ドゥカティの新世代エンジン「V2」を搭載した新型の「ムルティストラーダV2」と、電子制御式セミアクティブサスペンションを備えた「ムルティストラーダV2 S」が日本に導入される。
伝統のデスモドロミックを採用しない「V2」エンジンを搭載
ドゥカティのアイデンティティと言えばデスモドロミックエンジンだが、2024年に発表された新しい「V2」エンジンにはバルブスプリングを採用したごく「一般的な」バルブ機構が採用された。955ccで最高出力が150PSを超えていた「スーパークワドロ」に対して新しい「V2」は890ccで最高出力120PSと大幅パワーダウンしているが、最大トルクの70%を3000rpmで発生し、3500~11000rpmの間で最大トルクの75%以上を維持するというこの「V2」エンジンは、パフォーマンスよりも行動での扱いやすさに重点を置いて開発されている。また、「スーパークワドロ」よりも9.4kgも軽量に仕上げられているのも注目すべきポイントだ。「パニガーレ」、「ストリートファイター」と着々とこの「V2」エンジンは搭載され、いよいよこのエンジンの良さを最も享受できるであろう「ムルティストラーダ」にも当然搭載されることとなった。
デスモドロミック機構を採用しない「V2」エンジン。水冷4ストロークDOHC4バルブV型2気筒で、「ムルティストラーダV2」には最高出力115.6PS/10750rpm、最大トルク92N・m/8250rpm仕様で搭載される。
スーパースポーツ系バイクだけをラインナップしていたドゥカティが、マルチパーパスモデル「ムルティストラーダ」をラインナップしたのは2003年のことだ。「ムルティ=あらゆる」、「ストラーダ=道」という名を持ち、空冷のVツイン(当時はLツインと呼ばれていた)大型のカウルやアップライトなポジション、高目に設定された最低地上高などが与えられていた。
2010年に第2世代となる「ムルティストラーダ1200」系が登場、152PSを発揮する「テスタストレッタ11°」と呼ばれる水冷Vツインエンジンが搭載された。この時期に「ムルティストラーダ950」などがラインナップに加わり、一部モデルでは19インチのフロントホイールが採用されている。
2018年には可変バルブを持つ1262ccの「テスタストレッタDVT」エンジンを搭載した「ムルティストラーダ1260」系が登場、2020年にはV型4気筒1158ccの「V4グランツーリスモ」エンジンをアルミモノコックフレームに搭載した「ムルティストラーダV4」系モデルがラインナップに加わっている。このV4系の登場により、Vツインエンジン搭載モデルは「ムルティストラーダV2」と呼ばれるようになった。
今回2025年モデルとしてフルモデルチェンジした「ムルティストラーダV2」は、先述したように新しい水冷890ccの「V2」エンジンを搭載している。
新エンジンとフレームで、18kgの軽量化を果たす
新型「ムルティストラーダV2」シリーズは、「V2」エンジンを新設計のアルミモノコックフレームに搭載することで、2024年モデルに対して「ムルティストラーダV2 S」では18kgもの計量化が図られている。
890ccの「V2」エンジンは最高出力115.6PS/10750rpm、最大トルク92N・m/8250rpm仕様で搭載されている。ギア比はムルティストラーダ専用に設計され、1速と2速をショート化することで低速と全負荷加速での使いやすさを向上。最終比もパニガーレ V2 および ストリートファイター V2の15/42から15/40に変更。これにより、幹線道路や高速道路を走行する際のエンジン回転数を下げ、燃費や搭乗者の快適性が向上している。また、より正確なで速いギアチェンジを可能にする、新しいドゥカティ・クイックシフト2.0 も装備される。
ライディングモードは「スポーツ」、「ツーリング」、「アーバン」、「エンデューロ」、「ウェット」の5つが用意されている。各ライディング モードでは、「コーナリング ABS」、「ドゥカティ トラクション コントロール (DTC)」、「ドゥカティ ウィリー コントロール (DWC)」、「エンジン ブレーキ コントロール (EBC)」 が事前定義されたレベルに設定されている。出力レベルや、スロットルレスポンスなどを最適化することで、路面状況やライディングシーンに最適なパフォーへマンスを生み出すことが可能となっている。
ホイールサイズはフロント19インチ、リア17インチとなり、ブレーキシステムはブレンボ製で、フロントは320mm径ローターのダブル、リアは265mmのシングルディスクブレーキとなる。
V2 にはマルゾッキ製の45mm径のフロントフォークと、プログレッシブリンク付きの ショックアブソーバーが装備され、どちらもフルアジャスタブルタイプとなる。上級バージョンとなるV2 Sには電子制御を備えたセミアクティブサスペンションが装着され、ブレーキング時のダイブと加速時のアンチスクワットを制限し、快適性、安全性、パフォーマンスの全てが向上。サスペンションモードはライディングモードとは独立して選択することができ、電子制御パラメータとエンジンレスポンスを変えずに、好みのサスペンションキャリブレーションを選択することが可能になっている。また、ボタンを押すだけでリア サスペンションを最小まで下げることができる、最小プリロード機能も備えている。
ポジションをアップデートし、5インチのフルカラーTFTスクリーンを装備
ポジションにおいてはシートとハンドルバーの高さの差が小さくなり、ライダーにとってハンドルバー、シート、フットペグの三角形がより自然な位置に配置されることでライディング時の負担を軽減。標準シートは2つのポジションに調整することができ、シート高は850mmまたは830mmを選ぶことができる。また、オプションのハイシートを装着すると870/850mm、ローシートでは830/810mmにシート高を変更することができる。
コックピットには5インチのフルカラーTFTスクリーンが装着され、「Road」、「Road Pro」、「Rally」という 3 つの表示モードでライディングに必要な情報をライダーに最適な状態で伝える。たとえば、「Road Pro」では、使用されているパワーとトルクの割合がリアルタイムで表示されるようになっている。




















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