車だ

“ミニトレ”ことGT50/80は、多くのライダーを育てたミニバイクの名車だ

 ミニトレという車名を懐かしく感じるのは、70歳前後の方だろうか。DT-1に倣った本格的な装備を持ったそのコンパクトなバイクは、1970年代に多くの若いライダーを中心に愛用された名車である。

 
文/後藤秀之
 

DT-1の血を引くミニトレール

 1967年の東京モーターショーでデビューしたヤマハの「DT1」はモトクロッサーYX26からのフィードバックによって設計されており、その成功によって以後ヤマハはオフロードバイクを得意とするメーカーと位置付けられたと言える。1960年代にミニバイクブームが起こり、様々なタイプの50〜80ccくらいまでのミニバイクが各メーカーから発売された。

 そんなミニバイクブームの中、1970年にヤマハからオフロードモデル「FT1」が発売された。このFT1はDT1のデザインをそのまま縮小したようなデザインを纏い、ロータリーバルブ式の2ストロークの50ccエンジンを搭載していた。このFT1は翌年の1971年には車名を「FT50」に変更、さらにその翌年の1972年にはピストンバルブ式のエンジンを搭載した「ミニGT50/80」へとモデルチェンジした。このGT50/80はミニトレイルを略した「ミニトレ」の愛称で大ヒットし、多くの若いライダーに愛用されることになった。

 

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ミニトレの起源となる1970年式のヤマハFT1。DT1のデザインをそのまま縮小した、本格的なオフロードデザインを持つ。

 

 

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1971年にFT50と名称が改められる。FT1とFT50はロータリーバルブ式のエンジンを搭載し、左出しのエキゾーストを採用。

 

 

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1972年に登場したGT50/80はピストンリードバルブ式の新型エンジンを搭載し、エキゾーストシステムは右出しとなる。

 

 このミニオフロードバイクのジャンルには、スズキからは1975年に「ミニクロ50/75」が、ホンダからは1976年に「XE50/75」が投入されることになる。GT50/80は1979年にフルモデルチェンジされ、リアにモノショックが与えられると共に車体も大きくなっている。

 

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空冷の2ストロークエンジンを搭載し、GT50/80のライバルであったのがスズキのミニクロ50/75だ。

 

 

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ホンダのXE50/75はCB50系の空冷4ストロークエンジンを搭載。最高出力は2ストローク勢に負けない4.5PS/9000rpm(XE50)を発揮した。

 

 

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GT50/80は1979年のフルモデルチェンジで、リアがモノショックへと変更されるなどの変更が行なわれた。

 

 
 
 

名機と言える30年使われたエンジン

 今回撮影したのは1978年式のGT80IIIで、リアにツインショックを持つ初代モデルとしては最終型となる。容量4.8Lのコンパクトなデザインのフューエルタンクに、少し大きめのシートが組み合わされ、前後のフェンダーは当時のオフロードバイクらしいシンプルなデザインのものが装置訳される。ヘッドライトは車体に合わせた小ぶりなものが装着されているが、ウインカーやテールライトは車体に不釣り合いな大きさに感じてしまう。マフラーはオフロードタイプらしいアップタイプで、1977年のマイナーチェンジで若干デザインが変更されている。

 

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初期型ミニトレの最終モデルとなるGT80IIIは5速ミッションを採用。大きく「GT」のロゴが入ったタンクグラフィックが印象的だ。

 

 

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この時代のオフロードバイクスタイルをそのまま小型化したその車体はバランスが良く、遠くから見ると通常のバイクサイズに見える。

 

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身長171cmのライダーが跨ると、このように車体のコンパクトさが良くわかる。ポジションは上半身が直立した感じで、膝の曲がりはかなり大きい。

 

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シート高は655mmとかなり低く、車体もスリムだ。足つき性も非常に良く、身長171cm、体重65kgのライダーが跨ると足にかなり余裕がある。

 

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ヘッドライトの6割ほどの大きさがある大きなウインカーが、ミニトレ独特の顔つきを作り出していると言って良いだろう。

 

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メーターはシンプルな丸型の一眼タイプで、インジケーターランプもメーター内に収められている。ハンドルバーは一体型のブレース付きだ。

 

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クラシカルなデザインのグリップ周り。左側に付くスイッチはヘッドライト、ウインカー、ホーンと極めてシンプルだ。

 

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「GT」の大きなロゴが目につく、小ぶりなフューエルタンク。容量は4.8Lで、タンクキャップにはキーロックなどは付かない。

 

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GT80はタンデムが可能なので、シートバンドが装備されている。シート自体も、車体の大きさを考えると大きめになっている。

 

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リアには大きめの角形テールランプとフロント同様の大きめのウインカーを装備し、シンプルなデザインのリアフェンダーと組み合わされる。

 

 GT50/80のエンジンは空冷2ストロークピストンリードバルブ単気筒で、50はボア×ストローク40×39.7mmの49cc、80は47×42mmの72ccとなる。初期モデルのスペックを見ると、最高出力は50が4PS/7500rpm、80が4.9PS/6500rpm、最大トルクは50が0.45kgm/5000rpm、80が0.55kgm/6000rpmとなっている。

 初期モデルのミッションは4速のボトムニュートラル式と呼ばれるタイプが採用されており、これはニュートラルが1速の下にあるという独特のリターン式であった。シフトペダルはシーソー式が採用されており、かかとで踏んででシフトアップ、つま先で踏んでシフトダウンする。このシフトは、1977年モデルで通常の5段リターンタイプへと改められている。エンジンの始動方式はキック式で、このミニトレ系エンジンは後のYSRに、またベースとなったFT50のエンジンはYB-1などにも搭載されており、約30年使われたロングライフなエンジンとなった。

 

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エンジンは空冷2ストロークピストンリードバルブ式。GT80は排気量72ccで、6PSの最高出力を発生する。

 

 

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エンジンスタートはキックオンリーとなる。マフラーのヒートガードには「GT」のエンブレムが刻まれている。

 

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GT50/80になってからマフラーは右出しのアップタイプになっており、1977年の間インナーチェンジで形状が変更されている。

 

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シーソー式のシフトペダルはミニトレ系の特徴とも言える。4速の前期型にはボトムニュートラル式ミッションが採用されていた。

 

コンパクトな車体

 GT50/80のはフロント15インチ、リア14インチサイズのホイールを履いており、デザインのベースとなったDT-1の全長2060mmに対して、全長1610mmと約80%のサイズである。シート高も655mmとかなり低めで、まさにミニトレールというの相応しいサイズ感である。

 フレームはスチール製のシングルクレードルタイプで、サスペンションはフロントがテレスコピックタイプでリアはツインショックとなる。スイングアームもフレームと同じくスチール製で、ブレーキ前後ともドラム式だ。当時の50ccクラスとしてはかなり充実した車体を持っており、1972当時の販売価格が50で7万4000円、80で7万7000円だったことを考えると、これはバーゲンプライスだったと言えるだろう。

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フロントホイール径は15インチで、オフロードバイクらしいシンプルなデザインのフロントフェンダーが装備される。

 

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フロントブレーキはドラム式。この時代ディスクブレーキはまだ高級パーツであり、主に大排気量車に装着されていた。

 

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リアホイール径は14インチで、スイングアームはスチール製となる。タイヤはオフロード走行を意識したプロックパターンだ。

 

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リアショックはツインタイプで、ブレーキはリアもドラム式となる。タンデム用のステップはスイングアームに取り付けられている。

 

 ミニトレはミニバイクブームの一部でしかなかったかもしれないが、その後大排気量バイクに乗ることになる多くのライダーを生み出した存在であると言える。日本のバイクの歴史を語る上で、ミニトレという存在は欠かすことができないものなのだ。

GT50/80III主要諸元(1978)

・全長×全幅×全高:1565×710×930mm

・ホイールベース:1045mm

・シート高:655mm

・車両重量:63kg

・エンジン:空冷4ストロークピストンリードバルブ単気筒49cc/72cc

・最高出力:4PS/7000rpm/6PS/7000rpm

・最大トルク:0.45kgm/6000rpm/0.65kgm/6500rpm
・変速機:5段リターン

・燃料タンク容量:4.8L
・ブレーキ:F=ドラム、R=ドラム

・タイヤ:F=2.50-15、R=2.75-14
・価格:10万9000円/11万4000円(当時価格)

 

詳細はこちらのリンクよりご覧ください。
https://news.webike.net/motorcycle/427875/

“ミニトレ”ことGT50/80は、多くのライダーを育てたミニバイクの名車だ【画像ギャラリー】
https://news.webike.net/gallery2/?gallery_id=427875&slide=1

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